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今月26日、特定秘密保護法案が衆院本会議で可決した。 その翌日には、日本版NSC、国家安全保障会議設置法が成立し、来月4日には設置予定という。 初めからこの2法案をセットにしての立法化を目指していた政権は、ファシズムへの道を危ぶむ国民の声を聞き流しし、与党議員の数を頼りに参院でも強行採決するつもりだろう。
前回に引き続き、戦前の社会情勢、政治動向を現在のそれと重ね合わせて見よう。 ともに不況な世相を背景に始まった。 1929年(昭和4)にアメリカで起きた金融恐慌の影響が日本に波及し、未曾有の不況、昭和恐慌をもたらした。 時代が下り平成2年、バブル経済崩壊、リーマンブラザーズ破綻に端を発し、失われた10年または20年、就職氷河期、世界的金融危機などと言われた平成不況が続いた。 新旧両時代とも、物価・株価の下落、輸出激減、海外からの安い生活物資の輸入増加、大企業を含め赤字企業の続出、大量の人員整理、賃金不払い、中小企業の倒産、往時の映画 「大学は出たけれど」 さながらの 「高等遊民」、「高学歴ワーキングプア」 があふれ、250~300万人の失業者がさまようデフレ不況時代を迎えた。 政府は、当然ながら不況からの脱出を最優先課題にした。 昭和恐慌時には、その責任を政府に問う軍部と国粋主義者たちが急に勢力を広げ、独占資本主義体制のもと 「軍需産業」 振興策を進め、軍備拡大を図った。 1930年(昭和5年)頃から終戦までの天皇制軍国主義、全体主義が猛威を振るった時代だ。 政府は、国民のあらゆる自由と権利を抑え、八紘一宇、挙国一致、堅忍持久のスローガンを掲げる国民精神総動員運動を推し進め、軍事予算は国家予算の5~8割に達し、戦争遂行に国民を戦場、軍需工場へと駆り立てた。 戦争放棄を宣言した戦後、流石にこれほどの政治的暴走はないが、再軍備への動きが消えたわけではない。 小泉内閣当時の2003年には、外国からの武力攻撃事態の対処する有事法制関連3法を制定したのを手始めに、2005年には、自衛軍の保持を明記した新憲法の自民党案を発表した。 安倍内閣に代わると、愛国心を盛り込んだ 「改正教育基本法」 を制定した(2006年)。 その一方で、不況脱出を目的に大企業寄りの経済成長政策として 「防衛産業」 を重視し、先月には 「国際協調主義に基づく積極的平和主義」 を標榜し、武器輸出三原則の見直し緩和案を打ち出し、さらに、自国では原発事故処理もままならないのに、発展途上国へ原発輸出を働きかけている。 その背景には、防衛装備・技術協力を進め、防衛企業を支援して経済成長を図る狙いも見える。 現在、国会上程中の特定秘密保護法案は、「防衛」 「外交」 「安全脅威活動の防止」 「テロ活動防止」 の4分野について特に秘匿を要するものを 「特定秘密」 とし、その指定は各分野の行政機関の長が決定し、特定秘密漏洩には、10年以下の懲役刑が科すとある。 国の秘密を守ることは、国と国民の安全確保に欠かせないと 国民が賛同しそうな趣旨説明をしているが、その裏側に潜む危険性を隠してはいないだろうか。 しかし、この法案は、1937年(昭和12)に軍事秘密の保護を目的に、それらの探知、収集、漏洩をした軍人、民間人に最高死刑を適用する 「軍機保護法 」 、1941年(昭和16)に、「国防上外国に対し秘匿することを要する外交、財政、経済、その他に関する重要なる国務に係る機密事項」(第1条)の漏洩防止目的に制定した 「国防保安法」 の制定目的となんと似ていることだろうか。 この戦時中の法律が、戦争の真相を隠し、国民の良識を封じ込め、国を破滅に追いやったのだ。 自民党の石破茂幹事長は、先日、ある講演会で、特定秘密保護法案を危惧する人たちに向かって 「一般の民間人が処罰されることは、通常あり得ない。極めて例外的」 などと話した。 しかし、「法律は時に眠ることはあっても、決して死ぬことはない」 の諺のように、時機を見て目を覚まし、取り締まりを厳しくすることがある。 そのときになって、いくら批判、抗議をしても、法律があるの一点張りで押し込められるのは疑う余地はない。 例えば、悪法の最たる 「治安維持法」 は、1925年(大正14)に制定された後、しばらく鳴りをひそめていたが、1928年(昭和3)、突如、全国1,600人の社会主義者の大検挙に踏み切った(3.15事件)。 しかも、制定当時は、7条に過ぎなかった条文が、改正を重ね、最終的には65条にふえ、適用範囲も政府を批判する一般人にも広げ、罰則も強化した。 こうした時代の流れを見てくると、「国家安全保障会議」 の設置は、戦前の天皇臨席の 「御前会議」 あるいは 「大本営政府連絡会議」 を連想させるし、NHK経営委員12人中、10人が安倍政権下での政治的人事とあっては、戦時中の 「情報局」 の役割を負わせることになるかもしれない。 また、法案の推進役には、2人の元防衛庁長官が加わっており、これも総理大臣の地位を軍人や右翼国粋主義者で固めた戦前を思い出す。 前にも述べたが、秘密保護を確実に施行するには、常時、個人情報の監視が欠かせない。戦前は、秘密警察、特別高等警察(特高警察)を全国に配置したが、現在の高度情報化社会には、個人の通信傍受も欠かせないだろう。 さらに、法律違反者の裁判では、憲法が規定する 「裁判公開の原則」 は認められず、非公開の暗黒裁判になろう。 情報を制限し、政府批判を抑えれば、政権側は、何でもやりたい放題だ。 特定秘密保護法案によると、これは、公務員法、自衛隊法など、それぞれの分野の関係者だけではなく、広く国民一般に及び、国民の知る権利、報道の自由、通信の秘密を侵すおそれが多分にある。 近年制定されたばかりの 「行政文書の開示を請求する権利」 を定めた 「情報公開法」 や、個人情報の流出防止を目的とする 「個人情報保護法」 も骨抜きになる。 治にいて乱を忘れずの心構えは大事だが、それが、国民の権利まで縛るものであってはならない。 「壁に耳あり障子に目あり」 「見ざる、聞かざる、言わざる」 が人生の知恵とされた時代に戻してはならない。 一時の景気回復の動きに目を奪われ、国の将来を見失わないでほしい。 ★追記: 12月6日深夜、自民、公明両与党のみが法案に賛成し可決した。 戦後日本のファシズムの始まりの日になる懸念がする。 時あたかも明後日、12月8日は、無謀にも宣戦布告した太平洋戦争開始から71年になる。 現内閣の次の一手は、軍備増強を狙い憲法改正に打って出るだろう。 これも、かつての富国強兵策への回帰か。
by dankkochiku
| 2013-11-30 11:33
| 時評
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Comments(2)
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tomahawk_attack
at 2013-12-03 18:35
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民主党も、そして当時連立を組んでいた社民党も今回の自民党の強行採決には激しく怒っておられるようですが、民主党政権化で国民の生活に直結する重要法案がなんと10本前後も強行採決されてます。。
特に酷かったのが郵政法案の修正審議の時、自民党時代に約800時間もかけて慎重審議し成立させたものを、政権交代した途端、たったの10時間前後でいきなり審議ストップし強行採決でした。私の記憶、間違ってますかねぇ。。(ーー;) その時のマスコミ対応もまた実に酷いものでした。ほとんどが皆、その事に口チャックで半ば黙認状態、だれ一人として、そこを厳しく指摘するものなどいませんでした。民主党政権化で行われたその他の強行採決についても殆ど然りです。ゆっくりと思い起こしてみてください。自民党のそれとは凡そレベルが違う謙虚さのない対応でした。。(+_+。) 誤解のないように申し添えておきますが、私は自民党の「強行採決」だけを特別賛美する考えは毛頭ないところです。。 でも物事は公平な姿勢で見ないと?どこかで判断を間違うような気がしている、それだけなんです。。(v_v)
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dankkochiku at 2013-12-04 08:24
tomahawk_attack さん 今問題の特定秘密保護法案は、郵政法案どころの問題ではなく、国家の利益を最優先し、憲法で保障する個人の自由と権利を抑えるという民主主義の根幹にかかわる問題であり、かつての国家主義、全体主義、専制体制、つまりファシズムの再来を恐れるからです。 安倍内閣の次の一手は、現政権の政策にとって邪魔者の現行憲法の改正でしょう。 市民が絶叫するデモをテロ行為と本質において同じと、ホンネが漏れました。
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