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全国の病院で、現在、医師の確保ができず、深刻化しています。 多くの被収容者を抱える刑事施設(拘置所、刑務所など)も例外ではありません。 刑務所医の労働条件は、国家公務員並みですが、大学医局など医療施設での研修日が認められ、週3日、それも半日勤務の施設が多いです。 しかし、それでも成り手が少なく、非常勤で地元開業医の善意にしか頼れない施設が多いのが実状です。 一般に医師の刑務所、拘置所への来手が少ない理由には、犯罪者とかかわりを持ちたくないという気持ちも否定できませんが、この医師たちに嫌がられる同じ理由が、逆に、精神科医には魅力で、こちらの方は、結構、応募者がおります。 この傾向は、戦前から同じで、わが国のそうそうたる犯罪精神医学者には、拘置所、刑務所、少年院など矯正施設での勤務経験者が大部分を占めています。 それは何故でしょうか? 刑事・矯正施設でしか見れない精神症状を見ることができる、ということに尽きるようです。 日本犯罪学会には、会長始め、主に精神・神経科医からなる700人あまりの会員がおり、毎年、矯正施設での事例報告が行われています。 拘置所や刑務所には、独特の精神異常者がいることに気付いたのは、19世紀中頃のドイツの精神医学者で、それ以来、この特異な症状を拘禁反応とか拘禁性精神病と名付け、真性の精神病の症状に似て非なるものとして区別するようになりました。 大方の人は、拘禁状況におかれますと、その非日常的な状況を直ぐには受け容れられず、普段とは違ったいろいろな反応をして、その状況から受けるストレスから身を守り、避けようとします。 非日常的状況に対処するものですから、その反応の仕方もまた非日常的なものです。 その異常の程度は、拘禁状況下のストレスの強さ次第です。 極端な例では、ナチス・ドイツの強制収容所に送り込まれ、不意に死の危険に晒された時の強度の恐怖症状、急性離人症状があります。 刑事施設での重い拘禁反応は、死刑や長期刑の判決が予想される未決囚に最も多く見られます。 善悪の判断が全くできない精神状態での犯行と認められますと、刑事責任無能力者として無罪になります。 また、それほど重症でなくても善悪の判断ができにくい精神状態のもとでの犯行ならば、心神耗弱者として減刑されます。 精神異常の有無が、生死にかかわることになりますと、無意識的にせよ、意図的にせよ、精神異常者になりたいと思うのが自然です。 この気持ちが次第に高じ、平常心から解離し、その願望だけに心がとらわれますと、病的な拘禁反応が現われやすい素地ができます。 最初のうち、わざと精神異常者を演じて、裁判を自分に有利に運ぼうと考えた人でも、本当の精神異常へ移行する人もいます。 これほど切羽詰った状況にない受刑者でも、拘禁の初期の段階で、慢性的な心身の違和感、疲労感、苛立たしい抑うつ感など、拘禁の影響を訴える人は広くおります。 特に、刑が確定して間もない比較的若い初入者たちには、精神安定剤の消費量が多いと刑務所医の間で以前から言われてきました。 これは、初めての服役のために精神が不安定になりやすいことや、服役は始めてであっても、いわゆる、執行猶予刑持ちが多く、前刑と併せて長い刑期を務めなくてはならないショックと不安に襲われるからです。 症状としては、不眠、心悸高進、頭重、食欲不振、下痢など軽度の心身症状から、感情を爆発させて部屋の扉を乱打したり、意識がモウロウとなり、衝動的に自傷や自殺を試みる人もいます。 刑務所慣れした受刑者では、入所初期に拘禁反応を現す人はあまり見かけませんが、結構服役した後になってから、稀に、突然、錯乱状態になり、よだれ・鼻水を垂れ流し、大小便の失禁、時どき大声を上げ、食器ごと食事を放り投げたり、布団を裂いて綿を部屋中に散乱させ、水を撒き、冬季でも裸で部屋をうろつく、など異常な行動をする累入受刑者がおります。 このような状態になりますと、強力な精神科治療によって精神安定を図るほかありませんが、その効果は直ぐに切れて、ぶり返すことも少なくありません。 こうなりますと、本人の体や部屋中をまず洗浄し、興奮を鎮めるために刑務官たちは大変な苦労が強いられます。 とかく、自傷、自殺防止が先行し、保護房に収容し、手錠を掛け身体を拘束する、といった保安的措置が医学的処置よりも先行する傾向が従来、多く見られました。 名古屋刑務所事件も、このような状況下で発生しました。 しかし、数日以上にわたる独居拘禁は、かえって、患者を孤立化させ、不安と恐怖を高め、病状を固定、悪化させるおそれが多分にあります。 むしろ、早めに独居収容を解除し、医師や心理職員によるカウンセリングを頻繁に行う方が効果の期待が持てるのです。 また、拘禁反応、拘禁性精神病の名前の通り、社会の精神科病院に移しますと、直ぐにも軽快するのですが、これには別の問題が起こってきます。
by dankkochiku
| 2007-04-30 23:53
| 刑務所を考える
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Comments(3)
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yamanteg at 2007-05-11 17:16
「拘禁反応」で思い出したのですが、麻原彰晃に接見(2006年2月)した加賀乙彦氏は「拘禁反応で昏睡状態、治療して(1ヶ月くらいで直る例が多い)罪を問うべき」という趣旨の意見書を出したそうですね。
加賀氏ほどの人が言うのだから正論だと思いましたが、西山鑑定(世論にひっぱられた?)は覆らなかったとか。 「悪魔のささやき」(加賀乙彦=集英社新書) (当ブログで既出かも知れませんが。) 訴訟能力なしで無罪は問題外として、 訴訟能力ある状態にして死刑にするか、 死刑にするために訴訟能力ありとするか。 ちょっと考え込んでしまいました。
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dankkochiku at 2007-05-11 21:21
難問をご持参になりましたね。
被告人に訴訟能力がない状態、つまり、心神喪失状態の時は、公判を停止しなくてはなりませんが、死刑か無期刑かが予想される裁判では、そのストレスの重圧から精神異常をきたす被告人がしばしばいます。 古くは、東京裁判のA級戦犯で起訴された大川周明被告が脳梅毒による精神異常と判断され、精神病院に入院後、精神異常なしとされましたが、わが国の法律で裁かれなかったからか、免訴になりました。 宮崎勤事件も、公判時は 「拘禁による影響が強く現れていると認められる」 としながら、訴訟能力を認めた判決でした。 いずれも詐病説が囁かれていますが、藪の中です。
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とても強
at 2017-03-05 19:40
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ソフトな上々罰 汚名返上 昔は犯罪者を警察にしてた。犯罪者の心理が分かるので犯罪予防になるという。上々の意味は上手いの中でもさらに上手いといわれる。完全で欠点の無いこと。全て良い。全てとてもよい。犯罪者も戦力労働力。誰でも大戦力になれる。誰でも大労働力になれる。需要にこたえることは強さ。犯罪者の要望。犯罪者の目安箱。
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