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今年、2007年から戦後ベビーブーム期に生まれた約800万人の、いわゆる 「団塊の世代」 が60歳を迎え、定年退職の時期に入ります。 団塊の世代を多く抱えた官庁、大中企業は、この大量一斉退職によって中核的人材が去り、組織の弱体化を憂う声が叫ばれていますが、これは刑務所の職員人事面でも同じことです。 世間ではあまり問題になりませんでしたが、刑務官の大量一斉退職は、以前にもありました。 団塊の世代の親たち、つまり敗戦後、復員軍人から大量に採用した刑務官が、1975年以後、定年になり、数年にわたって大量に職場から消えた時期です。 当時、わが国は、経済急成長期の求人難時代の真っ只中にありましたので、刑務所への就職希望者は少なく、採用できても早期退職者が続き、その穴埋めとして、職安に求人広告を出したり、職員の子弟を勧誘しました。 刑務所の現場では、急激な職員の世代交代によって、4、50歳台の職員と2,30歳台の受刑者が多いというそれまで続いてきた両者の年齢構成の分布が逆転しました。 受刑者からは、若い看守から命令されることへの反撥が増し、若手看守は、親の年ほど離れた受刑者から舐められまいと横柄な態度に出るなどの問題がしばしば起こりました。 また、古手の看守部長(主任クラス)や副看守長(係長クラス)たちの退職によって、新採用の刑務官を現場で時間を掛けて指導する、いわゆる徒弟制度式の指導者がいなくなり、各刑務所では、幹部職員が勤務手引を細かく作り、自庁研修を行って急場をしのぎました。 このことは受刑者の扱い方に変化を与えました。 親身になって受刑者の面倒を見れば、受刑者はそれに応えて職員に忠誠を尽くすようになり、施設の保安管理に役立つといった、多分に義理、人情に訴えた浪花節的な担当職員ごとの実務経験から生まれた、いわゆる 「信頼行刑」 から 「マニュアル行刑」 へと移行しました。 「オヤジ」(一群の受刑者を担当する刑務官への親称)を中心とした家族制度のような受刑者管理法が崩れ始め、それに代わって、経験不足の若手職員には、マニュアルに従って処遇し、細かいことでも上司へ報告し、指示を仰ぐことが求められ、処遇の標準化、画一化が図られました。 処遇方法のマニュアル化は、一歩間違えると大きな事故にもつながりかねない職員の 「腹芸」 や受刑者への 「顔付け」(えこひいき)の解消には役立ち、処遇の均一化につながりました。 しかし、その一方で、新たな問題も起きました。 さまざまな個性と問題をもち、それぞれの扱い方に細かい神経を使わなくてはならない受刑者たちに対して、職員が一般的な処遇マニュアルだけに頼り、それに安住し、職務の質の向上を図ろうとしないマンネリズムが問題になりました。 それ以前は、我流ではあっても、独力で担当する受刑者集団をまとめようと、その時々の状況や受刑者の能力、性格を考え、自分の裁量で指示してきたような事柄でも、いちいち上司に報告してその判断を仰ぐ 「指示待ち人間」 が増えてきました。 この傾向を助長したのが、一般の国家公務員よりも厳しい労働条件が強いられてきた刑務官にも、平成8年からの週休完全2日制が敷かれ、休日が増え、勤務時間が短縮されたことでした。 その結果、一人の工場担当が連日勤務に就く体制からは解放されましたが、その間を交代要員に任せることが多くなり、処遇マニュアルから一層、離れられなくなりました。 こうした状況の中で、明治以来、続いてきた刑務官の階級制に並行して、平成5年に専門官制が正式に導入されました。 その主は目的は、刑務官の給与面の待遇改善でしたが、そのため、一人の職員が階級制と専門官制の二つの職階制に組み込まれるという他官庁では見られない制度が生まれました。 この変則的な職階制の導入の背景には、昔から続いてきた刑務官の昇進制度があります。 国家公務員採用一種試験合格者以外の刑務官は、原則として中等科、高等科と進む部内の昇進試験に合格し、それぞれの研修を終了しない限り、係長、課長、部長、所長になる資格を取ることできない仕組みです。 しかし、中級幹部に昇進するための中等科研修所の入所枠は、100人と少なく、従って受験競争率が高く、受験を諦める職員の増加が、看守の階級のままの職員の増加を招きました。 その結果、刑務官の大多数を占める 「看守」 の職にある職員が、定年まで看守の階級のままで昇進できず、他の国家公務員に比べると、長い間には、給与面で著しい格差が生まれ、これを是正する必要から、階級制と並行して専門性を導入することになったのです。 専門官制導入後の、刑務官の昇進制度についての詳細は省きますが、以前との最も大きな違いは、看守部長、副看守長への昇進を約束した中等科研修を受験しなくても、相当期間の実務経験があれば施設長の裁量で最終的に副看守長(主任矯正処遇官)まで昇進できるようにしたことです。 ところが、この職員の待遇改善に配慮した昇進制度は、職員の上昇志向を妨げるという当初からの懸念が現実になりました。 中等科研修を受ける職員が急減し、更に、近年では、所長以上になれる高等科研修受験者までが年々減少する傾向にあります。 これは、中等科研修修了者でなくては高等科研修への受験資格がないという制度上の問題もありますが、それよりも幹部に昇進することを疑問視する職員の増えたことが大きな理由です。 幹部職員に昇進しますと、間もなく転勤があり、その後2、3年ごとの広域転勤のあることが嫌われ、安定した家庭生活の中で、仕事一辺倒でなく私生活も大事と考え、それが否定されるような幹部職員への昇進を拒否する職員が増えてきました。 これは一般サラリーマンにも見られる職業意識とも共通するものです。 こうして、例えば、平成16年の高等科受験者数は10年前の平成7年と比較しますと、324人から148人と半数以下になり、受験倍率も6.4倍から2.6倍に下がりました。 これから数年にわたって続く大量の定年退職の時期に、組織の中核を担う幹部職員の成り手が少ないことや、幹部職員の劣化を招きかねない動きは、受刑者の更生・社会復帰を掲げて法律を改正し、出発した矢先だけに、この行刑の危機をどう乗り越えられるかが、刑務所の将来を占う鍵となることは間違いありません。
by dankkochiku
| 2007-01-14 22:18
| 刑務所を考える
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Comments(30)
テレビで警察官の大量退職問題が特集されていましたが、同じなんですねえ。
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いずこも同じ2007年問題。優劣は別にして数量的には圧倒的に多かった世代ですから・・それが一気に・・・ あー考えただけでも恐ろしい。日本はどうなるんでしょう?退職金だけで175兆円とか。2007,8,9年社会の機能が一旦後退するのでは?690万人もの人が社会の一線から退く訳ですから、一種の社会革命状態。4,5年後が恐ろしい。
この問題が起こる前に、昔に比べて検挙率って落ちているんですよね。
ところで、いつも私のブログに来ていただいてありがとうございます。ちょっと、事情があって1ヶ月ほどブログを休みます。又、再開したら来て下さい。
braven さん 前々から分かっていたことなのに、今更とはと思いますが、小泉総理がしきりに言っていた、備えあれば、憂いなしとの格言を思い出しました。
kimagurebitoさん 古事記物語を是非お忘れなく、お待ちしています。
孟母「三遷の教え」というのも有る。今の時代。転勤は、ある程度は已む得ないかも知れない。それにしても、最近のニュースで「精神病歴」の有る男が「事件」を起こし、図らずも、そこに潜む「問題」が露見しました。このような者は、受け皿がなく「入出所」を繰り返しているとか?報じられています。本当でしょうか?そして彼らのような者たちは、どの位いるのでしょう。彼らには酷かも知れませんが?簡単にシャバに出して、その結果。案の定「再犯」し、その犠牲になった人は?誰を訴えれば良いのですかね?好きでこうなった身の上ではなかろうから?気の毒は分かるが?だからといって犯罪を犯して良い「免罪符」にはなり得ない。結局、何の罪もない者が犠牲になり泣き寝入りする。これは絶対おかしいですよね。そんな事がまかり通ったら?オチオチと外も歩けなくなる。どう思われますか?。。。。
tomahawkさん 平成17年から、精神疾患・障害の状態で殺人、放火、強盗、傷害など重大な犯罪に当たる行為をして、不起訴、無罪になった患者を対象に、強制的に精神病院へ入院または通院させる 「心身喪失者医療観察法」 が施行されました。 同年末日までに、それぞれ49人、19人がその決定を裁判で受けました。
それぞれ49人、19人がその決定を裁判で受けました。・・・・・・・有り難うございます。ただ?この49人。19人は、それぞれ何人位いた中の49人であり、19人なのでしょうか?。。推測ですが、それぞれの分母は、相当に大きな数字ではないか?と思われ、そこがチョッと気に掛かるところです。。。。
tomahawk さん 分母は80人です。
いつもご訪問いただき、熱心なご質問ありがとうございます。 精神障害受刑者については、06.1.23付けブロクにもありますのでご参考までにご覧ください。 こんなテーマはどうか、というのがありましたら、今後とも、お知らせください。
西日本の某拘置所などで発生した組織関係者らによる風紀の乱れからの規律崩壊、日本赤軍・学生紛争の公安事犯の増加、対応できるベテラン刑務官の大量退官で保安警備に関する能力低下を危惧した、某刑務所の保安課長であった小田島氏がルーツの「管理行刑(マニュアル行刑)」、一律の処遇と動静小票という違反切符を実施することで経験の浅い刑務官でも、受刑者を管理できるシステムと聞いております。
1970年代までの学校も担任教員の裁量が強く生徒の実情に対応できる教育が可能でした、第一次ベビーブームで生まれた世代が親となり、その子供たちが就学期に入ってから学校の大量建設で、生徒の実情に対応できる教育は難しくなり、生徒を一定の型に押し込む「管理教育」が生まれ、その管理教育の型に当てはまらない生徒は不適格者の烙印を押され学校から弾き出されました、昨今の様々な犯罪で世間を騒がせている世代、ちょうど管理教育を受けた世代と思います。 昨年、「刑務官公募」なる採用選考が数箇所の管区で実施されました、応募年齢が18歳~50歳と幅広い世代から公募したそうです。
櫻花さん 刑務所のご事情にもお詳しく、今後とも貴重なご意見や当ブログで、こんなテーマはどうか、などがありましたなら、ご提案の方もよろしくお願いします。
こちらこそ、御ブログを拝読させて頂き大変勉強になります、処遇部門が花形視される矯正の現場で、心理職員は裏方のイメージが強く注目されることが少ないと思います、出所(仮釈も含めて)後の再犯率が高い点から更正教育・改善プログラムやカウンセリングなどで心理職員の増員と活躍の場の拡大が必要と思います。
私から見て、もう一つの「2007年問題」は、4月に美祢(山口県)、10月に播磨(兵庫県)・喜連川(栃木県)に官民協働のPFI刑務所「社会復帰促進センターが開所します、この4施設に合計4000人(内500人は女子)が収容されることになり、段階的に移送することになりますが、それでも100人単位の移送になることかと思います、刑務所だけでは対応は不可能と思われ警察・交通期間との連携の問題、最も重要なことは移送経路に当たる地域の理解です、恐らく新聞やテレビで報道されない私から見た「もう一つの2007年問題」です。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
櫻花さん 刑務所職員定員は、平成13~14年の刑務官による傷害致死等事件までは減り続けていましたが、その後増員に転じ、16~18年度は年間250人以上と、戦後最多(?)の刑務官の増員が続いています。
ホームページ拝見しました。 今後ともお気づきのことがあれば教えてください。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
櫻花さん 府中、徳島のブログ事件。 個人名、経歴を出すというのは非常識な話。 守秘義務さえ教えられていないのかと嘆かわしい次第。 その一方で、「意見にわたる部分は、私個人の見解で、当局の公式見解ではない」 などと、どの部分が個人的見解か公式見解かを示さずに書いている右顧左眄論文もあります(笑)。 当ブログは、しっかりしたデータを下に中立的立場に徹するように努めています。 今後ともよろしく。
はじめまして。toraと申します。先日、政府の提唱する再チャンレンジ政策によって、三十代の人間にも刑務官採用への道が開かれました。社会的体面という意味では、フリーターよりも国家公務員である刑務官の方がはるかに説得力がありますし、年齢的に公務員への道が閉ざされた、優秀な人間が多数応募してくることも予想されます。しかし、残念ながら今回の採用定員は、行政なども含めた全職種を通じて100人という少なさです。対象人口が10万人とも言われる高齢フリーターにとって、この数は宝くじを買うようなものと言えるでしょう。最近は、精神的ストレスをともなう学校教員なども、新卒者より社会経験の豊富な社会人を採用する傾向があります。精神的ストレスや労働環境という意味では、刑務官においても同様なことが言えると思いますし、新卒者から社会人採用に少し重心を傾けた方がいいのではないかと考えたりもします。10万人の中には、社会の辛酸をなめた良い意味での「オヤジ」候補者がたくさんいるのではないでしょうか。
tora さん お立ち寄り頂きありがとうございます。 現在も、年功序列、終身雇用が普通で、希望者が多いのが公務員です。 景気が持ち直し、倍率が下がったとはいえ、体力と気力が勝負の刑務官試験は、昨年度でも8倍以上の競争率。 それに、相手が相手だけに、不快なことが多い職場で、余程の覚悟と目的意識が必要です。
試験って公安職ばかりでなんだか新撰組の採用みたいですね。
新撰組との共通点は、腕っ節の強い浪人(フリーター)に応募を呼びかけたところでしょうか?(笑)
私も志願します。負けるつもりはありません。何を受けるかは秘密です。お互い全力でがんばりましょう。
平成18年度の刑務官募集人員は825人(うち女性100)で4.9倍(前年は8.4倍)でした。 今年度のは6月20日に発表とか。 以上、法務省HPからです。
技官で高等科を出た場合はどういうキャリアパスになるのでしょうか?
また法務省本省や鑑別所でも幹部となると心理学を使う仕事より事務仕事や管理が主になると思いますがその時でも 官職名は法務技官なんでしょうか?
ゲスト さん 矯正現役の方とお見受けしますが、難しいご質問です。一般には、その職場にそのポスト(定員)があるか、によって決まるのが普通です。例えば、少年院では、国公一種矯正心理専門職資格者でも技官ではなく、院長でも医療少年院以外は教官です。
ありがとうございます。
自分はまだ現役でなく今年受験予定です。 ただ色々と話を聞くと昇進していくと現場ではなく 管区や局など幅広く矯正全体に関わっていくようになるみたいですのでその際に官職名や扱いがどうなるのかという事に興味がありました。
法務教官ですが高等科を受験すると直ぐに現場を離れる事になるんでしょうか?
かさはら さん すぐに現場を離れることはありません。一定期間、東京で高等科研修があり、その後、別の矯正施設か事務官庁へ人事異動があるでしょうが、その際、あなたの希望の場所も勘案されます。
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