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前回、日本の刑務所にいる外国人受刑者についての当ブログにたくさんのコメントが寄せられましたので、今回も同じテーマで二つの問題を取り上げることにします。 その一つは、昨年6月17日の朝日新聞に 「米軍受刑者を優遇 シャワー毎日、肉・ケーキ」 という見出しの記事についての話題です。 記事の内容は、その前日、衆議院での社民党の照屋議員から米兵受刑者の処遇についての質問と政府からの答弁に関してのものでした。 以下は、衆議院ホームページからの要約です。 質問の趣旨は、米軍人関係者による日本国内での犯罪に対して、わが国の警察権・裁判権の行使は、日米地位協定(日米安全保障条約第6条に基づく昭和35年6月23日発効の協定)などがあるため、過度の米軍優位によって妨げられているが、米軍関係受刑者の場合もまた、わが国の刑務所内で、日本人受刑者よりも厚遇を受けているそうだが、何故、特別扱いをしているのか、というものです。 照屋議員は、米軍関係受刑者への厚遇の例として、就寝時間が日本人は午後9時なのに米兵は午後10時であること、米兵は毎日シャワーが使用できること、室内に暖房設備があること、毎日の食事が、肉類、フルーツ、ケーキのデザート付きにコーヒー、牛乳などの補充食糧を認めていること、などをあげて、日本人受刑者と差別した処遇を行っていることの事実の確認とその具体的根拠について政府見解を求めました。 この質問に対して、政府側答弁は、次のような内容でした。 就寝時間は、日本人受刑者でも学習など必要がある場合は、午後10時まで延長を認めている。 米軍関係受刑者には、毎日シャワーを使用させているが、日本人受刑者には週2~3回の入浴日以外に、必要に応じてシャワーを使用させている。 暖房は、日米受刑者双方とも、12月から4月までの期間、室内気温が12℃以下になれば廊下のストーブを使用しているが、居室に暖房設備のある米軍関係者には、この時期には、朝夕30分ほどの暖房も行っている。 食事は、米軍関係者の献立には肉類やデザートなどの回数が日本人受刑者よりも多く、食後にコーヒー、牛乳を出していのは事実だが、これは、米軍から定期的に現物提供が行われているからであって、平成17年度は約13トン提供された。 これらの米軍関係者への取り扱いは、両国間の習慣などの相違を考慮するという刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会の合意事項である。 以上の政府答弁の内容の信憑性については、現場を知る方々にお任せしますが、私が問題と思いましたのは、日本人受刑者には、入浴が夏季には週3回、それ以外は週2回であること、暖房が室温12℃以下の時に限られているとの回答でした。 米軍関係の男性受刑者は、現在、比較的、気候温暖な神奈川県の横須賀刑務所に収容されていますが、日本人の受刑者の場合、寒冷地以外、どこの刑務所にも居室内に暖房設備がないのが普通ですし、入浴回数は、原則として、週2、3回です。 「必要に応じて」 というのは、盛夏時の運動後や汚泥作業後や医療、炊事従事者など一部の受刑者に限られています。 この状態は、現在、わが国の生活水準からしますと、「日本人受刑者の人権を侵害し、過酷な処遇に当たる」 と照屋議員が述べられた通りではないでしょうか。 新しく施行された 「受刑者処遇法」 の目的には、被収容者の人権を尊重することが掲げられていますが、この辺りから人権尊重を考えるのが基本ではないかと考えます。 もう一つの外国人受刑者についての問題は、前回お話しましたが、来日外国人がほとんどを占めるF級受刑者の急増です。 彼らの多くは、不法滞在者であり、窃盗、粗暴犯、薬物犯罪など各種の刑法犯罪、特別法犯罪を行ったものたちですから、釈放後、95%以上のものが、国外退去処分(入管法第24条)になり母国へ帰されています。 そこで、彼らに対する刑務所での処遇は、まず、人権と健康に留意し、公平に扱い、日本の刑務所生活に慣れさせ、心情を安定させるのが当面の目的になります。 言語の壁から、改善・社会復帰を主な目的とする日本人受刑者とは、おのずから処遇方法の重点が異なってきます。 つまり、彼らが復帰する社会は各人の母国なのです。 彼らを早く出所させて、母国へ戻すことは、異国での受刑生活の不安を柔らげ、自国での社会復帰に役立ち、しかも、日本人職員の負担軽減にもつながるなどの理由から、早期に仮釈放が許可されています。 受刑者が一般に仮釈放になる確率は、50%台半ばですが、F級受刑者の仮釈放率は90%以上です。 しかも、刑期の執行率も、F級受刑者を含めた全仮釈放者では、執行率80%台で仮釈放になるのものが3分の1程度で最も多いのですが、F級受刑者の場合は、執行率50%台のものが過半数を占め、刑期を半分過ぎたところで仮釈放になっています。 仮釈放制度の本来の目的は、社会復帰を容易にするためですが、F級受刑者は、仮釈放されますと、大部分が国外退去処分になりますので、日本国内で保護観察を行うことができず、いわば、刑の執行を免除するために仮釈放制度が使われているのです。 このような目的外の仮釈放制度の運用は、法律上、疑義のあるところでしょうが、現実的、便宜的な措置がとられているのが現状です。
by dankkochiku
| 2007-02-20 22:56
| 刑務所を考える
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Comments(7)
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at 2007-02-24 15:36
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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at 2007-02-25 14:16
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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桜花
at 2007-02-26 21:14
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ご存知のとおり、韓国でも同様の問題が発生しております、治外法権に近い「米軍との地位協定」、日本より韓国の方が駐留米軍に有利な内容です。
日米地位協定で日本に引き渡された軍人・軍属ら、米軍の軍法会議で「不名誉除隊」の判決が無い限り、米軍の軍人・軍属の身分があり、異国の刑務所に収監された彼らを擁護する義務が合衆国政府にあります、その観点から日本の刑務所に収監されている米軍の軍人・軍属の処遇、日本人の受刑者と同様にするには「日米地位協定」の抜本的な見直しが必要でしょう。
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dankkochiku at 2007-02-26 21:16
櫻花さん 今年1月31日付、毎日新聞ネット版に横須賀刑務所のルポがでていました。米兵受刑者は17人で、強盗、強姦、強盗殺人と 「強」 のつく犯罪が9割で、平均刑期は5年4月。 日本人受刑者と同じ作業をしているのに、食事は、米兵が1日、4千キロカロリー。日本人は2800。 体格の差があるとはいえ、メタボリになるのでは?
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桜花
at 2007-02-26 23:03
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dankkochikuさま
同レポートを読みました、いつ戦地に送り込まれるか分からない米軍、殺伐とした状況で「強」のつく犯罪の発生率と何か関係があるのでは?と思います。 体格の差があるとはいえ、明らかに過剰摂取です。収監ストレスを食事で解消させる意味合いでもあるのでしょうか?戦時、米軍が将兵に支給する携帯食(レトルト)にはデザートが付いています、過去に在日米軍の基地で食事する機会がありました、豊富なメニュー・それに負けないほどにデザートも充実、隣の席で食事している米兵と比べたら、彼らは私(日本人)より倍の量でした、あれだけ豊富なメニュー・デザートがないと安心できない国民性かな?と考えたりしました。
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at 2007-02-27 01:58
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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dankkochiku at 2007-02-27 14:55
日米安全保障条約が、日本人の安全を脅かした米兵・軍属受刑者にまで及ぶとは、意外に思う方が多いのでは?
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