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「粋な巾着切 小粋な忍び 強盗強姦バカがやる」 とは、小菅刑務所(現在、東京拘置所)が累犯受刑者を多く収容していた当時に流行った小唄。 なぜ、強盗は馬鹿がやるのかというと、強盗事件には、警察が力を入れ、捕まれば重い刑が待っているからだ。 例えば、歩行中に鞄をひったくられて転倒し、打ちどころ悪く、死亡すれば、加害者は、奪った金品の多寡に関係なく、強盗致死罪に問われ、その法定刑は死刑か無期刑しかない。
では、強盗犯は、どれ程、獲物を得ているのだろうか。 強盗による被害を一応、現金だけに限ると、平成21年は、現金を全く手にできなかった強盗犯は全体の25%、1万円未満の者は23%、100万円以上は4%に過ぎない(警察庁「平成21年の犯罪」)。 つまり、窃盗常習犯から見れば、強盗犯の過半数が手にする金は、10万円にもならないのに、捕まる危険が多く、刑の重い犯罪をするのは馬鹿げているということだろう。 経済不況時には強盗が増える。 平成5年、バブル景気崩壊以来、経済の低成長、不況、就職難が続いている。 それと連動して強盗の認知件数は、4年から2千件台に増え、16年には7千件台のピーク、その後、21年までに4千件台へ下がり始めた(平成22年版 犯罪白書)。 これまでは犯罪をせずに耐えてきた生活に余裕のない層が、収入が途絶え、借金が重なり、苦境から抜け出ようと思い悩んだ末の強盗事件がしばしば報道されている。 因みに、21年に検挙された強盗犯の52%には前科がなく、また、同年、刑務所に入所した強盗犯の75%は受刑歴のない初入者だった(警察庁統計、矯正統計年報)。 しかし、初犯の強盗犯(いわば素人の犯罪者)だから大したことはないと考えるのは大間違いだ。 素人だけに失敗を恐れて犯行前に過剰な準備をすることで、予期しなかった危険な結果を招くことが少なくない。 平成13年、金融業、武富士弘前支店の強盗殺人・放火事件は、犯罪歴のない43歳のタクシー運転手の犯行だった。 男は、詐欺の被害に遭い、借金がかさみ、思いつめての犯行で、脅せば現金を差し出すだろうと思っていたのが、店員に断られ、脅すために用意してきたガソリンを咄嗟に店内に撒いて点火し、火の勢いに驚いて何も取らずに逃走し、その場に残された同店員5人が死亡、4人に重軽傷を負わせ、裁判で死刑が確定した。 もちろん、素人の強盗犯がいる一方で、強盗累犯者の存在も見逃せない。 平成21年に強盗(強盗致死傷、強盗強姦を含む)事件で刑務所に入所した受刑者344人のうち、前回も強盗だったものが36人いる。 これら1割ほどの受刑者は、いわば、強盗常習者で、被害者への同情心を持ち合わせず、周到な計画のもと、冷静に犯行をやり遂げるのを心がける最も危険な犯罪者だ。 平成16年6月、午前9時前の通勤ラッシュ時の東京メトロ澁谷駅事務所前で、64歳の男が売上金運搬係りの駅員を待ち伏せていた。 たまたま、事務所へ向かっていた夜勤明けの駅員を拳銃で撃ち、持っていた袋を奪って逃走した。 現金袋と思って奪ったのは洗面用具入れだった。 男には銀行強盗を含め10回の受刑歴があり、1月に強盗傷人事件の服役を終えて出所後、5月には東京駅の売店事務所の売上金強奪に失敗して放火。 同じ月に、横浜中華街の料理店主を拳銃で射殺して現金を奪い、今回の事件は、その24日後だった。 犯行後、自首してきたが、死刑が確定した。 ところで、強盗の手口は、窃盗や詐欺ほど多種多様ではない。 屋内強盗(押入り、居直り強盗など)、屋外強盗(自動車強盗、おやじ狩りなど)、箱強盗(列車内強盗)に大別される。 屋内強盗の一つ、「押し入り」 強盗は、鍵の掛っていない出入口や雨戸を外したり、ガラスを破ったりして侵入する手口だが、これも、夜間、侵入するのを 「押し入り」、昼間、侵入するのを 「上がり込み」 と、夜と昼とで呼び名を区別するのは、警察が手口から犯人の特徴をつかむための便宜上の区分けだろう。 いずれも、狙った家を決め、周到に調べ上げて侵入する強盗で、入りやすそうな高級住宅が狙われる。 やはり、屋内強盗の手口の一つに 「欺計押し入り」 がある。 これは、昔、夜間、「電報、電報」 と怒鳴って表戸を叩き、家人に戸を開けさせる強盗がよくいたので、「たたき」 の名は、屋内強盗の別称にもなったほどだが、今では、宅配人を装って家の者に戸を開けさせて侵入する手口に代った。 今年1月の夕方、目黒区で宅配を装って訪れた男に呼ばれて、家人が玄関を開けた途端、鎌とナイフで襲われた夫婦殺傷事件がこの例。 なお、この犯人、東京の高級住宅地とだけ聞いて、一度も来たことのない目黒に来たこの福島県の65歳の男は、やはり、前科のない無謀な素人強盗犯だった。 戸口に、覗き穴、ドアチェーン、監視カメラ、電子ロックなど防犯グッズを備えながら、外から呼ばれ、無造作に扉をあけてしまうのは、治安のよい日本ならではのことだろう。 平成4年、アメリカで、ハロウィンパーティに仮装し、間違って別の民家を訪れた日本の高校留学生が射殺されたような犯罪大国とは違う証拠だ。 箱強盗(列車内強盗)は、戦後、乗客の少ない1等車や寝台車内で時どき起きたが、現在は、外国人の集団スリが、乗客に騒がれて刃物を振り回す、居直り事件に様変わりした。 先進諸外国で、今でも、夜間の地下鉄車内は危険という国もあるので、観光客は気を付けた方がいい。 いずれにしても、強盗犯人は、それなりの用意をし、必死の決意をして来るのが普通だから、襲われたならば、絶対に抵抗する素振りを見せず、隙を見てその場から逃げるのが一番安全だ。 昭和の初め、夜、忍び込んだ家で寝ている家人を静かに起こし、枕元で、悠々とその家の防犯の不備を説教し、頂く物は持って行ったという 「説教強盗」 のような犯人は期待すべくもない。
by dankkochiku
| 2011-03-21 21:40
| 非行・犯罪
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Comments(9)
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tomahawk_attack
at 2011-03-22 10:27
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昔は強盗と言うと、金融機関への強盗とか、質屋とか、パチンコ景品場への強盗というイメージが強くあったのですが、パチンコ景品場は兎も角も、金融機関への強盗は減ってるように思います。あくまでも「体感的に」・・・でありますが・・・
それが今は、今日の社会情勢を反映してか・・・コンビニ強盗がひと際目立っているように感じます。それこそ居直り強盗とか、説教強盗などは、滅多にニュースになりません。。 重い罪になる「強盗」にもかかわらず、安易に始めてしまう者が多いのだと思います。そこには、多分、検挙率の落ち込みが原因しているからと感じてるところです。。 現在「万引き」を窃盗という意識のないままに、軽い気持ちでしてしまう若者やお年寄りの存在が社会問題になってますが、私流に言えば、そうした軽微な犯罪だからこそ、逆に厳しく処すべきでして、それを等閑にしているが為に、今のような犯罪者に「勘違い」を起こさせている原因になっていると感じています。。
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tomahawk_attack
at 2011-03-22 10:28
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私的には軽微な犯罪にこそ、逮捕の際に厳しく「引っ叩く」べきであると考えておりまして、そうすることにより、より罪の重い犯罪に移行するのを防げる効果というか、躊躇させることが可能になると考えております。。
勿論、叩かずに済めば、それに越したことはないのですが、人の心は弱いものです。しかし身体の痛みとして覚えた記憶は、そう簡単には抜けません。。 一見、可哀そうにに見える「お仕置き」ではありますが、その人の人生を、犯罪初期で思い留めることが可能となれば、結果として、その方の人生を守ったと同じことになります。法律の改正が待たれます。。 犬の躾と同じで、小さなところから厳しく教え込めば、その後、むやみに人を噛むことはありません。親が子供を育てる意識で、愛情を以て、厳しく教え込むのが、私は本当の躾だと考えています。。。\_(-_- 彡
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dankkochiku at 2011-03-22 11:05
tomahawk_attack さん 昭和55年頃、サラ金への返済苦から自殺、心中、殺人、強盗が全国的に多発しました。 金融機関強盗も年間、200件前後被害に遭いましたが、銀行など素早く対策を立てられたところは減り、郵便局、サラ金などへの強盗事件は増えました。 その頃、この種の研究機関にいましたので、覚えていますが、当時の強盗の検挙率は77%くらいと、現在より10ポイント以上も高かったのですから、金融機関の防犯態勢が脆弱だったためとしか思いません。
子どもの頃から遵法精神を躾けることの大切さは当然ですが、一方で、前科のない強盗犯が、全体の過半数となると、やはり、経済の影響を受けやすい社会的弱者への福祉政策の充実も欠かせません。
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yamanteg at 2011-03-23 11:13
いわゆる「破れ窓理論」と福祉政策の充実、両方必要なんですね。
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dankkochiku at 2011-03-23 14:59
yamanteg さん 防犯と社会的弱者支援とが犯罪予防の基本ですが、その条件として、一般国民の教育水準の高さと生活の豊かさが前提。 東北関東大震災の被災地で、壊れた商店からの略奪、支援物資の奪い合いがないことが、諸外国では驚きの目で見られています。
Ciao dankkochikuさん
なんかさ―気のせいかもしれないけど、昔の泥棒ってまあ全員ではないだろうが、泥棒稼業みたいな、ロマンや泥棒なりのモラルみたいなのがあった気がして つまり貧乏人は狙わないとかさ やっぱ数万、数千円のために人まで殺しちゃうってのは、素人だからって気がします 東京の実家も二度泥棒に入られた 一回は、昼間 二回目は、夜 仏壇の引き出しにお金を入れてた父のへそくりが被害に遭い どうしてこんなわかりやすいところに置いてくわけ―と、泥棒を非難するよりも父が家人に笑われました でもそのあとで、みんなでお金をカンパして元の金額に戻してあげたけどね 笑
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dankkochiku at 2011-03-27 09:50
Ciao Junko さん 泥棒が貧乏人を狙わないのは、獲物が少ないからでは? 御先祖様が守って下さる、と現金、預金通帳、貴金属など仏壇の引き出しにしまっておく家は、御先祖様を大切にするまとまりのある家族の証拠です。
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marquetry at 2011-03-27 19:50
実は、私・・・大学生のころ一人暮らししていても、カギをかけていたことがないんです・・・アパートの住民はみんな顔なじみだったし、とられるような金目のものは全くなかったし、四六時中友達が出入りしていたし、でも、おバカというか、結局怖いもの知らずだったのね・・・その頃は。
現在は、しっかり鍵かけて寝てますけど。 震災で、強奪が少ないというのは、本当に日本ならではかもしれませんね。
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dankkochiku at 2011-03-27 21:52
marquetry さん えーっ、「 一人暮らししていても、カギをかけていたことがないんです・・・」とは、驚き。 開けっ放しの引き出しをみると、誰でも中を覗きたくなりませんか? みんな顔馴染みのアパート、寮で、勝手知った部屋へ空き巣狙いをした同じ棟の住人もいますし、狙いは金目のものとは限りません。 運がよかったとしか言えません。
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