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昭和10年代前半のこと、両国、平井間を走る総武線の南側にたくさんの煙突が見えた。電車が走ると煙突群も同じ方向へ動いていくのが子供心にとても不思議だった。それが誘導運動錯覚と呼ばれる一種の目の錯覚と分かったのは、後になって学んだ心理学からだった。
煙突の立ち並んでいた場所は、堅川と小名木川を包む一帯の明治時代からの工場群だった。今は、戦争末期の米軍の空爆で壊滅状態になって見えない。 戦後、ここに軽工業が復活し始めたものの、昭和40年代になって、良好な市街地環境作りに、工場建設を制限する法律ができ、工場は市外へ撤退した。広大な工場跡地は、都心への交通便利な場所とあって、都市計画に沿って商業系、住宅系の土地利用が進み、軒を並べていた木造平屋、長屋の工員社宅に代わって公営の大型マンションが次つぎと建った。なお、前回、ブログで紹介の月島地区の大型共同住宅の多くが民間分譲住宅であるのに対して、江東区のこの辺は都営賃貸住宅が多いようだ。 (下の写真 東大島駅前) やっと地上へ出た地下鉄東大島(ひがしおおじま)駅に着くと、目前に広がる幾棟もの大型マンション、それに整備された運動場、公園を備えた新興地に目を見張る。 この一帯は、旧中川の川辺にあって、昭和30年代までは、雨季のたびに川が溢れる洪水の町だった。江戸時代に埋立てた弱い地盤のうえ、地下水を工場用水として大量に利用したため、地盤沈下を起こし、いまも江東0メートル地帯。しかし、このイメージからはとても想像できない整備された町だ。 ただ、工場の撤退は、そこから出た産業廃棄物の問題を残した。江東区によると、昭和40年代後半から昭和50年代前半にかけて、日本化学工業(株)小松川工場(昭和47年操業停止)から排出された大量の六価クロム鉱さい(砕)による土壌汚染が江東区の大島地区などや江戸川区の小松川地区で確認され、大きな社会問題化になった。江東区は、既に昭和46年、日本化学工業グランド跡地に野積みされていたクロム鉱さいから六価クロムが検出され、東京都、江戸川区と共同し、鉱さい処理を行い、平成12年5月に処理を終了したと発表した( 「六価クロム鉱さい問題」 江東区環境清掃部 環境保全調査係 から引用)。 有害物質は無害化処理して埋め戻して土で覆い、小松川1丁目から大島9丁目に広がる2ヶ所の大島小松川公園として整備した。 ところが、昨年、12月、大島小松川公園下の区道で、発がん性が指摘される六価クロムを含む地下水が路上に漏れだしたと報道されたのだ。調査に関わった東京農工大の渡辺泉准教授(環境毒性学)らの簡易検査では、現場で採取した水に含まれる六価クロムの濃度は50ppm以上で、環境基準の一千倍に相当すると指摘した。そこで区と都と共同で除染し、雨水ます周辺に柵を設置したと報じられた(2015年12月26日朝日新聞)。 (下の写真:わんさか広場) 今回ここを訪れたとき、既に除染作業は終わっており、好天気のもと、大島小松川公園のわんさか広場では、家族連れや子どもたちののんびりすごす姿、スポーツ広場には野球試合をする若者たち、旧中川船着場には遊覧船から降りた乗客たちがおり、いずれも工場跡地の鉱さい流出問題を気にしてはいないかのようだった。 (下の写真 小名木川 大島8丁目番所橋から) 川沿いの「中川船番所資料館」を見学後、旧中川から別れ、両岸にマンションが立ち並ぶ小名木川沿いの閑散とした道を丸八道路へ向う。(上の写真、川の右側が大島、左側が砂町) (下の写真 塩なめ地蔵) 途中、10年ほど前に建った民間タワーマンションと道一つ距てた宝塔寺に寄る。ここは江戸時代に小名木川や行徳道を通る商人たちが休憩し、商売繁盛を願って塩を供えたのが由来とされる「塩なめ」地蔵があり、地蔵の前にはたくさんの塩袋が置いてある、地蔵に供えられた塩をもらってイボに塗ると治るといわれるので「いぼとり地蔵」ともよばれ、地蔵前の立て札には「願い事をする時、願い事が叶う時は、お塩をお供えください」とあった(上の写真)。この素朴な民間信仰の地蔵堂と通りを隔て、民営タワーマンションが聳えている不均衡さも面白い。また、その先の裏通りを行くと、当座の生活に必要な業種を揃えたショッピングモールのある数棟の大型公営マンション、大島4丁目団地があり、その道筋には、花、供え物した庚申塚や老朽化した簡易旅館もある対照的な町、これが大島町の最初の印象だった。(つづく)
by dankkochiku
| 2016-02-16 23:44
| 徘徊老人紀行
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Comments(4)
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jj111iii2016 at 2016-02-20 20:26
dankkochikuさん こんばんは〜(^o^)
六価クロム鉱滓については詳しい方がいて、たまたま今は資料が見当たらなくて、見つかり次第追記しますが、当時は10年、20年働いている人たちは、鼻中隔穿孔といって、鼻腔に穴が開くのは当たり前、そうならなきゃ一人前じゃないくらいに言われていたそうです。 大正時代からの工場で、六価クロム鉱滓なんか平気でそこら中に捨てていて、捨てたところには草が生えないということで、家を建てる時や埋め立ての時は、その工場に行って、残滓を貰ってくると後の始末が良くていいよっていう程度の意識で、害があるなんて誰も思わなかったみたいです。 反対運動が盛んになって、新聞に地図が出されるようになると、その辺の地主たちが土地の値段が下がるからといって、反対運動にヤクザを使うこともあったそうです。 現江東区長の地元らしく、皆んな騒ぐけど俺は何ともないよーとか言ってるらしいけど(直接聞いた人からの又聞きですが)、そりゃ相対的に個人差はありますからね〜まぁ、その程度の認識だということです。 >いずれも工場跡地の鉱さい流出問題を >気にしてはいないかのようだった。 ホントにね〜どこまで日本人って騙されれば気がすむんでしょう? 当時も今も未来も同じ何でしょうね〜(-。-;
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dankkochiku at 2016-02-20 23:20
jj111iii2016 さん 度々のコメント有難うございます。先の東日本大地震の放射能汚染物の野積み、いずれひどいことになるのではないでしょうか。それでも、原発再稼動を画策する地元住民、電力会社、政府関係者の神経を疑わざるを得ません。
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jj111iii2016 at 2016-02-21 03:49
dankkochikuさん
おそらく次の津波が来てさらって行ってくれるのを待ってるのでしょう{(-_-)} 悪化させたいのですよ日本を支配する連中が! 日本は島国だから逃げられないアウシュビッツ状態で、世界の各廃棄物の最終処理場にしたいのです。 ついでに一人残らず殺すつもりでしょう。 海外の在留日本人の預金封鎖も始まってますしね。 自分たちだけは助かると思ってるわけで政府専用機で逃げるわけですね〜。 世界の人口70億人を1/10にしたいから、北半球がダメになってもいいと思ってるのでしょう。 ヨーロッパでもこれから大量虐殺がイスラム系移民たちによって成されていくでしょう。中身はもちろん違いますけど。 ま、狂人ですわね〜(。-_-。)
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dankkochiku at 2016-02-23 21:56
jj111iii2016 さん 日本に限らず、資本主義政権というものは、当然大企業と結び、庶民の要求など意に介しません。原発再稼動然り、軍備増強、企業減税‥。財界が儲かればその収益が社会が潤い、国民生活に配分されると恩を着せがましく言いながら、国民の人権よりも国家支配力を強めることが目的なのです。
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