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30年くらい前、自転車で目黒区側から来た時、なんと雑然とした町だろうと驚いたところが下北沢駅辺りだった。 澁谷-吉祥寺間を走る京王井の頭線と新宿-小田原間を結ぶ小田急線が×字状に立体交差し、町を東西南北に分け、線路の向う側へは、小田急線の開かずの踏切を渡るか、高架を走る井の頭線のガード下を通るか、商店街から外れて坂上の住宅地を迂回するしかなかった。 しかも、駅周辺は、道幅4、5メートの商店街を大勢の人が行き来し、道路脇のあちこちに自転車が無秩序に放置され、私もそこに置こうとしたが、あまりの自転車放置箇所の多さに、何処に置いたか忘れそうで諦め、自転車を押して歩いた。 いずれにせよ、よそ者の私には、ここは、いろいろな小売店がごちゃごちゃと並び、行き止まりの路地もある迷路としか思えなかった。 こんな記憶の糸を手繰りながら、下北沢駅北口改札口を出る。 都会の駅前によくある広場やバス停などない。 見上げるほど大きな商店街の案内板が立っているが、大雑把な地図に100軒以上もの店を番号で表示し、店名と番号を見比べて探すのでは、とても見る気がしない。 ただ、「若者の町」 と言われる所だけあって、やけに若者が多いのが昔と違って目につく。 駅正面には、スーパーマーケット、コンビニ、カジュアル衣料品店、書店、大学受験予備校、眼科医院、メガネ店、中華レストランなどの入る4階建て雑居ビルがあり、それと並ぶ商店街は、急に道幅が狭くなり、食堂、喫茶店、飲み屋などの飲食店、化粧品店、衣料店、酒店、雑貨店などいずれも大衆向きの安さを売り物にした小売店がびっしりと並ぶシモキタ商店街は、駅西口の住宅地帯を除けば、この町を象徴する場所だ。 このシモキタ商店街で、一寸、中を覗いて見たくなったのが、トタン屋根木造モルタル平屋建ての外壁に 「下北澤 驛前食品市場」 と旧漢字で書いてある戦後ヤミ市の面影を留める市場(上の写真)。 食品市場とあるが、入口の店は、ドラッグストアと小物工芸品店。 その奥に、雑貨屋、乾物屋、季節度外視の衣料品店、漢方薬草屋、画材店、カレー店、喫茶店、焼きとり屋、営業しているのかどうか分からない饅頭・団子屋。 シャッターを下ろした店も所どころある。 昼前からスタンド式の飲み屋だけは満席。 こんな市場、今どき珍しい。 駅前の商店街が毛細血管状に広がる迷路であることは今も前も変りない。 この状態を変えようと、06年10月、区は、下北沢駅周辺地域再開発計画を公表したが、これについては、今なお地元住民の間で賛否両論が渦巻く。 行政側は、駅周辺に高さ60メートル以下のビル建設を認め、駅北側に環7道路なみの道路(補助54号線)を通し、現在、商業地区で4,5階、住居地区で3階以下の建物の多い状態を、高層化して土地を有効活用し、狭い道で人と車が混在する状態を解消し、幹線道路の沿道には大型商業地を、その他にも下北沢らしい商業地域を作り、その一方で、住宅地では住環境の保全と防災性の向上を図る、という。 この良いことづくめの提案のようだが、長年、親しんできた地域が国道の開通によって消滅されると、この人口密集地の地域住民の反対論は止まない。 「地元に昔からある店と、外からやってきた人たちが営む店が共存し、商店街に活力があり、音楽や演劇や映画や古本や喫茶店といった文化が地に足が着いたかたちで根付いている街。 そんな下北沢の街がいま、行政によるトップダウンの再開発計画によって、破壊されようとしている。 この街から小さな店と、人がゆっくり歩ける路地と、どこからでも見上げることのできた空の青さが奪われるかもしれない。」 と主張する(下北沢再開発を考えるページ 2004年から)。 例えば、下北沢で一番大きな通りの 「茶沢通り」 がカーブしている左手には、世田谷区のタウンホール、右手にはスズナリ横丁があり、その手前には小さな古本屋が最近できた。 古本屋の横のスロープを上った奥には、古くからあるカトリックの教会がある。 この辺りが、補助54号線の開通によってもっとも大きく姿を変える場所だという(上の写真)。 スズナリ横丁とは、ザ・スズナリというアングラ系の木造小劇場で、幕が下り、すし詰め状態から解放された観客が喉を潤すための小料理屋が劇場の敷地内外に軒を並べている場所。 行政側と地元民の間で喧々諤々の駅周辺再開発計画案の他方で、小田急線は、2013年度を目標に、複々線化、地下二層化し、その上に17階の駅ビルの建設工事を着々と実施中。 開かずの踏切前で、真夏の炎天下でも真冬の寒風下でも、イライラしながら立ち尽くす通行人たちの脇の工事現場付近では、建設作業員と交通整理に当たる警備員たちの忙しく動き回る姿があった。 なにはともあれ、あと数年後で、変貌するだろう現在の下北沢駅周辺の町並みを、是非、カメラに収めて置きたいとここを訪れた。
by dankkochiku
| 2010-07-18 21:20
| ぶらり、まち歩き
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Comments(17)
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hisako-baaba at 2010-07-18 21:49
下北沢に古本を買いに行ったのは、もう40年近く前で、
その後劇場などが出来てさぞ変貌しているかと思いましたが、再開発はまだで、懐かしい市場もあるのですね。 そのうち消えてしまうのでしょうが・・・
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Ciao dankkochikuさん
おやhisakoさんが来てるわ 私時々行きます 下北沢 昭和の匂いが残ってるんで.. 壊さないでほしいけど...無理なんだろうな―― なんで人って新しいものが好きなんだろ 一度壊したら、もう二度と元に戻せないのに
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HOOP at 2010-07-19 01:00
道路計画とは別に、小田急線の地下二層化工事が始まりましたね。
これから、下北沢の「なんてことない町」化が進むのでしょう。
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dankkochiku at 2010-07-19 10:01
hisako-baaba さん 今では、若者の町の澁谷、新宿文化をミックスしたような賑わいと、無秩序に連なる商店街が、終戦までは水田地帯、そこを埋立てた安い地価に殺到して出来た庶民の町。これが今、コンクリートとアスファルトのビル街へ変身しようというのですから、いくら災害に強い町づくりへの再開発と言われても一筋縄にはいきません。
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dankkochiku at 2010-07-19 10:19
Junko さんところへのご常連さんの中で、高齢大学を終了され、与野党政策へも噛みつく威勢のいいhisakoさんのコメントに惹かれ、こちらからお邪魔したのがきっかけです。
都の行政機関は、今、いつ起こってもおかしくない関東大地震の再来に怯え、その対策に追われているようです。自然災害に強そうなわが地盤地でも、上下水道管の取り換え工事が盛んに行われている程ですから、シモキタ辺りはなおさらのことでしょう。 ノスタルジーどころではないとの主張も分かります。
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dankkochiku at 2010-07-19 10:23
HOOP さん この数十年間の鉄道網、特に、地下鉄道の急発達に、生まれも育ちも東京の私も、お上りさん並みに駅員に出口、連絡口を尋ねています。
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yamanteg at 2010-07-19 11:50
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dankkochiku at 2010-07-19 15:25
yamanteg さんも流石、奥の飲み屋に目がいきましたね。 この撮影前に、若い女性が先客に席を詰めてもらい、連れの男性と座り込みました。 その動きも望遠でバッチリ撮りましたが、公表は避けました。
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tomahawk_attack
at 2010-07-19 20:07
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下北沢はゴチャゴチャしているとこが下北沢らしいとこで、肩をこすりながら歩くのが下北沢の楽しみ方と言えると思います。。
昔の秋葉原のパーツ街みたいなもので、人の多い狭い路地を、人を掻き分けながら進み、じっくり探しながら目指す掘り出し物を見つける。下北にはそういった昔ながらの個性が残ってます。。 まっ、この時代にして、若者が集まる街という点では、他の町が羨む部分だと思いますが、ただ・・防災の点を考えると、実に悩ましいですね。一たび事が起これば、下北は確実に大惨事となるハズですし、行政がそれを知りつつ見過ごししていたとなれば?後々刑事裁判にだってなり兼ねません。。
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tomahawk_attack
at 2010-07-19 20:07
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時代はドンドン変化しますし、人々の心も絶えず変化してますから、地元住人がどれほど願っても、未来永劫このままで行ける保証はない訳です。。
私的には、街に少しでも体力がある内に、様子を見ながら、徐々に徐々に近代化を試みて行くのが・・正しい方向だと思うんですがねぇ。当事者ではないので、なんとも言えぬとこです。。 それと・・・下北で美味しいパン屋さんとして有名な「アンゼリカ」というお店が駅前の通りにあります。最近は行ってませんが「カレーパン」と「味噌パン」が凄く美味しいです。期待を裏切るお店ではありませんので、お出掛けの際は、是非お試し頂きたいと思います。。。
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dankkochiku at 2010-07-19 21:51
tomahawk_attack さんは、なかなかの食通でいらっしゃる(笑)。
下北沢には警察署がありません(交番はあります)が、「安心安全の町」を掲げる地域住民の防災、防犯の意識が高いところで定評があります。 とはいえ、あまり地盤強固なところでなく、類焼しやすい木造建築も多く、やはり、大地震対策が緊急の課題だと思います。
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cocomerita at 2010-07-19 22:58
地震、地震ってさー
政府の言うことはどうも信用できない だって、新型インフルエンザだってあんなに大騒ぎしてみんなにワクチンとかばんばん打たせて ...で???何も起こらなかったじゃん あの人たちの対策にはいつも裏に誰かさんの儲けが隠れてるんだよね 私は関東大震災など起こらないと思っている これ私の動物的本能
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dankkochiku at 2010-07-20 10:02
Ciao cocomerita さん 去年の今頃、新型インフルエンザで国中が大騒ぎしていましたね。昨年4月、カナダから帰国の高校生の第1号患者から年末に流行が下がるまで100人の患者が死亡し、150万人の患者が医療機関で治療を受けたと報告されています。大騒ぎしてワクチンを打ったので、これ位で済んだのでは? 関東大震災クラスの地震の再来、わたしもナマズ達が騒がないことを祈っています。ドイツの蛸にも占わしてみたいですね(笑)。
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chihirock_uk at 2010-07-28 02:17
はじめまして。exblogをうろうろしていて辿り着いたのですが、あまりに懐かしい風景が目に飛び込んできて思わずコメントしてます。
20代ほとんどの間、下北に住んでいました。もしまた日本に住むことがあるのなら、下北以外考えられません。それくらい大好きで思い入れのある街で、今までは日本に行くたびに必ず訪れていたのですが、先月3年以上ぶりの日本滞在では色々あって行けずしまいでした。 そこにきてこのニュース。 知っていたら無理してでもあの街並みを見納めに行ったのに..と、無念でなりません。
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dankkochiku at 2010-07-28 09:31
chihirock_uk さん 遥かUKで開いてのコメント有難うございました。 戦後闇市として開かれ、あまり道路整備もまだできていない、こんな人間臭い、新旧織り交ぜた、雑多で、活気ある盛り場が好きです。 これを機にまたどうぞ。
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Atanphotos
at 2011-12-23 16:13
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私はネットサーフィンが好きなんですが、最近ピンスパイヤーというサイトを重宝してます。綺麗な画像でいっぱいアップされてるので新しいアイテムを探すときに参考にしてます。また、他人の意見が欲しい時にはピンしてコメントをもらってます。<a href="http://www.pinspire.jp/board/show/50249">断想 : 群衆うごめく迷路 -下北沢駅周辺-</a> このページも気に入ったのでピンさせてもらいました。<a href="http://www.pinspire.jp/pin/show/201741">http://www.pinspire.jp/pin/show/201741</a> すごく便利なので利用してみてください。コメントなどもらえると嬉しいです。
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dankkochiku at 2011-12-24 08:52
Atanphotos さま ご案内有難うございます。
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