カテゴリ
その他のジャンル
外部リンク
記事ランキング
画像一覧
|
優先すべきは合憲か国防かが争点となった集団的自衛権行使を認める安保関連法案が与野党議員の怒声と混乱の中で9月19日、参院を通過し、成立した。民主主義のもとでは、多数決が原則とばかりに強行採決をした政権側の姿勢に対して、立憲主義の破壊と危ぶむ国民の疑問は消えない。法が施行されれば、違憲訴訟を起こし、これを法廷闘争へ持ち込もうという動きもある。
6月の衆院憲法審査会では、与野党が参考人として招いた3人の憲法学者が全員、違憲の判断を示し、参院委員会で野党が招いた2人の元内閣法制局長官も法案を違憲と批判したことを見ると、裁判を起こせば、勝訴の可能性は多分にあると思われるかもしれないが、法廷での勝利の見込みは薄い。 確かに、憲法には、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則、または処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する」(第81条)とあるのだが、同時に、日本の裁判制度では、法律の施行によって原告の権利が侵害されたり、損害が生じたりしない限り、法律の違法性だけを問うことはできないので、裁判に入る前に門前払いを食わせられる可能性が多い。つまり最高裁には違憲審査権がありながら違憲か合憲かについての判断下さないことが十分予想される。 そのうえ、最高裁判事の任免権者は内閣であり、最高裁以下の高裁、地裁,簡裁の裁判官は最高裁が指名した名簿の中から内閣が任命することになっている(裁判所法39,40条)ので、いきおい裁判官たちは、内閣の意に沿わない判決を出して、左遷させられたり、辞任に追い込まれたりするのをためらう。 例えば、1票の格差について昨年の衆院選挙の違憲性が争われた17件のうち、高裁・支部の判決11件をみると、違憲の一歩手前の「違憲状態」が7件。「合憲」が3件。また、2012年の衆院選挙については大半が「違憲」で、一部は「選挙無効」にまで踏み込んだものの、実際に選挙のやり直しまで命じた判例はなく、全般的に裁判所は、国会に生ぬるい姿勢を見せている。 この問題解決には、違憲の疑いある事例を審査する機関、憲法裁判所の設置が求められる。しかし、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ポーランド、ハンガリー、ロシアなど欧州諸国のほか、韓国、台湾などにある憲法裁判所が我が国にないのは何故だろうか。 思うに、封建制度時代の「泣く子と地頭には勝てない」、「長いものには巻かれよ」、とする権利意識、自由意識の希薄さに起因しているからではなかろうか。「法的安定性は関係ない。わが国を守るために必要な措置かどうかを気にしないといけない」と講演した首相補佐官。これを内心、良くぞ言ってくれたものと、軽い注意で済ませた安倍内閣。その首相は、砂川判決を根拠に法案を正当化し、自民党副総裁は、憲法学者や世論の反対に対して、「世論などせつな的なもの」と無視の姿勢を示す。そして、法案成立後、「次は経済だ」と来夏の参院選を念頭に国民へ撒き餌(ルアー釣り?)を用意している安倍首相。こんな国民をバカにした発言を許してよいだろうか。 立憲主義が政権側の恣意的な憲法解釈によって犯された今回の国会議決に対して、憲法裁判所の設置の必要性を、自由と正義を信条とされる法曹関係の方々、法学者は自らの使命として、是非、取り上げていただきたい。
by dankkochiku
| 2015-09-22 14:48
| 時評
|
Comments(6)
Commented
by
hisako-baaba at 2015-09-25 16:23
おっしゃる通りだと思います。
憲法違反だらけ。 小選挙区制で、与党議員が多数だから、何をしても通ると思ってやりたい放題ですね。 投票数では野党が得た票数の方がはるかに多いのに。野党は落選しても票の総数は多かったのに、与党は全国民に支持を得たと言って憚らない。 戦後レジームから脱却して、戦前回帰?とんでもないですね。
0
Commented
by
dankkochiku at 2015-09-25 22:48
hisako-baaba さま 与党政権は、北朝鮮、中国の脅威ばかりを強調し、武力対抗に力を入れ、友好平和関係を築く成果をあまり上げていません。その間に、中国首脳らを国賓として迎え入れた米国の硬軟両面の戦略は日本よりも数段も上ですね。
Commented
by
tomahawk_attack
at 2015-10-05 13:04
x
前職のころ、あるセミナーに参加した際、コンサルタントが言ってた「茹でガエルの法則」を、今、思い出しました。。
実験の信ぴょう性については、現在では懐疑的に見る意見も少なくありませんが(実は私もその一人)、、、 しかしながら、そうした部分は人間の心に少なからず内在してるのも一方の事実としてありますし、なるほど痛いとこを付いた巧妙なレトリックだと思います。。 確かに日本人は島国で育ち暮らして来たせいか、昔から「平和と安全」を空気と同じように考えてしまう癖がありますが、永世中立国で名高いスイス人の「覚悟」を引き合いにする迄もなく、「現実はそれほど甘くはないのだ」ということに気付かされます。。 「戦争は二度と起こしてはいけないもの」、、その大前提は揺るぎないものでありますが、ただ、目を背けてさえいれば?危機が過ぎ去る、という極端な甘い考えもまた?、、危険すぎる感じがします。。 昔から「備えあれば憂いなし」などとも申しますし、普段から何ごとにも油断を怠りなく、そして尚且つ、平和を維持する為の努力を常に惜しまないこと、そこに皆で汗をかくこと、そこじゃないでしょうか大切なのは、、、、 「茹でガエルの法則」、、、 子供たちの為にも我が身に置き換えて戒めたいものであります。。\_(-_- 彡
Commented
by
dankkochiku at 2015-10-06 15:03
Tomahawk-attack さん 『備えあれば憂いなし』には大賛成です。ただ、私が反対なのは、何故、そのために違憲の疑い濃厚な集団的自衛権行使を盛り込んだ安保関連行使法を制定したのかです。安倍政権の論理は、「最近の世界情勢の変化」。「一国のみで自国の安全は守れない」。「米国と交戦状態ある国がわが国の存立を脅かす状態なるときは、地球規模の制限なく米軍の後方支援に自衛隊を当らせる」。の3点です。この論法は、例えば、第二次大戦に踏み切った当時の日本政府と極めて類似していませんか。あの時、日本はソ連による北の脅威、南太平洋での米英の脅威に対抗し、当時、最強のドイツと防共協定(集団的自衛権行使)を結び、東亜新秩序、大東亜共栄圏の確立を掲げ、海外で武力行使に出て、第二次大戦へと発展しました。2国間なら収まる紛争が、軍事同盟を結ぶことで世界戦争へと発展したのではないですか。なぜ専守防衛主義や個別的自衛権行使ではいけないのでしょうか。一番喜んでいるのは、兵力、軍事費が節約できる米国だけでしょう。戦争を正当化するのは、古今を問わず、どの国も「他国からの侵略脅威、自国防衛、平和目的」です。
Commented
by
jj111iii2016 at 2015-12-30 04:22
アメリカは内乱状態だし、世界のリーダーはプーチンと習近平。日本に逃げてきたアメリカの戦争屋たちから頭を小突かれているアベちゃんには国民が金ヅルにしか見えないのでしょう。
「日本人は何もしないためには何でもする」の例え通り現在進行形のフクシマもないものになってしまっているが、実際には現実としてあるのだからまもなく植民地・ヌッポンは滅亡デス。
Commented
by
dankkochiku at 2015-12-30 22:44
jj111iii2016 さん コメントありがとうございます。近年、世界的な異常気象、政治・軍事的紛争の深刻化と、安閑としてはいられない内外の情勢は、来年も続くようです。このような状況下にあって、対米追従、右傾化する現政権の暴走振りを抑えることが良識ある国民の判断に求められています。
|
ファン申請 |
||