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6月13日付の香港英字紙、サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、米中央情報局(CIE)の元職員、E.スノーデン氏(30)との単独インタビューで、米国の情報機関が市民の通話記録などをひそかに収集した資料をもとに、2009年以降、中国と香港のコンピューターシステムをハッキングの対象としているとする記事を載せた。 また、6月30日付け英紙ガーディアンは、同氏が米国家安全保障局(NSA)の内部文書を示し、米情報機関がEU諸国のほか、同盟国の日本や韓国、メキシコ、トルコ、インドも盗聴・情報監視の対象とし、日本を含む38の大使館・代表部の通信を盗聴・傍受していたとの暴露記事を掲載した。 この報道は、米政府のみならず世界各国に大きな衝撃を与え、特に、米国との友好国からの反発は、オバマ大統領や米国政府に外交的な打撃を与えた。
米捜査当局は、目下、所在不明のスノーデン元CIA職員を国家機密情報漏洩などの罪で米国内法の手続きに従って裁くとして、身柄の引き渡しを求めているが、香港当局はこれを拒否したほか、他の国も米国政府の要求に慎重な態度を見せている。 一方、スノーデン氏は、香港を出国後、モスクワ空港に着いた後、姿を隠し、彼の亡命を支援する内部告発サイト 「ウィキリークス」 スタッフが同行し、亡命先を探しているといわれているが、米国政府がスノーデン氏のパスポートを無効にする措置を取ったため、亡命先探しに手間取っているようだ。 その最中、南米ベネズエラの大統領は、7月5日、独立記念日を祝うテレビ演説で 「米国が世界中でスパイ行為をしているという本当のことを言った」 とスノーデン氏を擁護し、その上で 「わが国に来て、北米の帝国の迫害を逃れて暮らすことができる」 と述べ、また、ニカラグアのオルテガ大統領も同日、彼を 「状況が許せば、喜んで亡命を受け入れる」 と語ったが、その具合的な措置は明らかでない。 スノーデン氏とは一体、何者か。 マスコミ報道によると、彼は、米国メリーランド州に育ち、高校中退後、20004年に陸軍特殊部隊に入隊し、約5カ月後に除隊。 入隊の動機は 「人々をイラクの圧政から解放するため」 だったという。 06年中旬にCIAに入り、最高機密を取り扱う資格を得て、CIA職員の身分を隠ぺいしながらジュネーブで米国務省員として活動。 しかし、ジュネーブ時代の活動を通じて彼は 「米政府の活動に失望した。 自分がやっていることは、利益よりもはるかに多くの害を生んでいた」 との思いを深めたとある(6月29日付産経紙記事を要約)。 7月2日付、ウォールストリートジャーナル紙は、ウィキリークスのサイトにスノーデン氏の声明を掲載し、その中で、「私は何の有罪判決も受けていないにもかかわらず、(ホワイトハウスは)一方的に私のパスポートを無効にし、無国籍者にしている」、「オバマ政権は現在、裁判所命令もないまま私の基本的権利の行使を阻止しようとしているが、それは誰もが保持している権利で、亡命を求める権利だ」 と主張し、オバマ政権が 「迫害からの亡命」 を要求する権利を保障する国連の 「世界人権宣言」 に違反していると訴え、米政府と争う姿勢を示す。 米国政府と友好関係にある諸国の反応はどうだろうか。 6月29日付のドイツのシュピーゲル誌は、NSAがEUも監視対象にしていたと報じ、スノーデン氏が持っていた文書から、NASAはワシントンのEU代表部の施設に盗聴器を仕掛け、コンピューターのネットワークにも侵入し、内部の会話やメールなどにアクセスできた。 ニューヨークの国連本部のEU代表部も同様の手段がとられていた、と報じた。 サミット後にベルリンで行われた独米首脳会談では、オバマ大統領は、メルケル首相の抗議に対して防戦一方であったと言われ、CNNなどは 「ドイツは戦前、ヒトラーによる監視社会を、戦後も東側は東独政府のシュタージ(秘密警察)による監視社会を経験しているだけに、プライバシーの侵害行為に対しては敏感だ」 と報じた。 また、7月5日付のフランスのル・モンド紙は、フランスは治安やテロに関わる情報について、首相が許可した場合に限り、法律で傍受を認めているとし、オランド仏大統領は、米国がEUを対象に盗聴していたとの疑惑に対し、「即時中止を求める」 と強く批判した。 一方、菅義偉官房長官は、7月1日の記者会見で、NSAが米国内の日本大使館などを盗聴していたとの英紙報道について、「わが国としても関心を有しており、外交ルートを通じてしかるべき確認を求めたい」 と米政府に事実関係を照会する考えを示したにとどめたが、その後の経緯は不明だ。 こうした米国との友好国からの反応に対して、オバマ大統領は、7月1日、「どの国の諜報機関も、機密情報を集めようと活動している。 ニューヨーク・タイムズ紙やNBCニュースなどからは得られないような機密情報を集めようと活動している」 と後味の悪い釈明をした。 米国は、個人主義、自由主義、民主主義のお手本のような国と思い込んできた人にとって、依然として世界の警察官を自任する覇権主義の姿を垣間見る思いがしたかもしれないだろうし、また、この事件は、スノーデン氏の個人的犯罪と見るべきか、それとも国民を支配する法律の埒外にある国家犯罪と見るべきかについても改めて考えさせる問題を提起しているように思える。
by dankkochiku
| 2013-07-07 22:40
| 時評
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Comments(3)
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tomahawk_attack
at 2013-07-09 10:51
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オバマ大統領は正直に言って、個人的にはあまり好きではないところですが、・・・・
それはそれとして、国家安全保障の観点から、>「どの国の諜報機関も機密情報を集めようと活動している(こと)」・・・・その点は私も「事実」として理解したいと思います。。 現に報道の後、イギリス、フランスと、続々と同様の事実が明るみに出ましたものね。おそらくはロシアにしても、中国にしても、韓国にしても、同様であります。。 それこそ日本を含めて、すべての先進諸国が、程度の差を抜きにして、なにもしてないとこは無いのじゃないでしょうか・・・・それが今の実態だと思います。。 兵法学者に「孫子」という方がおられましたが、彼は「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」という言葉を残されました。。 その意味するところは、「情報収集」と、その「分析能力」が、戦(いくさ)を含む、あらゆる事柄の勝敗を左右するというものであります。。 冷戦が終わり、曲がりなりにも世界平和が維持されている情勢にありますが、その裏には、国家間の、企業間の、激しい「丁々発止」があるということを、この事件は図らずも明るみにしました。。
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tomahawk_attack
at 2013-07-09 10:51
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日本人は地形的成り立ちから、或いは歴史的背景から、身の回りの「安心安全は天から降って来るもの」と思いがちですが、決してさにあらず、日本人が当たり前と考えていた「安心安全」の裏には、実は多大なコストが掛かっているのだ、ということを、この事件は知らしめました。。
組織的に個人情報が勝手に漏えいされたり、利用されるのは、決して気色の良いものではありませんし、好ましいことではありませんが、私たちを取り巻く複雑な現代情勢を考えると、なにも失わずして、快適に暮らせる道は、残念ながら、天国でも行かねば、有り得ないように思われるところであります。。 必要悪という言い方は好まぬところですが、残念ながらそうした現実もあるということは認めざるを得ません。。 まもなく国民総背番号制が導入されるようでありますが、導入されることにより、生活上におけるプラスマイナスは当然発生しますが、複雑な情勢を考え合わられば、それらを相殺して尚、余りあるメリットがあると思いたいところです。。 Dankkochikuさんの記事を拝見し、スノーデン氏の亡命事件を鑑みる中で、ふとその様に思った次第であります。。(v_v)
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dankkochiku at 2013-07-09 16:47
tomahawk_attack さん 世界各国、情報収集にそれぞれの諜報網を駆使しているでしょうが、友好国の大使館内に盗聴器を取り付けるとは、外交特権無視どころが住居侵入罪です。
国民総背番号制も、政府の権力集中が目的になって、市民の個人的経歴、思想、ナビと結んで毎日の足取り調査などまでに利用されたら大変だ。
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