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特に目立った問題のなかった一人子の高1生が、突然、金属バットで母親の頭部を滅多打ちして殺害した。 母親の悲鳴を聞いて駆け付けた隣人は、いつもきちんと挨拶をするT男が呆然と立ちつくし、そばに母親が倒れているのを見て、驚き、座らせた後、110番、119番通報。 その間、T男は無言で両手を合わせて振る奇妙な動作をしていた。 家裁の職員に付き添われてきた中肉中背の少年は、通常の入所手続きを済ませた後、精神科医の待つ医務室へ直行。 事前に家裁から簡易精神鑑定の結果が伝えられていたからだった。 特に緊張、興奮した様子もなく、素直に医師の面接に応じたが、一応、大事をとって、精神安定剤を出し、夕食後、すぐ新入者用の単独室で就寝。 翌日、T男の生い立ちをよく知る母方の祖父がきた。 殺害された母は、T男が3歳のとき離婚して以来、ずっとT男と二人暮らしの生活で、事件当時、母は10年以上勤めた総合病院の事務員で患者の病歴管理を一手に任されていたことなどの話が聞けた。 母子二人は、週末ごとに祖父母の家に泊まりに来るほど一家は親密で、近隣との付き合いもよかった。 母親の性格は、几帳面、仕事熱心、社交的だが、自尊心が強く、見栄を張るところもあったが、まあ、普通の主婦だった言う。 祖父によると、T男は小学校低学年のときは母親の仕事の都合で夜遅くまで学童保育所に預けられ、あまり勉強をしなかったが、成績は上位で、友だちも多かったと言う。 T男の子供のころの思い出として、小学5年の時、母親が担任教師からT男は道徳心がないと注意されたという話をした。 それは、「信号機のある道路で、おばあさんが歩いていたら手を引いて上げますか」 という問題に、「ここまで歩いてきたのだから余計なおせっかいになるから手を引いてやらない」 と答えたことに母親が、「お前は正直すぎる。 嘘でも良いから道徳心があるように答えておけばいいのだ」 と言ったという話だった。 そのことについて改めてT男に尋ねたところ、「矛盾したことでも大人は平気で嘘をつくのかと頭にきたが、別に言い返さなかった」 と言う。 中学入学後、バスケット部に入り、毎日練習に励んだが、2学期からやる気がしなくなり、幽霊部員になった。 成績は1年のときは上位だったが、2年からは中位に下がったが、欠席、怠学などの問題は見られなかった。 祖父によると、中学2年の終わりころから口数が少なくなり、表情も暗くなったと言う。 祖母もまた、それまでは割と素直な子だったのが、その頃から、うるさがる態度をとるようになったが、この年頃にありがちの反抗期だろうと思い気にしなかったと言う。 これについて、T男は、祖母が口うるさく宗教を押し付けるようになったから、と答えた。 中学3年2学期に自殺未遂事件がある。 本人によると、母から高校予備校で実施する全国共通模擬テストで偏差値が60以下だったら死ねと言われていたのに、結果は偏差値が59だったからと言う。 手首を切ったが死ねなかったので、首を吊ったら、足がついてしまい、3回試みたが失敗し、疲れて止めた、と言う。 その日、帰宅した母に首の傷を尋ねられ、首つりの真似をして遊んだと答えた。 これに対し、母は 「馬鹿な真似するな」 と言っただけだったと言う。 偏差値が1点足りないだけで、本当に死のうと思ったのか、と尋ねると 「約束は約束ですから」 と平然と答え、母への当てつけでもなく、死にたいと思ったからでもなかったと言う。 でも、死ぬことは恐ろしいことではないかと重ねて尋ねたところ、「光や時間などのように永遠に続くものは怖いが、途中で終わる死は怖くない」 と、意味のない笑いを時どき見せての答は、何か病的な几帳面さと死についての現実感のなさがうかがわれた。 高校進学後、数人の友だちができ、ビリヤードやマージャンをして遊ぶこともあったが、それよりも、家では全く勉強をせず、一人で部屋にこもって物思いにふけったり、パソコンゲームをしたり、ビデオを見たりしている時間が多くなった。 こんな生活振りから、1学期中間テストは251番、期末が274番と下位だったが、勉強すればいつでもできるから、赤点を取らなければいいと思って勉強しなかったと、淡々と自信のあるような断定的な答えをした。 母親から 「最近、たるんでるんじゃない?」 と注意され、「俺の知能は今までと変わらず同じだから、順位が下がったのは、クラスのみんなが勉強しただけのことだ、上があれば下もある。 トップもゲッピもあるのだから仕方がないことだ。 お母さんはこんなことが分らないのかと思うと情けなくなった」 と、成績の低下を気にした様子はない。 ちなみに、鑑別所で実施したT男のIQ.は115、平均よりも上位の知能だった。 しかし、その頃から、母からいつも監視され、自分の思っていることが自然と母に伝わり、知られてしまう気がして、夏休み中、いつも怖かった、と言う。 そのため、母と顔を合わさないように、毎朝、母が仕事に出かけた後、布団から起き出し、近所のコンビニエンスストアでカップ麺や弁当を買って朝食を済ませ、夕食も、母が帰宅前に済ませて部屋にこもっていた。 母が休みの日は、自分の部屋にこもり、買い置きの菓子パンやカップ麺をまとめ食いし、母と一緒の食事を、忙しいとの口実で避けた。 そのうち、母に殺されるのではないかと思うようになり、窓の鍵をいつも開けておき、母が入ってきたらそこから逃げ出そうと考えた。 夜は母が寝てから寝ることにしたので、就寝時間が遅くなり、それを昼間の睡眠で補い、昼夜逆転の生活になったが、昼間は何もすることなく、母のたてる物音に耳をすまし、安心して部屋から出られるのは、母が入浴中しかなかった、と言う。 そんな脅えながらの毎日の中で、母親の存在を消さなければ自分の存在が消されると、母への恐怖と敵意を募らせた。 犯行の前夜、開け放した窓からコウモリが飛び込んできて、足に止まったのを、タオルで包んで外へ投げ出す瞬間、「コウモリが来て足に止まったのは、母を殺せという意味だ」 と思ったと言う。 翌日、近くのスーパーから金属バットを買ってきて、天井裏に隠した。 なぜ、金属バットを凶器に選んだかについて、ほかでも金属バット殺人事件があったので、自分でもできる、と単純に考えたからだった。 犯行の日の午後、2時間余り友だち3人と家でマージャンをした後、友達と一緒に出かけ、夕方に戻り、母が帰宅後、犯行に及んだ。 母親の殺害について、自分の意思でやったので後悔はしていない。 法律を破ったので処分を受けることは分かっているが、人はいずれ死ぬのだし、悪いことをしたとは思っていない、と無表情に答え、全く罪悪感もなく、後悔もしていなかった。 T男は、中学入学前後から発病した統合失調症と診断され、医療少年院へ送致された。
by dankkochiku
| 2008-03-22 23:56
| 少年鑑別所の子供たち
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Comments(9)
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桜花
at 2008-03-23 22:29
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母親に対する警戒心・親子の情の繋がりが薄い少年かと思います、最終的には母親の存在を消すことで心の平穏を求めたのでしょう・・・会津若松で発生した事件と似ている点があるかと思います。
この少年に診断された統合失調症は「破瓜型 (ICD-10 F20.1)」でしょうか?
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dankkochiku at 2008-03-24 11:30
このケースでは、中学進学後間もなく始まった意欲低下、自殺企図、母親から監視されているという被害妄想(注察妄想と自我漏えい症状)から引きこもり、コウモリ(幻覚?)を殺人指令と直感したこと(関係妄想、思考障害)などから妄想を主症状とする統合失調症と判断されました。 ただし、発症後、まだ3年あまりの段階のため、「妄想型」 統合失調症との鑑定は控えたようです。 07年5月の会津若松事件は、鑑定結果と見ていませんが、うつ病治療中の事件と報道されています。 昨日の土浦市での8人殺傷事件、本日未明の名古屋市での通り魔殺人未遂事件といい、春は精神障害を疑う犯人の事件が目立ちます。
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桜花
at 2008-03-25 01:28
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「妄想型」統合失調症との鑑定、思春期の後半から成人に見られる統合失調症のようですね。
07年の渋谷区で発生した実妹殺人事件、公判で被告の兄は「アスペルガー症候群」と鑑定する弁護側の報告が行われました、土浦での8人殺傷事件の犯人・・・妹の殺害と卒業した小学校への襲撃を計画しており、01年に付属池田小で発生した凶行事件が、再び発生していたかも知れないことに鑑み、茨城県警の対応は大失態だったと思います。
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at 2008-03-25 01:42
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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yamanteg at 2008-03-25 19:48
「嘘でも良いから道徳心があるように答えておけばいい・・・・・・・」。
「矛盾したことでも大人は平気で嘘をつくのかと・・・・・」。 自我確立の過程で自分なりの道徳基準?が分からなくなり、母親以外の大人の見本にも出会えなかったのだろう、と感じました。
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dankkochiku at 2008-03-26 18:56
嘘を言ってはいけないと教えながら、嘘も方便と言う、大人のタテマエとホンネのダブルスタンダードを小学生になんと答えたらいいのか、親御さんへの宿題です。
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at 2008-03-27 04:32
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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名無し
at 2018-09-22 17:34
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俺が、少年の親父やったら、妻が殺されたけん、その仕返しで、少年を金属バットで殴り殺しとるよ。
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dankkochiku at 2018-10-14 21:53
名無しさん。それはひどいです。正当防衛とは認められません。
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