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少し固い話題が続きましたので、肩の凝らない受刑者たちの生活の知恵について話します。 職員より数倍も多い受刑者を集団管理するためには、まず職員の指示、命令に従わせて処遇計画通りに全体を画一的に動かすことが最も効率的な方法と考えています。 こうした集団本位的、全体主義的な管理方法の下での生活に受刑者たちが不満や反感をもつのは自然です。 しかし、大方の受刑者たちは規制緩和を求めて刑務所当局へ公然と要求を突きつけて抗議をしたり、職員を買収したり、工場へ出入りの業者を脅して外部と連絡を試みるなどは、一部の人間がすることで、最悪の方法だとも思っています。 受刑生活に慣れた者ならば、刑務所が立てた処遇計画に巧みに便乗して目的を達するという穏便な方法を選びます。 行動規制の一つに、無断で所内移動の禁止があります。 逃走目的の失跡防止のほかに、共犯者や社会での悪友などが組んでよからぬことを始めるのを予防するためです。 自分に決められた舎房や工場以外のところに友人や知人がいるのが分かっていても気軽く会って話をすることができません。 もともと天涯孤独の受刑者には気にならない規則ですが、暴力団関係たちにとっては、共犯でなくても親分や兄弟分がいると分かれば、接触しようと画策します。 この場合,最も単純なやり方は、映画会、演芸会などの大勢が一同に集まる機会に、周りを見回して知人にサインを送るやり方ですが、職員に見つかり会場からつまみ出されたのでは元も子もなくなる恐れがありますし、これを防止するために、開演前と終了後に全員黙想の号令を掛ける施設もありますから、賢明な方法とは言えません。 よく使われる手は、炊事場から工場へ食事を運ぶ運搬夫、医務課から指定された薬剤を工場に届ける衛生夫、洗濯物を集配する洗濯夫、工場巡回の床屋など職員の信任を得て各工場を巡回する経理夫に伝言を頼んだり、多少の危険を冒してガテ(手紙)を渡す連絡方法です。 経理夫の方も 「やーさん」(暴力組関係者)からの依頼を無下に断る勇気はありません。 こうしてお目当ての相手と連絡がつくと、次に出会う方法として、互いに示し合わせて仮病を使い医務課へ診療に行きます。 待合室には外の工場、舎房からの受刑者も来ていますからヒソヒソ話くらいならできます。 休日に訪れる宗教指導者の教誨師、カウンセリングやクラブ活動を指導する民間相談員のようなボランティアに標的を合わせる手もあります。 一人で複数の集会に参加して、よその舎房や工場の受刑者たちと広く会えれば、所内の情報交換や組関係者の動静を知るのには絶好の機会です。 善意あるボランティアの方がたは、常に来る者は拒まずの姿勢ですし、立会いの職員も干渉できにくい場です。 でも、彼らの下心がひょんなことでバレることがあります。 定例の句会で、皆が持ち寄ってきた宿題を先生が一句ごと読み上げて批評に及んでいた時のことです。 「この作者の方はどなたですか」 と何度か声を掛けましたが、返事がありませんでした。 全く俳句を知らない男がいつも入選する受刑者に作らせたので、自分の句かどうかも分からなかったのでした。 B級刑務所では、時に、善意の慰問団を装って暴力組織関係のプロが紛れ込んで訪れ、同系統組員の受刑者を激励に来ることがあります。 有名な芸能人が出演中に代表者が幕間から顔を出したり、最後に挨拶をしました。 後になって敵対する組関係の受刑者から通報があるまで、刑務所側は全く気づきませんでした。 その点、アマチュアやセミプロの民謡団やブラスバンドなどは安心です。 このような受刑者間の情報ネットワークの存在は、開放刑務所や初犯受刑者施設ではあまり弊害が目立ちませんが、自由への要求と規制への要求との綱引きの激しさは、分類収容された受刑者の質の良し悪し次第です。
by dankkochiku
| 2006-02-13 15:51
| 刑務所を考える
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