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平成21年5月に裁判員制度が施行されてから間もなく2年になる。 市民の中から選ばれた裁判員が裁判官と共に刑事裁判の手続きに参加するこの制度の趣旨は、「司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資すること」(法第1条)で、民主主義、国民主権国家では、原則として一般市民が司法に参加することに反対する理由はないと思っていたが、法律家の間では、素人の裁判員が刑事裁判で事実の認定、法令の適用、刑の量定に参加することに、いまも賛否が分かれている。 そこで、政府は、3年後に、改めて検討することにしてこの制度を出発させた。
では、一般市民は、裁判員制度をどう受け止めているだろうか。 最高裁は、この制度施行後の1年目(平成22年)と2年目(同23年)のそれぞれの年の1~2月に裁判員制度の運用についての意識調査を全国の20歳以上の一般市民男女を対象に、個別面接方式で実施し、結果を公表している(対象人数:第1回 2,037人、第2回 2,025人)。 この2度の意識調査の結果を見ると、従来の司法制度に対する市民の意識、裁判員制度の問題点がいくつか浮かび上がってくる。 裁判員制度の実施後、「以前に比べ裁判や司法への興味、関心が増した」 と回答した人は全員の50.4%(前回は43.4%)。 「裁判所や司法が身近になった」 かの質問に 「そう思う」 と 「ややそう思う」(以下、肯定的回答という)の回答者は合わせて67.6%(同64.0%)。 「裁判の結果に国民感覚が反映されやすくなった」 では、66.6%(同62.6%)。 「自分の問題として考えるようになった」 は、64.3%(同59.1%)と、いずれの質問でも肯定的回答が前回をうわまわっており、「国民の理解の増進」 を目指した裁判員制度はまずまずの評価を得ている。 また、この制度のもう一つの趣旨、司法に対する 「国民の信頼の向上」 はどうか。 「裁判がより公正中立なものになった」 との回答が46.8%(前回は38.5%)。 「裁判がより信頼できるものになった」 は46.9%(同40.9%)。 「事件の真相がより解明されている」 では39.6%(同34.3%)と、肯定的回答が前回よりも上がってはいるものの、いずれも過半数に達せず、この制度が司法の信頼の向上に役立っているとの印象はあまり持たれていない。 では、「裁判員として刑事裁判に参加したいか」 の質問に対して、「参加したい」 「参加してもよい」との回答は、合わせて15.0%(前回 18.5%)に過ぎず、「義務であれば参加せざるを得ない」 と 「義務であっても参加したくない」 の消極的な回答は、合わせて84.0%(同 81.2%)と1年前の調査時より参加意向は低下している。 裁判所のやや高飛車な裁判員選定方法や選定後の守秘義務の煩わしさが、参加意欲を妨げている一因かもしれない。 この点について、最高裁事務総局は、「今回調査の直前に死刑適用の是非を問う裁判員裁判が行われ、市民が責任を重く感じるようになったからではないか」(4月8日 毎日新聞東京朝刊)と報じている。 第1回目の意識調査が行われた平成22年1月以前には、裁判員裁判での死刑判決例がなかったので、第2回目の調査では、死刑事件の審理が影響したのかもしれない。 しかし、裁判員制度発足前年の平成20年1月に行った同じ質問では、未知の制度への好奇心と期待もあっただろうが、回答者の約65%が参加の意向を示していたのと比べ、雲泥の差だ。 裁判員裁判が死刑または無期刑に当たる罪を扱うことになった理由について、「国民の関心が高く、社会的にも大きい影響の大きい重大事件とすることが相当であるあると考えた」 と法務大臣が答弁している(平成16年5月11日、参議院法務委員会)。 しかし、そうであるならば、表現の自由か公共の福祉かを争う、猥褻文書などの事件も、含めてもよさそうだが、この問題は別の機会に譲る。 また、死刑または無期刑に当たる重大事件ほど、裁判が長引き、第一審では決着せず、最高裁まで上告する例が少なくないのに、「裁判員の負担が過重にならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。」(第51条)という法律の条文には無理を感じる。 裁判の迅速化と裁判員の負担軽減という、いわば両天秤にかけたような問題解決の便法として、第1回の公判日前に裁判官、検察官、弁護士の三者が協議して、裁判の争点を絞り、それに沿って必要な証拠などの範囲を決めて提出する 「公判前整理手続」 を踏まなくてはならない(第49条)規定が盛り込まれた。 しかし、その結果、この事前の協議で交わされた論点について裁判員は、知らされないまま、裁判所側がお膳立てした裁判のスケジュールに従って審理を進めることになり、健全な市民常識をもった素人の裁判員とプロの法律家の裁判常識とが異なる場合には、裁判員の抱く論点は外されるのではなかろうか。 さらに、被告人の生死にかかる重大事件の審理と裁判員の負担軽減とのいずれを優先すべきか、一部の裁判長期化を防ごうとするあまり、審理の拙速主義に陥ることがあっては公正な裁判は失われる。 これまでのところ裁判員裁判の開廷回数は、4~5回ほどだが、その間で、裁判員の職責は十分に果たせただろうか。 第一審裁判で疑問が残っても、次に第二審があるからと気楽には考えられない良心的な裁判員の悩みも伝えられている。 これも裁判員裁判への参加意欲を妨げる原因の一つに違いない。
by dankkochiku
| 2011-04-21 22:43
| 非行・犯罪
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Comments(13)
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yamanteg at 2011-04-22 20:26
次に第二審があるからと気楽には考えられない良心的な裁判員の悩みも・・・・・・・・・・
分かりますが、所詮は第二審、最高裁とあるわけだから、「参加することに意義あり」と割り切るしかない限界を私は感じます。
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tomahawk_attack at 2011-04-22 20:58
裁判員裁判がスタートした当初は、素人にも分かり易いように、比較的、分かり易い内容の事件を選んでいたが、これまでは刑量が重く出るケースが多いためか、判決を不服に思う被告が上級審に判断を仰ぐケースが目立っていた。。
でも上告審である高裁も裁判員制度スタート当初は、市民の代表である裁判員の下した判決を出来る限り尊重する姿勢が目立っていたように思う。。 ところが裁判員制度が定着し始めると、内容もより高度となり、よりシリアスな判断を求められるケースが増えている。。 その為か、裁判員が下した判断には、プロの目から見て、ムムムと思えるケースも目立ち始めていたのだろう。。
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tomahawk_attack at 2011-04-22 20:58
一昨日の4月19日のニュース。dankkochikuさんもご覧にならせれたかどうか・・・マレーシアから覚せい剤入りのチョコを運んだとされる被告に対し、証拠のブツを知ってたか否かが争われた裁判で、一審の裁判員たちは、検察の証拠は、証拠性に乏しいと、被告に対し「無罪」を言い渡したのだが、これを不服に思った検察側が上告し、二審の東京高裁では、裁判員の判定した無罪を破棄し、一転して被告に逆転有罪を言い渡している。。
一審の裁判員たちが下した判定を破棄し、無罪から「逆転有罪」にしたケースは、おそらくこれが初めてのケースだったと思う。弁護側はこれを不服として即日上告している。という訳で、ついに舞台は最高裁に移ることになる。。 まぁ、事件の複雑化に伴い、今後もこうした、一審と二審で、無罪が有罪に、有罪が無罪に・・・と、判断が分かれるケースは増えるものと思われる。。 私としては、裁判員制度の趣旨に沿って、出来るだけ市民目線の判断が、より尊重される判決となることを望みたいが、判断が高度にならざるを得ない部分では、裁判員の精神的負担を和らげる意味でも、上級審の判断を尊重するしかない。。。(v_v)
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dankkochiku at 2011-04-23 18:12
yamanteg さん 素人の裁判員が、因習に縛られた裁判官の目を覚ますことができればいいと思います。
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dankkochiku at 2011-04-23 18:27
tomahawk_attack さん ありました。一審無罪、二審懲役10年となった事件。被告人はバレたかと、ガックリしたことでしょう。 ただ、有罪、無罪の評決が裁判官、裁判員の何人対何人で無罪の判決が出たのかが門外不出で分からないのが残念。
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cocomerita at 2011-04-24 22:48
Ciao dankkochikuさん
緊急です 署名してください 子供の対する20ミリシーベルトの基準値を取り消すための署名です http://fukurou.txt-nifty.com/fukurou/2011/04/20-4449.html 期限は明日の23時 よろしく
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dankkochiku at 2011-04-25 10:06
Ciao cocomerita さん ありがとう。文科省決定に反対署名しました。 原子力安全委員会の委員の中にも反対意見があり、対象になった福島県内の3市の13の小中学校、幼稚園、保育園では、大騒ぎになっています。
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tomahawk_attack
at 2011-04-25 13:54
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最近、2chにおいては、こんな回文(上から読んでも下から読んでも同じ)が出回ってます。。
「保安院全員アホ 」・・・・(ほあんいんぜんいんあほ ) 今回の事故で、「東電」も、勿論、問題ありとは思いますが、決して、それだけじゃないんですよね。。 「政府」と「原子力保安院」についても、それぞれが、それぞれに罪を分かち合う立場なのです。ですから、こういう回文が出回るんですよね。。 民主党は鳩山前総理が国連でCO2の25%削減目標を掲げてからというもの、「コンクリートから人へ」という党としての立場から、また環境保護を推進するという立場から、全国のダム建設を一早く中止し、水力発電から原子力発電に大きく舵を切りました。そのことは最近、各局のテレビが報じています。。
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tomahawk_attack
at 2011-04-25 13:54
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その中で起きた東日本大震災であり、原発事故でした。原発行政は継続的なものですし、過去の政権も大きく係わっているのは事実でありますが、であっても、今を預かる政府は、その責任をキチンと受け止めなければならない立場です。。
にも拘らず・・・菅内閣は、「東電」だけを一人悪者にして、自身はホッ被りを決め込み、反省のハの字もありません。政治が逃げたら?・・・国民は何処に救いを求めればいいんでしょうか?・・・ 開票された地方選挙の結果からは、「国民は見て無いようで、見るべきとこは、ちゃんと見ているんだ」・・ということが改めて確認出来たのは・・・私はせめてもの救いだったと思っています。。(v_v)
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dankkochiku at 2011-04-25 22:37
東京電力の副社長が、監督官庁の経産省ОBなのを含め、10電力会社に45人もの経産省OBがおり、経産省の天下り「指定席」と指摘されています。つまり、経産省の原子力安全保安院と東京電力とがグルになって福島原発の事故状況を発表し、その内容を確認できず発表する政府。さらに、この情報を無批判に流すマスコミ。 第三者調査機関が動かなくては、国民は真相から隔離されたまま風評被害に翻弄されされっ放しです。
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cocomerita at 2011-04-28 19:47
CIao dankkochikuさん
署名ありがとう 法曹界も国政も、主人公は国民である、大事なのは国民の視線であると言うことを肝に銘じていただきたい 陪審員の決めた罪状を、検察がこうして彼らの権力を利用してひっくり返すのであれば、それじゃあ私らが陪審に行くのは時間の無駄 今まで通りあなた方で好きなようにすればいい、。と言うことになりませんか? 政府然り、国民の立場に立って、国民を代表して、今回の被災に対処していただきたい、それは東電に責任をきちんと追及し、きちんと補償を行うことを監督することも含めです、 でもね、今回の子供に対する被爆許容量もたった二人の人間が、会議も開かず決めているそういう状態です 人間じゃないね、こうなるともう彼等
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cocomerita at 2011-04-30 21:19
CIao dankkochikuさん
再び、私です 笑 たびたび申し訳ないのですが まだまだわかんない馬鹿どもに 再度、 子供の放射能被曝許容量20ミリシーベルト撤回を求め、署名お願いいたします。 署名はこちらから http://www.foejapan.org/infomation/news/110425.html よろしくお願いします
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dankkochiku at 2011-05-01 10:00
Purtroppo! Cocomerita さん このコメントを開いた時、署名締め切り時間が過ぎていました。 Mi scusi.
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