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今月19日、埼玉県川口市のマンションに住む会社員の父親が、就寝中、中学3年の長女に包丁で胸や頭を刺され失血死する事件が起きた。 以下、事件の概要を新聞記事から引用、要約する。 事件前日の昼、父親、長女、長男の3人は、自宅近くのファーストフード店で昼食をとり、その後、夕食はカレーにしようという話になり、スーパーに立ち寄り、夕食の食材やカブトムシの餌を買いに行った。 午後5時頃から、自宅で父親と長女で作ったチキンカレーを家族4人で食べた後、居間で父親と長女で撮りだめしていたビデオを見た後、午後11時過ぎに母親は寝室に戻って寝た。 少女が通っていた私立中学校によると、その日、長女は英会話の追試を受ける予定だったが学校には来なかった。 母親は、当日、学校が休みだと思っていたという。 19日午前3時頃、女性の叫び声と男性のうめき声が聞こえたため、母親が寝室に入り電気をつけると、ベッドの上に父親と長女がいて、手に血のついた長女は呆然とし、台所にあった文化包丁がベッド上にあった。 母親が110番通報した。 逮捕直後、少女は、「お父さんが家族を殺す夢を見た」 「寝ているお父さんの上半身を2回刺した。 その後のことは、気が転倒していて覚えていない」 などと話し、「大変なことをしてしまった」 と反省している様子だが、動機につながるような話はしていないという。 長女の母親は、父と長女の間に 「大きなけんかもなく、普通の父娘で、動機に思い当たることはない」 と話している。 近所の住民や長女の同級生たちも小学校、中学校での成績はよく、近所の人に も挨拶するなど礼儀正しかったと言う。 中学ではバスケットボール部に所属していたが、3月頃から部活を休むようになり、そのまま辞めた。 (以上、7月19日、20日付、朝日新聞) この記事を見て、すぐに頭に浮かんだのは 「ねぼけ犯罪」 である。 精神医学では、「ねぼけ」 とは、睡眠中など意識レベルの下がった状態で、ふと眼を覚まし、半覚醒状態下の行動の一種だ。 もし、その時、夢をみていたら、眠りから目覚めまでの過程が妨げられる。 夢か現か幻かの心境の中で、夢の世界での行動をしばらく続けることがある。 ラブラブの夢ならば、枕を抱いてムニャムニャと寝言くらいだろうが、敵と格闘している夢に取り込まれていると、包丁、斧をもって立ち向かおうとするかもしれない。 本人は夢の中で別人格だが、勝手知った台所や物置から凶器を間違えなく持ってきて、夢の相手と戦うのだから、そばにいる同居家族などにとっては、極めて危険。 それでいて、目が覚めると、ここに包丁や斧があるのは、一体、何故だろうかと不思議がる。 小学低学年くらいまでの子供には、睡眠中、何かに脅えて叫び声をあげたり、起き出して歩きまわったりした後、また寝込んでしまうことがある。 また、病院で睡眠中の患者が大声で怒鳴って点滴や治療用管を騒いで引き抜いてしまうことがある。 いずれも無意識状態での行動で、以前、夢遊病とか夜驚症といわれたものだ。 睡眠中、急に寝床から起き上がり、口もきかず、静かにふらふら歩きまわる夢遊病。 悪夢にうなされ、突然、起き上がり、興奮して、怒鳴り、暴力を振うなど錯乱状態になる 「せん妄(delirium)」 がある。 いずれも意識障害下の行動で、家族らに取り押さえられて目が覚めるまで、全くか、おぼろげにしか、その間の行動について記憶がないのが特徴。 睡眠中に起きる 「ねぼけ犯罪」 について東京医科歯科大の中田修教授の貴重な論文がある(「犯罪精神医学」金剛出版社 1972年)。 この著書には、諸外国で、ねぼけ状態での殺人、傷害致死、暴行、傷害、脅迫、侮辱罪に問われた37の事件が載せられている。 日本での例も、1918年から68年までの間に10件の精神鑑定例が紹介されている。 かみそりや小刀で刺す、斧で殴る、包丁を振り回す、中には妻を扼殺した症例がある。 また、中田教授自身が昭和44年に精神鑑定を担当し、心神喪失で無罪判決の出た理容師見習の男(20)の事件について報告している。 その事件というのは、午前4時半ころ、男(息子)が1階の風呂場わきにある薪割用の手斧を持ち出し、その手斧で2階寝室で就寝中の父親(59)の頭部、顔面を3回くらい切りつけ、母親(59)にも頭部を手斧で切りつけ、両親に傷害を負わせた殺人未遂事件である。 犯行前日までの息子の行動には、まったく変ったところはなく、飲酒もしていなかった。 その夜はいつものように床に就き、熟睡していたのを母親が認めている。 夜中に母親が異状に気づき、目を覚ますと、父親の枕もとに息子がぽかんとして立っていた。 声をかけたが、一言も話さず、便所に行こうとして歩き出したところ、頭を斧で殴られ、逃げたが、追ってきてまた殴られた。 父親は、気を失って倒れていたので、窓を開けて隣人に助けを求め叫んだが、その間、息子は母親のそばでぽかんとして立っていた。 物音を聞きつけてきた同居人の男が息子を取り押さえたが、抵抗しなかった。 その時、息子の体がガクンと動いて目が覚めたようだった。 犯行について息子がおぼろげに記憶していたのは、やくざに関係していて、なにか戦いをやっていた夢を見ていたこと、寝ていた父親のそばに立っていたこと、起き上がった母親がなにか言ったこと、何回か分からないが母親を殴ったことで、はっきり目が覚めて自覚できたのは、同居人の男に制止されていることだったと精神鑑定時に述べている。 男は、警察調書に書かれていた犯行の動機については、全く答えに当惑し、自分でも理解できないようだが、夢と関係のあったことは認めた。 家族、近隣の者は、息子の平素の人柄から犯行の動機は全く分からないと供述した。 夢に引き続いて、夢の内容に影響され、そのために事実誤認し、危機的状況におかれた人間が示すような自己防衛的な行動をしたと鑑定された。 男は、また、犯行直後、自分のしたことの重大な犯行に驚き、警察で詫び状を書いた。 もし、犯行が計画的、意図的であれば、そうしたことはしないのが普通であり、精神鑑定書は、犯行の動機、態様から、息子はねぼけ、または、夢遊状態にあったと結論した。 ねぼけ犯罪は、寝入りばな(入眠期)に起きるものではなく、睡眠から目覚める過程(出眠期)で起きる。 しかも、その時、自分が襲われるという悪夢に影響されて暴行、犯罪に及ぶこともあるる。 ところで、今回の15歳の中3少女の犯行はどうだろうか。 事件前日まで、被害者の父親とは仲睦まじくしており、母親も事件の動機らしいものが分からないと述べている。 学校長も交友たちも少女の異常について述べていない。 少女は、犯行直前、「お父さんが家族を殺す夢を見た」 と話し、記憶曖昧。 「寝ているお父さんの上半身を2回刺した」 は、どうも、誘導尋問のようで、唐突。 とすると、この事件は、「ねぼけ殺人」 の可能性が考えられないだろうか。 追記 11月19日、さいたま家裁での審判結果は、初等少年院送致に決まりました。 事件の動機は、「成績下降気味で親から叱責を受け、友人関係も不安定で自殺も考えたが、自殺後の家族の心情を思い、一家心中を思いったった」。 精神鑑定の結果も、責任能力に問題はない。 検察官送致にしなかった理由は、①15歳で若年。 ②対人コミュニケーションや情緒的発達の面で改善の余地が大きい。 ③謝罪の念を示している などと報じています。(11月20日付け 朝日新聞) ※このブログはトラックバック承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
なるほど、そういう見方もあるのですねえ…。 周囲も冷静に見てあげないといけませんねえ。 初めて知り驚きました。 そう言われれば、という経験をしたことがあります。最初はボケだろうと思っていたのですが、あまりにもハッきり言うので、夢と現実の区別がつかないのかと、やはり痴呆だと済ませたのですが、その後はなんでもないのです。 未だに自分でも不思議がっています。夢をまだ信じているようです。事故、事件、犯罪というのは、彼方此方に芽があるんですね・・・ いつも勉強になります。 あ、梅干、完了しました! 勉強になります...レム睡眠時...夢と現実の境目。 意識が低下していても、外部環境の認識がある程度可能な状態...ですか。ならば、潜在的に、父の何か嫌なところは無かったのだろうか?人が皆経験する寝ぼけが、この寝ぼけ殺人まで発展する何かが、あるように思うのですが...きっと何か決定的なきっかけがあるような気がします。 idea-kobo さん 親しい家族の中でこんな事件が起きるとは、恐ろしいことです。 satomifaso さん 「寝ぼけまなこ」 「寝ぼけたことをいう」 「ねぼけた色」 など見下げた言い方をしているうちは笑ってすませますが、寝ぼけ犯罪となると、深刻です。 marquetry さん このブログは、あくまでも、私の推測の域を出るものではありませんので、間違っているかもしれませんが、この少女が、これまでも寝ぼけがあったかどうかが診断の鍵になるでしょう。 いずれにしても精神鑑定の必要ありです。 偶然、見つけました。 粂さま 医学系の方のお目にとまり光栄です。 そちらのブログ拝見しました。 動機解明を急ぐあまり、警察、マスコミは目に見える環境要因を求めたがるようです。 また、「父親を2回刺した」 は、誘導され、作られた供述の感じがします。 今後ともよろしく。 誰にでも自己防衛本能は働くものだが、最近の子供たちは、妙に、こずるさが見え隠れする傾向が見える。その意味において、今回の事件も、どこか?今一つすっきりしないのである。 例えば、他から攻撃された際、逃げるか、反撃にでるか、じっとしているか、自己防衛反応は、人により、場合により、さまざまですし、攻撃も精神的なもの、身体的なものなど、これまたさまざまで、さらに、その個人の性格、能力、体力、しつけ、教育、生活環境などの影響が加わりますから、問題解決は大変です。 Ciao dankkochikuさん 警察って、本当に閉鎖的な部署だと思うんですよね。 とにかく、内輪で解決しようとする。 こういう事件は、やってしまったほうも一種の被害者になりうるわけだから、 自分のお父さんを殺してしまった。なんて彼女にとっては相当なショックとトラウマになる。 だから、しっかり外の専門の人たちの意見も聞いて、彼らの今までの経験からの”思い込み”で、 今までどおりの”通例”の解釈と解決をしないでもらいたいなと思います。 Benvenuta cocomeritaさん D’accordo! ほんと、ほんとです。 寝ぼけて、そばに寝ている家族に殴りかかるということは聞いたことがありましたが、それにしても、殺害とは! 一生、重い荷を背負って生きていかなくてはならないでしょう。 気の毒です。 興味深いお話をありがとうございました。 コメントするつもりでいたのですが、今日になって思い出しました。 というのも、今朝の配信では、川口の事件で逮捕された少女は、 当日眠っていなかったことが明らかになったそうです。 もしねぼけ殺人なら稀有な例で、 裁判所がどのように判断するのか興味津々だったのですが、 不謹慎ですが、ちょっと残念な気がします。 「父に勉強しろといわれ反感」 「勉強嫌いで複数の教諭に不満」 「追試に無断欠席」 「ミステリー小説、漫画押収」 ‥‥そして、殺害直前まで「ずっと眠っていなかった」。 まるで、現代版、芥川龍之介 「藪の中」 ですね。 勾留期限が迫り、情報操作か? そう、今日の報道内容も、最後の「情報操作」の可能性は捨てきれないのですよね。殺人までねぼけてするんですから、携帯の操作くらいはすると思うのが普通ですが、「お前、寝てたって言うけど電話してるじゃないか」くらいのことは言ってますよね<捜査員 HOOP さん ご存じかとは思いますが、この少年はいま、勾留中ですが、少年には、「やむを得ない場合でなければ」原則的に勾留を禁止し、少年鑑別所へ送致することになっています(少年法43条)。 この少女の勾留は、殺人容疑ですから、「やむを得ない」場合と考えてもいいでしょう。 ただ、被疑者の勾留期間は、原則10日間で、これも、「やむを得ない事由がある場合」でなければ、更に10日以上、期間延長ができません(刑事訴訟法208、209条)。 となると、かなりの理由付けが必要になることは、お分かりでしょう。 そこで、警察は、やむを得ない特別な事由がなんとしても必要なのです。
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