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昔から「監獄は規律の府」と言われてきました。 刑務所生活にはたくさんの規則がある、という意味です。 刑務所には、年齢、体力、能力、個性、出身、履歴、犯罪内容、すべての点で違う人たちが、受刑者というただそのことだけで、終日、しかも長期間にわたって拘束され、画一的な集団生活を強いられています。 その息苦しい生活から逃れ、少しでも自由を得ようとするのは、人間の本性から自然なことです。 しかし、一般社会から隔離した閉鎖的区域内とはいえ、その中で好き勝手な生活を認めれば、思い思いに自由を求め、秩序が失われ、やがて、受刑者たちを刑務所内に止めておくことも平穏な共同生活も保証できない事態になるのは容易に想像がつきます。 このような事態を防止するために、刑事施設には、昔から高い塀、鉄格子と錠、堅牢な建物、非常警報装置を備え、監視し、不審な行動を容赦なく調べ、被収容者に対しては行動を規制する多くの規則を設け、規則違反者には厳しい懲罰を科し、事故防止に努めてきました。 ところで、刑務所の保安・警備体制は、ここまでは、日本と米国との間に大きな違いはありませんが、両国では、この先の考え方に大きな違いがあります。 米国の重警備施設では、受刑者は警備区域を越えた途端、銃撃を受ける危険があります。 しかし、日本の刑務官たちには、受刑者が保安区域から逃走しても、逃亡者の後を追いかけ、逮捕する以上のことは認められていません。 それも逃走後48時間以内に限られています。 この両国の警備方法の違いが、受刑者の扱い方の違いとなって現れます。 米国の受刑者は警備区域内では比較的自由な行動が許され、日本の受刑者は、日常の行動がこと細かく規制されます。 日本の刑務官たちは、相手はれっきとした犯罪者であり、何を仕出かすが分からない信用できない人間として、その言動を疑い、実際に事故が起こる遥か以前の段階から、そのおそれのある行為を探し、除去しようとします。つまり、日本の刑務所では、暴動、逃走など保安事故が発生した後の対策よりも、このような事態にならないための予防措置に重点がおかれているのです。 しかし、事故のおそれを早期に発見し、早期に対策をとることが大切だと、ひと口に言いましても、その 「おそれ」 なるものは際限なく幅広いものです。 たとえわずかなおそれを感じさせる行動であっても、それを取り締まる規則を作り、違反者には懲罰を科して守らせようとします。 「被収容者処遇法」 には、基本的な所内生活規則(遵守事項)として、犯罪行為をしてはならない、他人へ粗野、乱暴な言動や迷惑行為をしてはならない、自傷行為をしてはならない、職員の職務執行を妨害してはならない、正当な理由なく作業や改善指導を拒否してはならないなど、どれをとっても当然と納得できる規則があげられています。 しかし、その一方で、「被収容者の身柄の確保を妨げるおそれのある行為」、「施設の安全を害するおそれのある行為」 のように、「おそれ」 のある行為の内容を具体的に決めかねるような行為を反則行為としているほか、施設長は、刑務所ごとの実状に応じて、施設の規律、秩序維持に必要と考える規則をつけ加えることもできる規定もあります。 こうして 「おそれのある行為」 を拾っていきますと、遵守事項の数はかなりふえます。 以前、この遵守事項の数を全国的に調べた方によりますと、少ない施設で30項目くらい、多いところでは60項目以上もあったそうです。 では、刑務所生活を知り尽くしている累入受刑者たちは、所内規則をどう見ているでしょうか。 意外なことに、多すぎるほどの規則によって、自分達の自由ががんじがらめに縛られているのに、これが公平に行われるならば、現状のままでよいと、反則者への厳罰を支持する意見の方が多く、規則にはっきりと抗議する受刑者はむしろ少いのです。 ある累犯の出所者は、つぎのような内容の文を書き残して行きました。 「私は規律違反をして懲罰を受けたことがありますが、刑務所では反則をしたら厳しい懲罰を加える以外にうまくまとまっていける方法は外にはないと思います。 収容者の心は、それほど善くはできていません。 規律違反に懲罰がなければ、刑務所を舐めるようになります。 社会生活から落伍した私達には反則すれば懲罰以外ないのかもしれない。」 これを読みますと、受刑者だから反発しても仕方ないという諦めもうかがえますが、むしろ規律が緩むと、強い者勝ちの世界になり、暴力ボスが弱い者を威圧し、悪くすると、その者に妥協する刑務官まで出てくることを受刑者たちは経験上、よく見通して、息苦しい規則にじっと耐えているのでしょう。
by dankkochiku
| 2006-02-26 11:23
| 刑務所を考える
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Comments(4)
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kimagurebito at 2006-02-26 20:21
規律が緩むと、強者の世界になり、というのは学校でも同じです。自由で民主的な教師のクラスが時にその為に時に荒れたクラスになったりします。
dankとkochikuなんですね。dankはドイツ語、kochikuは何ですか?
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dankkochiku at 2006-02-26 21:14
kimagurebito さま
コメント頂きありがとうございました。 規律と聞いただけで非民主的、人権無視と反撃される時世に、ご賛同いただけたのは意外でした(失礼)。 dankkochikuの由来、すみませんが、カテゴリ欄の「自己紹介」をクリックして下されば幸甚です。 そちらへも伺わせて頂きます。今後ともよろしく。
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tmreij at 2006-02-27 16:24
はじめまして。「刑務所を考える」という内容に、とても興味がひかれます。他では読めないような文章をたくさんお書きになっていて、とても勉強になります。これからじっくり読ませていただきます。ネコも大好きなので(イヌも好きですが)、写真も楽しませていただきます。
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dankkochiku at 2006-02-27 22:41
tmreijさま。 何かよくないことでも起きないと、ニュースにもならない世界にお越し頂きありがとうございました。 元記者でレポーターの方からのご意見、これからも是非お寄せ下さい。 お待ちしています。
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