カテゴリ
最新のコメント
外部リンク
記事ランキング
画像一覧
|
突発的な犯罪では、特に目撃者の証言が捜査、裁判で重要な役割を演じる。 「この目で見たのだから、聞いたのだから間違いない」 と自信たっぷりに断言されると、とてもそれを否定できない気になる。 しかし、それが、無実のひとをおとしいれる悪意からではないとしても、もしかしたら、目撃証人の思い違い、錯覚かもしれない。 もし目撃証言が誤っていることを当の本人も検察官、裁判官も気付かず、その証言が決定的証拠として裁判が終り、後になってえん罪だったと分かったら、取り返しのつかないことになる。 つい最近も痴漢行為を疑われ、求刑2年まで受けた男性が無罪判決を受けたが、不幸中の幸いと言ってばかりはいられない事件だ。 こんな問題に関心をもつのが供述心理学である。 平成4年以降、司法試験から教養選択科目が消え、その中の心理学もなくなったので、心理学を選択する法学部学生は少ないだろうと思ったが、案に相違し、しかつめらしい法律学の授業の息抜きに来るのか、選択科目の中では1,2位を争う400人以上もの登録者で大盛況。 では、心理学の理屈は抜きにして、授業のひとこま覗いて見よう。 授業が始まって5分ほどした頃、教務の若い女性がひとり、やっと刷り上がって授業に間に合ったという風情で用紙を抱えて教室に入ってきた。 私: 「すみませんが、学生さんに配って下さい」。 女性は前列から後ろの方へ配りながら座席の間を歩き回り、10分ほどで配り終え、教室の後ろ出口から退室。 私: 「これは、後の授業で使う資料ですから、用紙をもらった人からアンケートに正直に答えて下さい。」 皆一斉に書き始める。 10分もすれば全員が書き終わる程度のものである。 書き終わった学生から回答用紙を回収し、引き換えに、別のA5用紙大のアンケート紙を手渡しながら回る。 教室のあちこちから 「えーっ」 と声が上がる。 その用紙には次のように書いてある。 「先ほど、皆さんにアンケート用紙を配った人がどんな人だったかについて伺います。 あの人が何か事件と関係があり、あなたがその人の目撃者だとして、次の質問に答えてください」 とある。 それに続いて、女性の年齢、身長、顔形、名前、メガネの使用、全体の印象などについて11の質問。 これと同じ調査は5回実施した。 参加学生の総数は392人。 提出されたアンケートの回答をみると、大体、女子学生の方がよく相手を見ているようだが、それでも質問内容によって正答率にかなりのばらつきがあった。 まず、アンケート用紙を配った20歳代前半の女性の年齢についての質問である。 前後1歳の幅で(例えば23歳の場合、正答を22~24歳とする)年齢を区切ると、正答率は45%だが、20代、30代など10歳幅に広げて区切ると、正答率は86%にふえた。 40歳以上と答えた学生が4%いたが、これは、うら若い女性に失礼だろうと、余計なことを考える。 身長については、実際より5センチ以内の幅(例えば、身長155センチの場合、150~160センチを正答とする)で区切ると、正答率は約80%。 回答の中には、実際の身長よりも10センチ以上、背が低いまたは高いと答えたのが6%いた。 座った位置からは、高めに見えるのは分るが、10センチも低く見えたのは何故だろう。 名前については、名刺大の名札を胸に付けていたのに、その存在にも気付かなかったもの、まったく名前の記憶がないと回答したものが63%と大部分を占めた。 面白いのは、例えば、「伊藤」を「伊東」とするなど文字の書き違えのようなもの以外に、全く違う名前(鈴木、山田、本間幸子など)を答えたのが18%おり、これは記憶の錯誤というより、むしろ意識的、無意識的な記憶の捏造である。 正答率は20%以下で、名前はあまり関心を引かないようだ。 コンタクトレンズではない普通のメガネの使用については、学生の85%が正しく答えており、メガネはかなり記憶されやすいようだ。 この実験に協力をしてくれた女性の一人はメガネを掛け、一人は掛けていなかった。 女性の全体的印象についての回答は、数量的に集計できないが、TVタレントや女優の名をあげて、その印象が似ているという回答と、「おとなしい感じ」 「真面目そう」 「女事務員風」 「知的」 などの抽象的な回答に分かれたが、前者の方が、記憶内容が具体的で第三者にも分かりやすい。 ただひとり、「ボクのタイプでない」 というのがあり、失笑。 全員が集まっている教室に女性事務員が入ってきて、アンケート用紙を学生に配り終わるのに約10分間、その回答を書くのに約10分間、つまり、20分ほど前に目撃した事実の記憶を再生するだけでも正答率は20~86%ほどである。 記憶は時間とともに薄れていく。 薄れた部分は主観的に加工し、つじつま合せをして、記憶は変形される。 昔の記憶があまり当てにならないのは、そのためだ。 もし、街中で偶然、犯行現場を目撃し、興奮と騒然としている場から離れて数時間後、あるいは数日後に目撃した事実の記憶を再生し、他人に話して聞かせるとき、あるいは、それをマスコミ関係者や警察、法廷で、予期しない質問を浴びながら証言するとき、どれだけ証言の信ぴょう性が確保されるのだろうか。
by dankkochiku
| 2008-04-13 23:19
| 非行・犯罪
|
Comments(3)
「供述心理学」という分野、やっぱりあったんですね。
大変興味深く思います。 あいまいな目撃証言で冤罪に・・・・・随分ありそうです。 怖い話です。
Like
警察や法廷で、目撃した事実を詳しく聞かれると、それに応えようと善意の人ほど、記憶内容をゆがめてしまう傾向があります。
![]()
免疫細胞が活性化して肝細胞の周りの線維を溶かし 、血流が戻って細胞の再生能力や機能が改善した可能性があるといいます。 髪笑活粋ファンの皆様こんにちは!! もう梅雨も終わりかけ、夏に向けてエアコンの設定も変わってきているのではないでしょうか? 髪笑活粋では地球に厳しく、お客様に優しい温度設定になっております。 <a href=https://jamedbook.com/14517-2/>https://jamedbook.com/14517-2/</a> 65歳以上の高齢者 と 60~64歳で心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に障害を有する人(身体障害者手帳1級程度) は、国が接種を強く推奨する「 定期接種 」の対象になっています。
|
ファン申請 |
||