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国民の理解が十分得られていないと認めながら、安倍政権が、今国会で何としても安全保障関連法案の通過、成立にこだわるのは、今年4月、オバマ大統領に今国会期中に日米防衛指針(ガイドライン)を改定し、米軍と自衛隊の地球的規模の協力を約束してきたことと、ほかに、2つのトラウマがあるようだ。
一つは、1990年の湾岸戦争で日本は米国からの要請に沿って多国籍軍へ130億ドルもの資金協力を行ったにもかかわらず、米国からも、クウェートからも感謝されるどころか「日本は金を出すが、血を流さない」との批判をうけたことのトラウマだ。 二つ目は、日米安保条約によって、日本は他国からの武力攻撃に対して米国との共同防衛を可能にし、日本国内に米軍の基地使用を認めたが、他国からの米国への武力攻撃には、憲法上、米国を守れない片務的条約に「日本はアメリカ保障の安全にただ乗りしている」との非難だ。 安倍首相は、「最近、世界情勢が変化した。ミサイルなどハイテク兵器の著しい進歩に伴って、日本は武力攻撃を受ける危険性が増している。、常時それに備えた防衛力が必要だ。一国のみでは自国の安全を守れない」などと理由を挙げ、日米防衛協定を改正し、同盟国(米軍)が攻撃され、我が国の存立に関わる場合は、同盟国を支援するために自衛隊を海外どこへでも派遣できる立法化を目指している。この集団的自衛権行使を容認することによって、我が国は、一国平和主義(国家利己的主義)から脱して世界平和に貢献できる「積極的平和主義だ」と、一方的に主張する。 しかし、米国が世界の警察官を自認していた当時を思い出して欲しい。古くは1965年のベトナム戦争。東南アジア条約機構に属していた韓国、タイ、オーストラリアなど主要構成6カ国は、集団的自衛権を行使し、南ベトナムに派兵し、米軍を支援した。そもそもの開戦の動機は、米軍艦が北ベトナム軍からの攻撃への報復だったが、これは、全くの誤まった情報と分かり、戦争の正義は失われ、民間人に450万人以上の死者をだした。 更に、2003年のイラク戦争では、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの理由で、国連の査察調査団による事実の未確認のまま、米国は英国、スペインなどと共に、安保理の決議なしに戦端を開き、イラク軍の軍事施設を破壊し、首都バグダッドを制圧したが、結局、大量破壊兵器は発見されず、この時も、米国はもとより支援国は大義なき戦争に加担したとの国際的非難を甘受せざるを得なかった。 同盟国が攻撃され、自国の存立が脅かされる明白な危険のある場合、集団的自衛権行使が容認されると政権側は主張する。しかし、「我が国の存立を脅かせる明白な危険性」の判断は、極めて曖昧で、政策上の恣意的判断で決められる虞がある。いつの時代も、どこの国も、他国への侵略は、国防、正義、平和の名のもとに、正当化にしてきたではないのか。 また、自衛隊の派遣は、専ら米軍の後方支援に限られると安倍内閣はいうが、支援の内容は前線への食糧支援、負傷兵の医療支援、戦闘地域に取り残された一般市民救援、武器、弾薬補給支援などに及べば、後方地域はいつでも戦闘地域に代わってもおかしくない。米軍と戦争状態にある国は、米軍を支援する国を敵対国とみなし、後方基地はいつでも前線地域になる。首相は、戦闘地域になれば、撤退するという。敵が攻めてきたら逃げる、ということだ。まことに頼りない自衛隊にするつもりらしい。 また、世界各地で敵対国からのテロ攻撃が頻発している。こうして、我が国は、戦争の参加国になるのは火を見るより明らかだ。もちろん、世界の警察官にかげりが見えてきた米国にとって、我が国の集団的自衛権行使は米国の人的損失、軍事予算の削減に繋がり、歓迎するのは当然だ。 こうした事態を招く虞が多分にあるのに、安倍内閣は、国民からの反発、支持低下を恐れ、自衛隊員の戦死などリスクを増やさない対策をとると言い出したものの、流石に見え透いた楽観的答弁に気付き、リスクが増えるのをしぶしぶ認めた。 昨日、NHKの国会中継を見ていたら、ある野党議員からただ多数決で安保関連法案を押し通すのを止め、いったん廃案にしてはどうかと質問したのに対し、安倍首相は、現政権は、国民大多数の支持を得て選ばれた。民主主義の原理に則ってこの法案を今国会で通過させるのが民意だ、との驚くべき趣旨の答えをした。 集団的自衛権行使については、憲法学者の大部分が違憲とし、7月の世論調査では、安保関連法案の今国会成立に賛成は26%に留まった(日経新聞調査)。にも拘らず、自民党の高村正彦副総裁は7月19日のNHK番組で、安全保障関連法案に国民の理解が得られていない状況について、「せつな的な世論だけに頼っていたら、自衛隊も日米安保条約改定もできなかった。国民のために必要だと思うことは、多少支持率を下げても進めてきたのが自民党の歴史だ」と強調し、また衆院で採決を強行したとの批判には「審議が熟したと判断した。最後は多数決で決めるのが憲政の常道だ」、「世論などせつな的なもので、それに左右されていたのでは政治は進まない」と居丈高に反論した(産経新聞)。 民主主義の原理にのっとって政権の座につけば、後は、何をしようと国民意思の反映と信じる妄言だ。ふと、思い出したのは、ヒトラー。巧みな大衆説得力で民衆の心をつかみ、民主的とされたワイマール国民議会選挙で圧倒的多数の支持をえて総統に選ばれた。そしてその後、自国、占領地のユダヤ人を大量虐殺し、人類の敵と化したことだ。 私は、来年の参院選では、ねじれ国会の再現を期待する。国の将来を決する議論は、「急がば回れ」だ。民主主義を独裁政治に利用するとは、日本は立憲国を放棄したとしか考えられない。「戦力と交戦権を否認」(憲法第9条)しても、平和が保障されることを、積極的に世界に示すのが我が国の務めではなかろうか。
by dankkochiku
| 2015-08-26 23:47
| 時評
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Comments(2)
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cocomerita at 2015-09-13 15:17
Ciao dankkochiku さん
秋ですね 暑かった日本で さぞかし皆さんホッとしてると思ってたところの、この水害 被害に遭った方たちが気の毒でなりません これも 広島の土砂崩れのように、いい加減な住宅開発が裏に潜んでいるような気がしてなりません 国民から選ばれた、、って 内閣は国民が選んだのではなく そして 選ばれたとしても、選ばれたからと何でも自分の思い通りにしていいという理屈は逆立ちしても成り立たない 金出しても 血は流さない?? そんなこと言われてトラウマになってる暇があったら 血など誰の血も流さないでいいに決まっていると日本は一人の国民もその血を流させることなく守るのです と言ってやればいいだけの話 たかが 一個の政府のトラウマで戦争に巻き込まれるのはいい迷惑ですが、原因はそこではなく、ただ 彼らに 安倍の 目立ちたい。といううす汚いちゃちな野望の賜物だと考えます おばかそうな女性議員に囲まれてにやついてる安倍 あの男も男だけど 取り巻く女たちも 女たち 情けないことしきりです
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dankkochiku at 2015-09-14 17:44
Ciao cocomerita さん 気象異変の続くなか、猛暑日続きの今年は流石に堪えました。そんなわけで、世間では次つぎと問題が起こっているのにブログの方は纏まらず。いや、参った(笑い)
土台、政治家は性格的に目立ちたがり屋、ハッタリ屋、大法螺吹きが庶民の支持を受けます。鬱型、生真面目では勤まらないのが相場のようで....。 今週、安保関連法の参院通過を強行を企む政府を何としても阻止しなくてはならないと思いながらも、野党勢力の無力さにジリジリ。連日の戦争法案反対デモも、政府に牛耳られ政府情報機関と化したNHKはほとんど報道しません。戦前ファシズム体制の再現です。
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