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昨年、わが国の自殺者数が15年ぶりに3万人を下回ったことがトップニュ―スになった。 これは、日本の自殺者数が世界でも目立って高率だからだ。
精神分析派の人たちは、人間の本能である攻撃性が自分に向かうと自殺衝動を呼び起こし、外に向かうと殺人衝動を呼び起こすという。 もし、そうであるならば、世界で、自殺の多い国あるいは少ない国、殺人の多い国あるいは少ない国があるのは、なにが関係しているのだろうか。 まず、世界106カ国それぞれの年間自殺者率(人口10万人比)をWHOの統計からみると、最も高いのが韓国の33.5人で、次いでリトアニア、カザフスタン、ベラルーシの次ぎの第5位が日本の23,8人(2011年調査時の自殺者は30,651人)、第6位にロシア(23.5人)と続き、韓国、日本以外では旧社会主義国が高い。 反対に、自殺率が1人未満と低い国は、ハイチ(2003年、0.0人)が第1位で、次がヨルダン、ホンジュラス、エジプト、シリアの順で、南米諸国や自殺が禁じられているイスラム諸国に多い。 次に、世界各国の年間殺人率(人口10万人比件数)を国連の資料からみると、125カ国のうち、殺人率が10件以上と高い37か国中、3カ国(南アフリカ、ロシア、カザフスタン)以外は、すべて中南米の国に集中し、その中でも、ホンジュラスは87件と異常に高く、次いでエルサルバドル(71件)、セントクリストファーネイビス(68件)、ベネズエラ(67件)が続く。 反対に殺人率が1件未満と低い国19カ国は、すべて欧州とアジア諸国で占められている。 最も低いのがモナコの0.00件で、2008年の調査時点では1件も殺人事件がなかったようだ。 次に少ないのがアイスランド(0.31件)、日本(2011年。0.35件。 殺人認知件数は1051件)、シンガポール(0.51件)の順。 ロシアのように、自殺率も殺人率(12件)も比較的高い例外はあるが、大体の傾向からいうと、自殺率の低い中南米諸国は殺人率が高く、反対に自殺率の高い欧州、アジア諸国は殺人率が低い。 古くから、うつ病と自殺との関係は重視され、うつ病が自殺の主役といわれ、WHOは、毎年100万人近くの自殺者のうち、うつ病患者の占める割合は半数を超えると推定している。 しかし、世界の国ごとで自殺や殺人の発生頻度が地域によって大きく違うとなると、単に個々人の精神状態を越え、外向的なラテン系とか内向的なゲルマン系など国民性によるものか、さまざまな社会的要因によるものか、あるいは、これらに影響を与える自然風土によるものか、これらの問題は今も解明されていない。 しかし、このことが、かえって人々の研究心をそそる。 ここで、日本の自殺統計について、話を変えたい。 自殺についての統計には、警察庁の 「自殺統計」 ともう一つ厚生労働省の 「人口動態統計」 がある。 「人口動態統計」 は、 「自殺統計」 よりもほぼ1年遅れで公表され、最新版は平成23年の統計だが、「自殺統計」 の数値が速報値であるのに対して、「人口動態統計」 には確定値がのっている。 さらに、両者の統計処理方法は、それぞれ違っている。 これについて、内閣の共生社会政策統括官は次のように解説している。 1)調査対象の差異 「自殺統計」 は、総人口(日本における外国人も含む)を対象としているのに対し、「人口動態統計」 は日本における日本人を対象としています。 2)調査時点の差異 「自殺統計」 は、発見地を基に自殺死体発見時点(正確には認知)で計上しているのに対し、「人口動態統計」 は住所地を基に死亡時点で計上しています。 3)事務手続き上(訂正報告)の差異 「自殺統計」 は、捜査等により、自殺であると判明した時点で、自殺統計原票を作成し、計上しているのに対し、「人口動態統計」 は自殺、他殺あるいは事故死のいずれか不明のときは自殺以外で処理しており、死亡診断書等について作成者から自殺の旨訂正報告がない場合は、自殺に計上していません。 この統計集計法の差異は、当然、統計数値の差異に現れる。 最初にあげた 「自殺者15年ぶりに3万人下回る」 のニュース記事は、「自殺統計」 をもとにした数値だが、一方の 「人口動態統計」 では、平成23年の自殺者数は、28,896人、22年は、29,554人、21年は、30,707人と、既に22年には3万人を下回っている。 しかし、公表の遅いこの統計は、早さを競うマスコミ界からは敬遠されたようだ。 また、上のマスコミ記事には、自殺の動機について、「経済・生活問題」 が前年比で20%以上減少しており、内閣府は 「経済環境が底打ちした影響もあるのではないか」(自殺対策推進室)と話している。 これは、警察庁の 「自殺統計」 の家庭問題、健康問題など7項目に分類した自殺の原因・動機別統計(重複統計値)から引用したものだ。 しかし、その一方で、内閣府は、自殺の原因・動機が特定できない事例が全体の25.6%と発表しているし、また、文部科学省は、平成19~22年度の児童生徒の自殺数は合計606人としながら、そのうち自殺原因不明者が353人と半数以上が不明としている。 広く国民に自殺の原因・動機の動向を早く知らせようとするマスコミの姿勢は評価できるものの、他方で、国民の意識、知識に予断を与える情報操作の可能性も否定できない。
by dankkochiku
| 2013-02-26 22:28
| 時評
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Comments(3)
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tomahawk_attack
at 2013-03-03 22:21
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海外における一部のカルトの中には、教祖の指示により信者が集団自殺することがあります。信仰により死後の世界を信じて疑わない方々によるものと思われますが、死後の世界については、「もとより存在せず、実態は限りなく『無』である」と唱える方もいます。。
どちらも見て来た事実を述べるものではなく、「推測」によるものでありますが、私的には神さまや仏さまの存在はそれなりに信じているものであります。というよりも、むしろそうあって欲しい、そうあるべきだという一種の、人生観、哲学を込めて、ということなのですが・・・ そんな私が日頃から親しくさせて頂いている某サイトがありまして、そこの管理人さまはニュートンの言葉を引用され、「宗教とは信じておくに限る、死んでも無なら影響はなく、何かあれば役に立つ」と申されてます。極めて冷静で合理的な解答だと思います。。
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tomahawk_attack
at 2013-03-03 22:22
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その一方で日本における自殺者とその原因が何であるかを考えた時は、そうした宗教観によるものとは違い、大方が「絶望」に起因するものと推察されるところであります。。
ただ、人には生まれ持った自然権があり、そこには「生きる権利」の他に「死ぬ権利」もあります。「安楽死」の議論になると、尊厳死と併せ、この「死ぬ権利」を如何に扱うか、専門家に依って何時も意見の分かれるところであります。。 ただ「死ぬ権利」を安易に行使することは社会「道徳」に反するというのも事実であり、「絶望」から死を選ぼうとしているる者たちに、何が救いになるか?行政からの支援のみならず、宗教家による「マインドケア」の重要性が益々増して来ているように感じるところであります。。。\_(-_- 彡
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dankkochiku at 2013-03-04 17:28
tomahawk_attack さん 自分の死んだ先、どうなるのかは分かりません。 宗教を信じる人が、死後について何か主張するとすれば、それは解釈というか想像に過ぎません。 分かることは、生者必滅、すべては死ねばゴミになりますが、例外として人間だけは、いろいろの形で、死者を大切にします。
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