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全国の刑務所で集団生活になじめず、独居に引きこもる受刑者が増えています。 懲役受刑者は課せられた作業をする義務があります。 作業をせず独居室への引きこもると懲罰を受けます。 このことで懲罰を受けた受刑者の数が、平成17年は受罰者全体の第1位、23%を占め、10年前の第5位、7%に比べ大幅な増加です。 「引きこもり」 が急増したのは、最近10年ほどの間に受刑者の数が増加し、ほとんどの刑務所では、収容定員オーバーが常態化し、共同生活の息苦しさからのイライラがおもな原因です。 しかし、「引きこもり」 は、以前からあり、収容過剰だけが原因とは限りません。 仲間同士のイジメや幹部職員の交代による規律の引き締めが引き金になることなども知られておりますが、そのおおもとには、個室の不足があげられます。 「引きこもり」 は、精神医学や臨床心理学で 「社会的引きこもり」(social withdrawal)と言われる適応障害の一つです。 私たちは、自分の所属する集団の中で人付き合いがうまくいかなくなり、居心地悪さに我慢ができなくなりますと、自分だけの居場所へ一時避難し、元気を取り戻し、もとの集団または新しい集団を見つけ、そこに自分の場所を見つけようとします。 ここまでは正常なことで、人間が社会的動物といわれるゆえんです。 ところが、自分だけの空間に一時、逃避したのに、そこでも気が休まらず、対人関係の輪の中に戻りたいと思いながら、それも不安でできず、どうにも動きが取れない心の葛藤状態にはまり込んでしまうことがあります。 これが 「引きこもり」 の状態で、自分が所属する集団文化と結びついた反応性の症候群(culture bound reactive syndrome)とも名付けられています。 つまり、受刑者の引きこもりは、刑務所の文化と結びついているのです。 刑務所の文化とは、一般社会から隔離された拘禁社会の文化です。 受刑者は、そこで孤独な生活を送っていると思われるかも知れませんが、全くの反対です。 全員が罪人の汚名を着せられ、信用されず、刑務官の監視の下におかれています。 監視されるのは、刑務官からだけではありません。 刑務官がいない時も、受刑者たちの目から逃れられず、片時も一人になれない、全く私生活のない集団の中でしか生活できない社会です。 施設側が一方的に決めた工場配置、部屋割りに従って、共同生活をしている仲間は、素性の知れない犯罪者であり、年齢も体力も性格も履歴もさまざまな人たちです。 当然、中には気の合わない人がいますし、些細なことで険悪な空気に一変することもあります。 ですから、いつも相手の顔色を伺い、言葉は慎重に選んで使わなくてはなりません。 雑居室では、朝夕の食事は部屋の中央に置いた食台を囲んで全員一緒に食べます。 一人分のトイレが一か所しかなく、トイレに入っているときも外からはそれと分かります。 夜は部屋一杯に敷いた布団の上で、イビキ、歯ギシリを聞きながら眠りに就き、夜中に踏まれることもあります。 着替えも皆の見ている前でしかできません。 家族への手紙を盗み見されることもあります。 いじめにあっても出て行けません。 同室者とは工場でも一緒ですから、部屋での出来事は、翌日には工場内に知れ渡ります。 せめて、作業から解放された後は、個室で生活したいというのが受刑者たちの願いですが、拘置所と違い、単独室は、新入者、養護処遇者、懲罰中の者、処遇困難者など共同生活に差支えのある人たちを入れるくらいの数しかありません。 動作の遅い高齢者や身障者などは、雑居室では、どうしても若いくて元気のいい同室者の手足まといになり、同室者全体の成績評価に響いてきますと、その者へ辛く当たり、イジメが多くなります。 職員に頼んで、部屋を変えてもらっても、工場に出れば、顔を合わせ、チンコロ(密告者)視されてもっと気まずいことになります。 悪擦れした同室者にかかると、所持品検査の直前に、本人の知らぬ間に反則品を服のポケットや持ち物に忍び込ませて、職員に摘発させて懲罰に送り込むといった巧妙な手口によって、追い出すこともあります。 工場では、本人の作った製品を横取りし、検査ではねられた不良製品とすりかえる手もあります。 さまざまなイジメの被害を受け続けながら、仲間に迷惑を掛けることの心苦しさから、自分から去り、独居室に入る覚悟をします。 刑務所側は、独居を強要することを 「怠役」 「就業拒否」 と言いますが、本心は、作業をしたくないわけではありません。 作業場で仕事を拒否して自分だけが懲罰を受ければ、同室者の誰をも傷つけず、それ以上のイジメも受けずにすむからです。 懲罰覚悟で、独居室に引きこもろうとする者に対して、イジメの加害者たちは、「逃げ込み」 と呼び、冷笑するだけです。 こうして懲罰を受けて単独室に入れられ、辛い思いをしても、一時的にせよ、独居生活の目的を達することができます。 そして懲罰期間が終わると、また就業拒否をして懲罰を受け、懲罰が終わると、また独居を強要する。 この繰り返しを続けるうちに、根負けした施設側から 「処遇困難者」 のレッテルを貼られて、当分、昼夜独居処遇を受けることになり、プライバシーを勝ち取ります。 いったん単独室を獲得すると、今度は、わずかの時間をも惜んで作業に没頭するのが彼らの普通の姿です。 ただ、気になることは、長期間、昼夜、単独室で生活を続けているうちに、体も心も健康が損なわれ、慢性的な 「引きこもり」 症状に移行し、運動にも入浴にも部屋から出ようとしなくなり、ブツブツ独り言を言うようになることです。 これは、れっきとした拘禁反応と診断される精神異常の症状で、その前に、昼夜独居生活から引き出す治療的処遇が必要になります。 単独室の数さえ増やせば、受刑者も職員も助かるとは思うのですが、行刑当局者のこれまでの回答は、きまって 「予算がない」 の一点張りでしたが、国だけの施設ではできなかったことが、平成19年、PFI方式の美祢社会復帰促進センターの開設で始めて全員に単独室が割り当てられました。
by dankkochiku
| 2007-04-24 23:37
| 刑務所を考える
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Comments(3)
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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工場担当経験者からのお言葉、有難うございます。 大変、励みになります。 今後ともよろしくお願いします。
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