カテゴリ
その他のジャンル
外部リンク
記事ランキング
画像一覧
|
平成に入ってから性格に偏りの大きい犯人による凶悪犯罪が以前よりも目立ちます。 裁判に提出された精神鑑定結果から見みましても、平成2年、新潟県で拉致した小学1年女子児童を自宅に9年間以上監禁し、脅迫、暴行を繰り返していた39歳の男の事件(強迫性障害、分裂病型人格障害)。 平成13年、大阪教育大付属池田小学校に侵入し出刃包丁で児童、教師23人を殺傷した37歳の男の事件(情性欠如の性格異常)。 平成16年、奈良県で小学1年女子児童を誘拐し殺害した36歳の男の事件(反社会性人格障害)。 平成17年、大阪府での自殺サイトで出合った自殺志願者3人を殺害した36歳の男の事件(性的サディズム、フェティシズム、反社会性人格障害の混合状態)などがあります。
この種の異常な犯罪者たちは、知的障害もなく、狭い意味の精神病とは違った、感情や欲動の面での偏りが大きく、主に対人関係に問題があり、性格異常、異常人格、精神病質、人格障害などと診断される精神障害者です。 しかし、その発生原因に不明な点が多く治療方法が確立していないばかりか病院内でトラブルメーカーとなることが多いので、精神科病院では歓迎されず、大部分は刑務所に収容されています。 受刑者にもっとも普通にみられる人格障害者のタイプをK・シュナイダーの精神病質類型に従って分類しますと4種類あります。 第1は、意志欠如型と呼ばれるひとです。 自分の目的に向って頑張ろうとする気持ちが長続きせず、無気力で、生活能力のない、環境次第のひとで、窃盗の累犯者の中にしばしば見られます。 彼らは、行動が規制される刑務所では従順で模範囚と呼ばれるひともいますが、釈放された途端に、水桶のたががはずれたように刑務所での努力も水の泡となって生活が乱れ、戻ってくるひとたちです。 第2は、爆発型です。 活動的な働き者で世話好きなひとですが、ささいなことでいきり立ち相手構わずに暴力を振るい、物を壊しておきながら、それが終わるとケロリとして平謝りし、普段の状態に戻る型で、社会でも刑務所でも喧嘩の常習者です。 第3のタイプは、自己顕示型です。 見栄を張り、周囲から注目を得ようとする気持ちが強いあまり、嘘でも自信たっぷりに得々と喋り、動きまわり、周囲がそれに迎合している間は、機嫌がいいのですが、反駁されると途端に相手に攻撃の矛先を向けてくる自己顕示型で、若い不良集団員や口達者な詐欺犯の中に見受けられます。 第4は、情性欠如型です。 殺人、強盗、強姦など凶悪犯に多い型です。 普段はおとなしく目立たず、何を考えているのか内心の分からないことが多く、個別的に話し合っているうちに始めて、被害者への憐れみや同情心、良心の痛みを少しも感じていないことが分かります。 自分の不遇をいろいろと述べ立てて同情を求めながら、事件のことになると冷笑を浮かべながら被害者にも非があったなど平気で不満を漏らすような受刑者です。 この4種類のよく見られる人格障害受刑者は、一つの型だけでなく、別のいくつかのタイプを合わせもっているのがむしろ普通です。 人格障害のある受刑者との面接や観察から共通して分かることは、自己中心的で他人の気持ちが理解できず、自分の目先の利益のためには誰彼構わず、他人を道具のように利用することしか考えず、思い通りにならないと不機嫌になり、親しいひとたちの信用を裏切り、違和感をもたれるひとだということです。 対人関係は表面的で近所付き合いは如才なく振舞えますが、非常識で、嘘が多く、執拗に要求を迫るなどして争いを起こし、職場仲間に警戒心、恐怖心を呼び起こさせ、疎外されるひとでもあります。 また、生活態度について諭せば当座は分かるのですが、改めようとはせず、自分の行動の結果を予測できずに同じ過ちを繰り返すのも共通した特徴です。 人格障害の要因には、幼少期の母親不在、虐待や過保護、溺愛、学校でのいじめ、不良仲間との交友などの重なった生育環境の影響のほかに、脳波異常や糖代謝機能低下など脳に異常が見つかる例もあります。 昭和63年に東京で起きた女子高生コンクリート詰め殺人事件の裁判では、主犯格の少年に脳の器質的欠陥があり、行動の抑制能力や性格形成に影響したとの鑑定結果が出されました。 また、問題行動や非行が学齢期から現れたり、少年時代に保護処分や刑事処分歴があったり、非行や犯罪を1年以内に繰り返したり、犯罪の種類が多岐にわたるなどの特徴があることは以前から指摘されています。 犯罪性のある人格障害の治療は、これまでのところカウンセリングや精神分析療法ではあまり効果がなく、どうかすると治療者自身が被害者になることがあり、注意が必要です。 現在、精神科での薬物治療や行動療法を加味した生活訓練などに望みが託されています。 いずれにせよ改善には長期間にわたる根気のいる指導と援助が必要である一方、爆発型や情性欠如型の人格障害者は加齢と共に体質や気質に変化が起こるのか自然に落ち着く例もあります。 今日は長くなりましたので、この続きは次回にします。
by dankkochiku
| 2006-03-13 15:25
| 刑務所を考える
|
Comments(5)
Commented
by
kimagurebito at 2006-03-20 13:04
私は事実関係にこだわる性癖があって、確かに凶悪犯が増えている印象はあるが、本当に(数字として)そうだろうかという疑問もあります。白書なども見てみるんですが、今ひとつよくわかりません。
0
Commented
by
dankkochiku at 2006-03-20 22:30
昔かから「犯罪統計ほど分かりにくく、また、当てにならないものはない」と言われており、この狭いコメント欄でのお答えは無理ですが、一例を上げますと、統計用語の違いです。 「凶悪犯」とは、犯罪白書では、殺人と強盗の二つを指していますが、警察白書では、殺人、強盗、放火、強姦の四つを指しています。従って、平成16年の凶悪犯の認知件数は、犯罪白書では約8700件ですが、警察白書では約1万3千件になります。 また、犯罪の増減についても、いつと比較してかによって統計値が変わります。 10年前の平成6年との比較ならば、殺人は140件増、強盗は4611件増、放火は433件増、強姦は560件増です。 論者が統計を引用して何を言いたいのかに帰着しそうです。
Commented
at 2013-08-20 13:37
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
dankkochiku at 2013-08-20 22:25
カギコメさん 問合わせ中ですので、しばらくお待ちください。
Commented
by
dankkochiku at 2013-08-25 17:12
カギコメさん 実務歴のある友人からの話では、児童精神科医のいる児童相談所、または、そちらの地区の保健センター、また、東京近辺でしたら、事前の紹介、予約が必要ですが、国立成育医療センターが良いでしょう。
|
ファン申請 |
||