カテゴリ
その他のジャンル
外部リンク
記事ランキング
画像一覧
|
出所の日が近付きますと、職員も受刑者も忙しくなります。 入所した日に、「人」 が□(かこい)の中に入って 「囚人」 になったのとは逆に、□(かこい)から出て 「人」 に戻る準備に追われるからです。 普通、出所日の2週間前になりますと、釈放予定の受刑者たちは、特別の居室や別の母屋へ移ります。 そこは、施錠されておらず、一般家庭に近い開放寮で、職員の見張りもないところで、自分で衣類を洗濯したり、湯を沸かしてお茶、コーヒーを入れることも、風呂に入ることもできる設備もあります。 職員は、引き取る家族がいる者には、出迎えの有無、釈放時間、釈放日の衣類などについての打ち合わせをします。 また、入所時に預かった金品(領置金品)の確認を本人の面前で行い、作業報奨金額を知らせます。 出所日に着て帰る衣類がカビだらけになっていれば、洗濯工場に出します。 体型が変わって靴が履けなくなっていれば、刑務所製の靴を購入させます。 その一方で、受刑者には、釈前教育と呼ばれている釈放準備指導が行われます。 出所後の社会生活に直ぐ必要な情報を知らせるほか、一般社会での生活体験に、社会奉仕活動として施設近くの公園や駅前広場などで清掃作業をさせながら、最寄の駅までの道を教えます。 長期刑の受刑者には職員が付き添って町を散歩し、デパートで買い物をさせるところもあります。 このほか、新しい法律では、家族など身元引受人や就職予定先と出所後の相談に電話連絡をしたり、場合によっては、職員の付き添いなしに外出、外泊もできるようになりました。 釈放者と言っても様々な人がおり、それぞれ別々の対応をしなくてはなりません。 暴力団幹部の出所には、放免祝いに大勢の出迎えが予想され、黒塗りの高級車が並んで刑務所近隣の人たちを驚かせないように、できるだけ早朝に釈放すると本人に告げ、組事務所へ連絡させます。 それよりも職員がもっと気を使うのは、身寄りのない人、持ち帰る現金(携有金)が少ない人、医療中の人や養護・介護の必要な高齢者、帰住予定地が遠方の人などのことです。 このような人たちには、釈放後のことは自分で、というわけにはいきません。 最初から身寄りがなく、自力での生活が難しそうな受刑者には、刑期の3分の1を経過し、仮釈放許可の申請をするあたりから、本人の意思に従って、更生保護施設での保護を保護観察所長へ申請します。 更生保護施設では、出所者に宿泊、食事、就職援助、社会生活に必要な生活指導をしながら、およそ半年間、保護施設を生活の拠点として資金を蓄え、自立させるように働きかけます。 更生保護施設は、全国に100か所ほどあり、篤志家が自分の土地、建物などの資産をもとに運営する財団法人または社団法人です。 施設経営に必要な収入源として、その80%近くを国から更生保護委託費を受けるほか、篤志家などからの寄付金、地方公共団体補助金などに頼ってまかなわれていますが、経営状態は厳しいのが現実です。 そこで、施設側としては、更生意欲に加えて健康で労働力のある出所者以外の入居は、あまり希望しない傾向があります。 近年の経済不況による就職難に加えて受刑者の高齢化が進み、更生保護施設には、希望者の3分の1程度しか入居が決まりません。 仮釈放は、出所後の帰住予定先が決定していることが条件ですから、その他の点では、問題のない仮釈放相当の受刑者でも満期釈放になります。 最も気の毒なのは、刑務所で医療中の者や心身に障害を持つ身寄りのない受刑者たちです。 こうなりますと、刑務所側としてはもうお手上げで、精々、全国どこの更生保護施設でも入所できる 「保護カード」 を持たせ、刑務所から前もって連絡した保護観察所に立ち寄り、相談するようにすすめるほかありません。 その日はどこで食事をするだろうか、どこに泊まるだろうかと、釈放者を見送る刑務所職員の心は穏やかでありません。 服役生活以下の厳しい生活に置かれるからです。 この問題の解決に、法務省では、仮釈放になる受刑者が更生保護施設から入所を拒否され、仮釈放が許可されない受刑者を受け容れる国立の更生保護施設を福島、京都、福岡の3か所に新設する計画があるとのマスコミ報道がありました。(平成18年12月28日付、山陽新聞) これまで国は、更生保護を民間篤志家に頼り過ぎてきたための問題解決にやっと重い腰を上げ始めたようです。 その一方で、更生保護施設を帰住先として届け出た受刑者が、何かの事情で仮釈放が許可されず、自暴自棄になって直ぐにも再犯に走る例が多いという話を、以前、北海道のある刑務所長さんから聞いたことがあります。 それは、過剰収容の首都圏の刑務所から収容調整の目的で北海道のB級刑務所(ほとんどは累犯者)へ移送された受刑者についての話しでした。 帰住予定先のない満期釈放者たちを、とりあえず首都圏の更生保護施設に帰るように手配し、列車の切符まで渡したのに、その切符を駅で払い戻して現金化し、函館あたりで途中下車して解放気分を味わううちに持ち金を使い果たし、再犯し、今度は、北海道の刑務所で服役するものがいたという話でした。 刑期が満了する前に、移送もとの刑務所へ保護上、戻しておけば、よかったのに、予算がなかったので、乗車券だけを持たせて釈放した結果、首都圏の犯罪者を北海道に拡散してしまったと、失敗を嘆いていました。
by dankkochiku
| 2007-02-27 23:57
| 刑務所を考える
|
Comments(12)
Commented
at 2007-02-28 00:58
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
yamanteg at 2007-02-28 20:45
更生保護を民間篤志家に頼る・・・・・時代ではなくなった・・・・・。
都市化、核家族化も影響していそうですね。
0
Commented
by
dankkochiku at 2007-02-28 22:21
映画、「13階段」 の冒頭の 「欧米は応報刑、日本は目的刑」、ちょっと違うんじゃないだろうか。
Commented
by
dankkochiku at 2007-02-28 22:26
yamanteg さん 善意と情熱プラス行動科学の技術が求められる時代になったと、言うべきでしょうか。
Commented
at 2007-03-01 21:43
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
tomahawk_attack
at 2007-03-01 23:11
x
昔は「お勤め」を終えたヤクザ屋さんの出所に、黒塗りのベンツが並ぶという話を聞きますが、今も同じ景色ですかね?。。。。。(^o^;)
Commented
by
OPEN
at 2007-03-02 19:48
x
Dankkochikuさん
私のブログへのコメント、有難うございました。予科練の話は教友会で出版予定の「戦中・戦後体験記」の一部で、私はこの冊子に「疎開経験」を書く積りで居ります。 釈前教育ですが、私が以前訪ねた刑務所でも「釈放予定の受刑者たちは、特別の居室や別の母屋へ移ります。 そこは、大抵、施錠されておらず、一般家庭に近い開放寮で、職員の見張りもないところで、自分で衣類を洗濯したり、湯を沸かしてお茶、コーヒーを入れることも、風呂に入ることもできる設備もあります。」のようなところがありました。 釈放後の仕事が殆どなく生活安定が図れないところに一番の問題がありますね。「釈放者と言っても様々な人がおり、それぞれ別々の対応をしなくてはなりません。」とはまさにそのとおりです。私が以前担当した対象者も所内で50万円ほど貯めていましたが、出所後2,3ヶ月で使い果たし、保護観察が終った今はどんな収入で暮らしているのか心配な人がいます。酒好きの彼への金銭的な指導は殆ど出来ませんでした。
Commented
by
dankkochiku at 2007-03-03 09:16
tomahawk さん 今でもある光景と思います。 放免祝いに温泉地へでも繰り出すようです。 箒持参でくるのか、去った後は、きれいに掃除がしてあり、感心したことがあります。
Commented
by
dankkochiku at 2007-03-03 09:23
OPEN 爺さま 期待し、裏切られ、それでも他人の面倒を見続ける保護司さん方のご活動には、いつも頭が下がります。 これからも頑張って下さい。
Commented
at 2007-03-08 23:41
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
まるチーズ
at 2007-03-27 02:07
x
はじめまして,dankkochikuさん。
希望しても更生保護施設に入れる人が少ないというような,データとか文献資料をご存じでしたら,お教え下さい。 実は,私が今関わっている被告人が,保護カードをもらって満期出所した方です。無銭飲食を繰り返して親族とも音信不通となっている単身者で,行く当てがなかったのですが,出所が年末だったため,保護会に空きがなく入れなかったようです。 わずかな作業報奨金は数日でなくなり,野宿していましたが,寒くてお腹がすいて,無銭飲食をしてしまい,また捕まりました。気の毒です。 保護会に入れない状況のデータがあれば,弁護に使えないかなと考えています。
Commented
by
dankkochiku at 2007-03-28 07:39
まるチーズさん 希望しても更生保護施設から入所を拒否された件数の統計や実証的文献資料など、ないと思います。 なぜならば、満期釈放者を追跡して成り行きが調べられるほど、この国は独裁国家ではないからです。
|
ファン申請 |
||