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「法律には違反したが、悪いことをしたつもりはない」 と刑務所に来ても正当性を主張する一群の受刑者がいます。 公安関係の過激派たちと暴力団関係者たちです。 今回は、「マル暴」 と呼ばれる暴力団関係(組関係)受刑者が話題です。 近年の経済不況から、新入受刑者の中で初入者の割合が上がり、組関係者の割合は、相対的に下がっていますが、実数の方は、最近5年間では、3千人台から4千人台に増えています。 組関係のある受刑者は、犯罪性が進んでいると判定されて、初入者であってもB級系統の刑務所に収容されます。 そのため、B級施設の受刑者の3分の1以上を組関係者が占めることもあります。 組関係者を管理する上で、つねに注意しなくてはならないことは、組関係者の情報網です。 これについては、前に、「蛇の道は蛇」(06年2月13日)でも取り上げましたが、職員には分からないような彼ら専用の情報網が所内に巧妙に張り巡らされています。 彼らは、これを使って、所内・所外の仲間と連絡をとりあい、刑務所の管理機構を操作して、自分たちに有利なように画策し、カタギ(組関係以外)の受刑者には威圧を加えます。 B級刑務所に付設の拘置所で刑が確定した組員たちは、その施設に下りてきますから、特に、組幹部についての情報は、拘置所の経理夫、受刑区から拘置所に通う掃除夫や食事運搬夫などを通じて、いち早く組関係受刑者たちへ伝わります。 この状態を放置すれば、同系統の組員たちと反目する組員たちの間で不穏な空気が広がるのは間違いありませんから、受刑者の配置を決める分類担当官は、派閥関係の確認と配置に神経を使います。 組関係者についての処遇調査には、地元警察の 資料を参考にしますが、個別的に、誰と誰とが入所前に関係があったのかまでは分かりませんので、一応、作業場に配置し、所内での動きを観察します。 組長クラスの者を作業場に出しますと、社会での取り巻き連中が放っておかず保安上危険ですから、単独室に収容し、そこで作業をさせる、いわゆる昼夜独居処遇にします。 しかし、隔離を目的とした昼夜独居収容者には、映画会、運動会、集合教誨など集団場面への参加が許されないばかりか、狭い単独室に長期間収容することは健康上、好ましくありませんので、普通、本人の所属する組とは無関係の遠方施設へ移送します。 一方、大物ではないチンピラたちは、それぞれ分散し、作業場へ配置しますが、作業場と雑居室とが同じのため、一番、迷惑をこうむるのが、窃盗犯や詐欺犯が多いカタギの受刑者たちです。 特に、組関係のある初犯者(初犯B)の中でも、少年院上がりといわれる若い連中は、組の先輩の目を意識して、いつも大きな顔をして突っ張っています。 このような者と雑居室を共にした、おとなしい者や老齢者など弱い者たちは、気の毒です。 便所掃除を押し付けられ、便所の隣に就寝場所を移されることもあります。 反則を強要されて断れば、いじめを受け、挙句の果てに反則の片棒を担がされて懲罰を受けることもしばしばです。 囲碁、将棋は組関係者たちに独り占めにされ、相手をさせられて、勝とうものならば、ひどく怒付かれます。 ソフトボールのメンバーを実力本位で選ぼうとするとトラブルが起きますので、カタギは実力があってもベンチでの見学組になるしかありません。 刑務所の規則は細か過ぎると、ふだん不平を言う受刑者たちからも、横暴な組関係者に対しては、もっと規則を厳しくして欲しいという声さえ出てきます。 自分たちの生活が今以上に縛られても、組関係者からの圧力よりはましだからです。 組関係者の数は、B級受刑者の3分の1ほどとは言え、組員としてまとまっていること、若い年齢層が多いこと、施設慣れしていること、能力的に平均以上の者が多いこと、体力が優れ行動が敏捷なこと、自己顕示欲が強く、メンツにこだわり、激昂しやすいことなどから、おとなしいカタギの受刑者はいつも組員の顔色を見ながら生活しています。 このような被害をいつも受けている受刑者たちからは、「職員は問題に気付いていない」、「ヤクザの兄貴分のような人には注意もせず、見てみぬふりをする」、「ヤクザものを班長にしておけば、他の者を抑えるのに都合いいと思っている」 「顔付け(えこひいき)をする職員がいる」、など不満の声が少なくありません。 職員がすべてこうとは言えませんが、このような弱者からの不満が出てくる状況が刑務所の全体的な管理体制にあるのも否定できません。 一例をあげますと、作業場担当の刑務官は、自分の受け持つ受刑者全員が作業科程(就業者が一定の作業時間内に果たさなくてはならない標準作業量)を果たし、その上、他の工場よりも生産高を上げることを誇りにする風潮があります。 作業能率を高め、生産高を上げるためには、作業の工程ごとで指導的役割をもつ班長の協力が必要です。 そこで、班長に適した実力者となると、自然と組関係者から選んでしまうおそれがあります。 彼らは、大体が体力、能力面で優れ、組織からの命令に絶対服従する生活に慣れていますから、職員の命令にも要領よく従うからです。 ところが、このような班長の下では、作業能力の低い受刑者に不当な圧力が掛かり、自分たちが作った不良品を文句の言えない者たちの製品と入れ替えて検査を通すなど、自分たちの勢力を広げるためにとんでもない不正が行われる危険性が多分にあります。 所内に跳梁跋扈するマル暴たちについては、次回も続きます。
by dankkochiku
| 2006-07-31 12:33
| 刑務所を考える
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Comments(2)
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candragupta at 2006-08-02 11:23
やはり、どこにいても、組織力と情報力がある人間は強いようですね。
しかし、刑務所内でそう言う輩がデカイ顔をしているという事実は、少し残念ですね。 まあ、受刑者とは言え、集団生活を行っていれば、それなりの差は出てくるのは事実でしょうが…
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dankkochiku at 2006-08-02 22:06
暴力団は刑務所内でも攻勢を掛けてきますので油断できない集団です。 5月にサンパウロで発生した麻薬密売組織による刑務所での一斉暴動騒乱など、まさか日本でと思いますが、他山の石としなくてはなりません。
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