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一般刑法犯の中で 詐欺は窃盗に次いで多い犯罪。 といっても、件数では、窃盗の僅か3%ほどだが、現金の被害額では、窃盗の1.8倍もあり、財産犯(強盗、窃盗、詐欺、恐喝、横領など)の中では最大で、平成21年は、446億円が騙し取られた。 このうち、平成15年頃から目立ち始めた 「振り込め詐欺」 は、6,637件(詐欺全体の18%)、その被害額は100億円以上と警察庁は発表している。
詐欺の犯人は、恐喝や強盗のように暴力的ではない。 社会情勢や世情に敏感に反応し、それに乗じて手口を替える。 騙しやすいと狙ったカモを見つけると、相手の気を引く話題を餌に、甘い言葉で信頼関係を作り、嘘が悟られないように魅惑し、思う壺へといかに誘導できるかが犯行の成否の鍵となる口先三寸の知能犯。 ペテン師、イカサマ師と言われるほどの詐欺師ともなると、検挙されても、犯行を一筋縄では認めない。 「騙すつもりはなかった」、「頼まれて人助けのつもりでやったこと」、「返済をもう少し待ってくれたら返せたのに、警察に届けたので全部だめになった」、「被害者は自分の方だ」 などと弁解する。 刑務所に入ってからも、法律を盾に滔々と犯行を合理化し、言い分を聞いていると煙に巻かれそうになる。 「では、判決に不服で控訴したのか」 と尋ねると、「いや、私選弁護士を頼む金がなかったし、国選弁護人ではいい加減だから止めた」 などと最後まで冤罪の被害者であるかのような口ぶりに忌々しい思いをする。 同じ知能犯でも横領事件では、被害者へ被害が全額戻るケースが88%もあるのに、詐欺では、被害額が全く戻らないのが過半数を占めている(平成11年版 犯罪白書)。 長年貯めてきた虎の子をむざむざと騙し取られた被害者の精神的ショックは大きい。 被害弁償を促すためか、詐欺や横領の犯人は、示談が成立すれば刑が執行猶予になる確率が高い。 また、詐欺の多くは、大体が被害者の面前で行われるので、被害者がおかしいと気付き、警察に届け出ると、最初から犯人の顔が知られているので、検挙率は60%以上と高いが、振り込め詐欺では、顔を見せず電話を通しての犯行だけに検挙率は12%と低い(平成18年版 犯罪白書)。 戦後、目立った詐欺事件を例に上げる。 昭和40年の吹原産業事件では、池田内閣の黒金内閣官房長官と親交のあった貸しビル会社の社長H.と金融業社長M.が自民党本部の預金を餌に、三菱銀行に偽造した黒金長官の念書を示し、30億円を騙し取ろうとした詐欺未遂事件。 平成6年のKKC(経済革命倶楽部)事件では、独特の 「未常識経済理論」 を吹聴し、高額配当を約束し、怪しげな小判を購入させ、約1万2千人から約350億円を集めて詐取した出資法違反と詐欺に問われた事件。 平成15年の有栖川事件では、既に断絶していた華族・有栖川宮の祭祀継承者、有栖川識仁と詐称した無職の男と妃殿下を詐称した無職の女との結婚披露パーティと称し、親王が愛した場所と称する東京・赤坂の会員制クラブで政治団体主催の 「有栖川宮記念奉祝晩餐会」 を開き、招待客約400人から祝儀約1,210万円や絵画を騙し取った事件などがある。 この三つの詐欺事件に共通するのは、いずれも犯人のしたたかさだ。 吹原産業事件では、「政財界の裏を渡り歩く謎の男」 とされていたH.には詐欺事件などの前歴があり、その共犯のM.もまた金融事件で前歴があった。 KKC事件の会長Y.は、逮捕後、11年して出所し、現在、Y経済研究所を立ち上げ、「真剣に将来の日本のことを危惧し、未来を予見した、あまりにも先進的な事業だったため、検察や警察、マスコミ・財界が理解できず、反発した挙句の果て、取潰すといった暴挙に出たのです。」 とH.P.で述べ、独自の経済理論による投資計画への参加を呼びかけ、意気軒高。 有栖川事件での自称 「殿下と妃殿下」 はそれぞれ懲役2年2月の刑を終えた後、Wikipedia によると、「殿下」 は政治団体復興を果たし、「平成20年度版『政治団体名簿』(政治資金制度研究会編、財団法人地方財務協会刊)に依ると、2007年5月1日付で京都府宇治市に政治団体 『有栖川宮記念』(代表者:有栖川識仁、会計責任者:有栖川晴美)が新規設立届出されている」 そうだ。 こうした希代の詐欺師ともなると、ご本人たちは、華麗な大舞台で芝居を演じる名優の気分かもしれない。
by dankkochiku
| 2011-03-15 23:35
| 非行・犯罪
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Comments(5)
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tomahawk_attack
at 2011-03-16 21:35
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「詐欺」・・・これは一種の頭脳犯罪といえ、他の犯罪とは明らかに違い、決してバカには成し得ない高等な犯罪テクニックであると考えます。。
被害者より明らかに知性で優位に立つ者が、相手の知性の低さに付け込み、ズル賢く立ち回るなどし、巧みに相手を信用させ、金品を騙し取るのを目的としています。。 これは弱肉強食社会には、わりと起こりがちな犯罪形態と考えられ、他の犯罪とは違い、詐欺の場合は、騙される側にも一定の責任があると考えます。。 最近では老人特有の知性の衰えに付け込んだ「振り込めサギ」も横行していますし、被害者による「欲張り」に付け込む形で、高金利をチラつかせた詐欺も多く見られます。その他の詐欺も同様で、詐欺は被害者側にも一定の範囲ながら、自己責任が否めない特徴を感じます。。
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tomahawk_attack
at 2011-03-16 21:36
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ちなみに、犯罪かどうかの議論は兎も角として、その昔、カール・マルクスによれば、資本主義体制下では、資本家が労働者の無知に付け込み、経済的な搾取を行っていると指摘し、資本主義社会による不平等性を糾弾したことがありました。。
でも実際のところ、彼が目指した社会主義体制下においても、形を変えた搾取が行われていたことは、歴史の事実として疑う余地はありません。。 おそらくは太古の昔、人類がまだ獣の端くれだった時代、・・・弱肉強食で生きなくてはならなかった頃の「本能」が、今もなおDNAの中に内在しているから・・・と考えられ、それ故、この先も未来永劫、決して無くなることはない犯罪と考えられます。\_(-_- 彡
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dankkochiku at 2011-03-17 17:50
tomahawk_attack さん 奪う、盗む、騙す、この三つは、どの社会でも犯罪ですし、そのために殺す、傷つける、脅すが付随します。これは、適者生存のための基本的方法でありながら、それを無条件に認めないのが、人間の知恵ですね。
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yamanteg at 2011-03-17 20:41
「詐欺」は騙される側にも一定の責任・・・・・は確かにありそうです。
世情に無知、すぐに人を信用してしまう、お人よし・・・・・。 敵は新兵器(手口)考案に日夜研究努力しています。 おかしいことをおかしいと感ずる判断力が必要ですね。 今回の巨大地震にともなう新手の手口も出てきているようです。 卑劣人間はいつの世でも健在なり。
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dankkochiku at 2011-03-17 21:23
yamanteg さん 「おかしい、おかしい、と思いながら騙された」、「まだ、あの人が犯人とは信じられない気持ち」などの被害者の声を聞くと、犯人は、冥利に尽きる、と自己満足するのではないだろうか。
今回の災害地義捐金募集を装った寄付金詐欺は、以前からよくある手口。 また、今回の罹災地では、窃盗、性犯罪の発生も報道されています。 これらは前歴者の仕業と思います。 しかし、略奪が発生していないのが、諸外国では驚きと報道されています。 罹災者たちは、いつものように、きちんとレジ前に並び、ちゃんとお金を払っている姿が放映されていました。 豊かな国の人びとのモラルでしょう
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