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受刑者の隊列が 「いっちに、いっちに」 と掛け声を上げ、手を振り、歩調をとって並んで移動する光景をテレビで見てどう思われましたか。 「刑務所は悪党どもをなかなかうまくしつけているではないか」 と感心する方がいるかと思うと、「こんな軍隊式行進が、社会復帰になんの役に立つのか。人間性無視ではないか!」 と猛反対する方もおります。 好き好んで刑務所にきたわけでもない受刑者たちを連れて歩くのに、観光ツアーの案内嬢みたいに旗を持って先頭を行けば、後からついてくると安心していいはずはありません。 特に、累入者の多いB級系統の刑務所(B級施設)では、集合を掛けてもなかなか揃いません。 やっと行進が始まっても、途中で会いたい者のところへと抜け出すもの、隣の者とケンカ、口論を始めるもの、それでなくても、話し声の音量は相当上がり、刑務官の指示は全く届きません。 看守たちは、絶えず 「コラ!静かにしろ!話をやめろ!間を空けるな!列を乱すな!」 と怒鳴りまくります。 受刑者たちが 「オヤジ」 と呼ぶ工場担当のカオを立てて、少しは静かになり、その場をやり過ごします。 隊列を監視するはずの新任看守たちは、その不逞な輩たちの姿に圧倒されて、当たり障りのないように黙って付いて行くだけす。 こんな光景は、昭和40年代には、海千山千の者ばかりのB級施設ではあちこちに見受けられました。 このような施設では、暴力ボスが年寄りなどおとなしい受刑者を脅して作業製品を横取りする、部屋に戻れば肩や腰を揉ませる、便所掃除を押し付ける、自分らの反則行為が見つからないように見張りをさせるなど、したい放題のことが日常的に行われていました。 こうなると、刑務所の権威は地に落ち、受刑者たちの言いなりになって、不祥事件に発展することも再三でした。 なにしろ受刑者の方が職員の数の何倍も多いですし、職員の弱みに付け込もうと虎視たんたんとしている輩ばかりですから。 このような毎日では職員の士気が上がらなくなります。 こんな実状を変えようと生まれたのが、掛け声をかけ、歩調をとっての行進でした。 お陰で少人数の刑務官でも何十人もの受刑者を作業場や入浴場や部屋へ戻すにも整然と移動させることによって、この間の事故も激減し、移動時間も短くすることができるようになりました。 この移動方式は、B級施設で始まり、次第に初犯者たちの多いA級系統の施設(A級施設)でも採り入れられ、やがてどこの施設でも新入教育に、このいわゆる軍隊式行進が 「集団訓練」 の科目に加えられました。 近年、軍隊式行進には、部外者から批判もあり、職員の掛け声を復唱させながらの行進を止める施設が増えましたが、集団の移動には、隊列を組んで一糸乱れず行進させる以外に効果的な方法はないと刑務官たちは思っています。 勿論、受刑者たちが軍隊式行進に納得しているわけはありません。 出所時に書き残していったノートには、次のような怒りの言葉が記されていました。 「集団行動訓練や軍隊行進をさせられるたびに、高圧的態度で強いられることへの反発と惨めさを感じます。 集団行動にひとりでも合わない人がでると、自分は間違っていないのに、何回も繰り返しをさせられ、運動をするために工場から出されたのに、運動時間が少なくなってしまい、その分、楽しみが減ってしまいます。」 「運動会などの入場行進ならばともかく、ああいう歩き方をさせられている姿は女房や子どもには絶対に見られたくない屈辱的なことですが、懲役だからと諦めて大声を出して自分を忘れて歩いています。」 大のオトナが掛け声を上げて歩調をとらされて歩き、全員が一斉にできなければ、できるまでやり直しをさせられる理不尽に文句を言いたい気持ちは分かります。 しかし、刑務所の管理者たちは、彼らは刑務所に入った途端に改心するわけではないし、とても彼らを信用するわけにはいかないから、得体の知れない個々人を集団にまとめ、集団全体が指示通りに動いている限り、問題はあまり起こらないと考えているのです。 刑務所では、受刑者の個人的行動はウサン臭いものであり、職員の指示通りに全体がまとまって行動している限り、囚状(受刑者の動静)は安定していると評価されます。 受刑者は、一定の基準で各施設に分散して収容されており、それぞれの施設内でも処遇別に分けられているのだから、これ以上、個人に例外を認めれば、刑務所の秩序を乱すもとになる、と大部分の職員は信じています。 軍隊式行進は、「集団処遇」 と呼ばれている集団管理を象徴するものなのです。 こうして、受刑者は、次第に物言わぬ 「指示待ち人間」 「刑務所人間」 になっていきます。 ★今回のブログは05年9月28日付け 「ムショ生活は集団本位制」 を加筆修正したものです。 当時頂いたコメントもそのまま、ここに移させて頂きました。
by dankkochiku
| 2006-06-20 23:03
| 刑務所を考える
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Comments(1)
Commented
by
dankkochiku at 2006-06-21 10:16
Commented by ユイ at 2005-10-27 01:33 x
見つけました この プログ 実は 2週間ほど前に 見つけたのですが コメント 書くのに 時間がかかりました 内容を読んで 普段 耳にすることもない 刑務所の中の話は 先月 慰問を行ってから 興味をもちました そして 何となく 話題の 共通点 見つけました 私の 愛猫も 黒猫 そして お店のまわりで 遊んでいる 猫たちが 大好きなのです 彼らが いる おかげで ねずみもこないし なんて
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