カテゴリ
その他のジャンル
外部リンク
記事ランキング
画像一覧
|
またも冤罪事件が発覚し、暗澹とした気持になる。 今月24日に再審裁判で無罪になった 「布川事件」 の桜井昌司さん(64)と杉山卓男さん(64)の冤罪事件だ。 昨年3月、宇都宮地裁での再審裁判で無罪が確定した 「足利事件」 の菅家さんに続く判決。 二人は、強盗殺人事件犯人として、逮捕から、無期懲役刑の判決を経て、仮釈放まで29年間の服役後に再審請求し続けた結果、無罪判決を勝ち得た。
ところで、日本で無罪判決が確定する確率は、極めて低い。 平成21年に約50万3千人の被告人のうち無罪が確定したのは75人、無罪率0.015%という驚異的な低さだ(平成22年版 犯罪白書)。 警察から送検されてきた被疑者を起訴するかしないかを決める権限があるのは検察官だけだから、検察官の裁量の余地は大きく、さじ加減ひとつで、一旦、起訴されると99.99%が有罪になる。 まさに検察官には生殺与奪の権が与えられている。 かつては、「自白は証拠の王」 といわれ、自白を得るために拷問、強制誘導が日常化した旧刑事訴訟法時代は戦後に終わりをつげた。 代って、新憲法は、自己に不利益な供述の強要、拷問、脅迫、不当に長期にわたる拘禁下での自白を禁止し(38条)、刑事訴訟法も 「事実の認定は証拠による」(317条)と明記してある。 また、送検された事件を受理した検察官が、いわゆる 「起訴便宜主義」 によって、起訴する割合は、受理人員の3分の1程度、刑法犯罪に限ると18%に過ぎないから、そのほとんどが有罪になっても、検察官の目が行き届いていると信用してきた一般市民にとって、冤罪事件は、検察不信を印象付ける。 他方、裁判に提出された証拠に対して裁判官には、その証明力について自由な評価が任されているから、再審裁判で無罪が確定するまでは、最高裁の判事たちも、検察側が有罪の根拠として提出した証拠の真偽が見抜けなったのだろう。 その原因の一つは、警察捜査の早い時期に 「否認したら死刑になる」 と脅され、裁判では真実が認められるだろうとの期待から、嘘の自白をした被疑者が、法廷に立たされた後になって、「極刑も予想される重罪事犯で極めて早い時期に自白したことは、その自白が任意になされたことを推認させる」(昭和53年 最高裁)と最後まで虚偽の自白が有罪の決め手とされたのだ。 つまり今回の再審公判が開かれるまで、二人の被告人にとって有利な証拠を検察側が隠してきたことが、二人と事件とを直接結びつける物証がないまま有罪が確定してしまったのだ。 再審裁判で初めて検察側が開示した自白場面を記録した録音テープには、何度も重ね撮りした痕跡があり、目撃証人の証言も本人の証言とは違っていたという。 この検察の手法は、昨年、大阪地検特捜部が障害者郵便制度悪用事件を巡って逮捕、起訴した厚生労働省局長の有罪立証のために、押収したフロッピーディスクの記録内容を捜査主任検事が、こともあろうに、改ざんし、証拠隠滅操作したことを上司の特捜部長と副部長がこれを黙認したとされる犯人隠匿容疑事件を思い出す。 刑事司法全体に対する国民の信頼を確保するための 「検察官同一体の原則」 は、検察官の互助会になり下がってしまったのだろうか。 人間である以上、判断の誤りは避けられないが、巧妙に作られる冤罪に欺かれてはならない。 判断の根拠となる証拠はすべて裁判に提出しなくては正義に反する。 戦後、死刑か無期懲役が確定した事件の再審は今回が7件目で、過去6件は無罪が確定している。 再審無罪が確定した死刑囚が、もし、その前に、刑が執行されていたらと思うと慄然とする。 物的証拠のない事件については、死刑判決はなんとしても禁止すべきだろう。 布川事件の再審判決を前に、有罪認定に関与した元裁判官の一人が 「物証がなくても有罪になる事件はいくらでもある。 (有罪判決が)間違っていたとは思わない」 と語ったそうだが(5月25日付け、朝日新聞)、いささか、その方の人間性を疑わざるを得ない。 今日も、深谷市議ら2人の公職選挙法違反事件で、県警の取り調べを受けた複数の有権者が虚偽の証言を強要されたと抗議する事件が報道された。 警察は 「適正な捜査を行った」 と反論しているが、その内容は明らかにされていない。 追記: 上記の逮捕された深谷市議とその妻は、5月27日に処分保留で釈放された。
by dankkochiku
| 2011-05-26 22:32
| 非行・犯罪
|
Comments(7)
Commented
by
日本共産党めっちゃ大嫌い男
at 2011-05-26 23:38
x
学校の先生は 道徳の時間とかに 生徒たちに 埼玉県狭山市で起きた 狭山事件を 無罪だと 教えているのに 布川事件や 足利事件を 無罪だと 教えないのは どうしてだろうか?
狭山事件は 一審で 死刑判決を 受けたのちに 否認したので 無実のわけがない。 ちなみに 狭山事件は 現段階では 無罪だとは 認められていない。
0
Commented
by
tomahawk_attack
at 2011-05-27 10:18
x
有ってはならない冤罪事件が次々と表面化するのを目の当たりにさせられると、運命のイタズラでは済まされない検察側の過失責任を強く感じます。。
ただ、これまでの冤罪事件を見る限り、科学捜査の立ち遅れていた、古い事件に多く発生しているようにも感じますので、今後は、取り調べの可視化などを進めて行けば、かなりの改善は見込めるものと期待します。。 いずれにせよ。今後とも「自白」の証拠性については第一級の証拠であるのは変わりないと確信します。。 その一方で、事件の巧妙化で、ずる賢くバックレようとする者たちと、どう向き合えば良いのか、・・・現場の苦悩も感じますので、鑑識や科捜を強化し、更なる囮捜査や、盗聴の合法化、令状なしでも一定の家宅捜査を認めるとか、発砲の規制緩和とか、・・・北朝鮮や中国並みに、とは申しませんが、せめてアメリカ並みの捜査権は、現場の捜査陣に付与すべきが当然に思います。。
Commented
by
tomahawk_attack
at 2011-05-27 10:18
x
たまたま見た昨日の朝日新聞asahi.comに埼玉の選挙違反の取り調べの様子が報じられていましたが、これを見ると、取り調べの問題性に加え、現場の苦悩が良く伝わって来ます。。
http://www.asahi.com/national/update/0526/TKY201105260211.html 取り調べの「可視化」は是非とも必要でありましょうが、周辺の環境を万端整えた上でなされるべきと考えますね。。。\_(-_- 彡
Commented
by
dankkochiku at 2011-05-27 10:27
狭山事件は1審死刑、2審での無期懲役が確定し、現在、仮釈放中の事件。 冤罪かどうかを巡り、支援団体内の争いがありましたが、現在も再審請求中でしょうか?
ほかに、1961年に三重県で起きた名張毒ぶどう酒事件は、1審無罪、2審で死刑が確定しました。 ビンの王冠に付いた歯型だけという物的証拠で、あとは、自白と状況証拠だけで、現在、再審請求中です。
Commented
by
dankkochiku at 2011-05-27 17:13
tomahawk さん ご案内の記事には、「1人当たりの飲食代金が約4900円に上ったため、不足分約1900円は永田容疑者が負担」 とのこと。会費を徴収しそれ以上を供応するのは、違反にならない抜け道だろうか? しかし、今日になって、二人は処分保留で釈放。 無理な捜査を市民から抗議され、立件するには、形勢不利とみたのだろうか?
お二人のさわやかな笑顔が印象的でした
私なら怒りで紫になってるはずだから 人の人生こんだけ狂わして いくら賠償金もらっても、(ちゃんともらえるのかしら?) 償いきれない罪です どうして、どこの国も、上には馬鹿と意地汚い奴らしかいないのでしょうか??
Commented
by
dankkochiku at 2011-06-07 21:16
Ciao Junko さん 人のすることに間違いは付き物とは言え、30年間も無実の人の拘禁を許してきた司法制度の欠陥を徹底的に検証し、改めなくてはなりません。
失われた時間、生命を賠償金で済む問題ではありませんが、刑事補償法という法律によりますと、無罪判決を受けた人は、抑留、拘禁された期間、1日当たり1,000円以上12,500円以下の割合で補償を求めることができるとあります。 因みに、足利事件の菅家さんには、8千万円の補償金が支払われました。 しかし、ぞっとするのは、誤判の結果、死刑を執行された場合は、3,000万円以内で、本人の死亡によって生じた財産上の損失のあるときは加算とあります。 今まで、誤判による死刑執行の例は聞きませんが、事実は藪の中です。
|
ファン申請 |
||