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日本(人)の宗教とは何かと、尋ねられるほど答に困ることはない。 日本の総人口は、1億2千万人というのに、信者の数は2億600万人もいる(平成19年末日現在。文部科学省統計)。 これは、宗教国と言われる国ではありえないことだが、家の中に神棚も仏壇もあり、毎年初詣に神社を訪れる人が、キリスト教会で結婚式を挙げ、葬式はお寺で行ってもおかしいと思わない日本人にとっては、総人口以上に信者がいると聞いても、さもありなんと納得してしまう数字だ。 ただ、この統計では、信者を 「各宗教団体が、それぞれ氏子、檀徒、教徒、信者、会員、同志、崇敬者、修道者、道人、同人などと称するものの全てを含んでいる。 信者の定義、資格などはそれぞれの宗教団体で定められ、その数え方も おのおの独自の方法がとられている。」 と定義しているので、各宗教団体が別々に定義した信者数を合算した統計が正しいかどうかは疑問だ。 また、この統計には、宗教団体に属さない信者や宗教を信じない人の数は計上されていないし、既成宗教以外の民間信仰の信者も含まれていないから、国民の信仰の実態を示すものとしても、あまり信憑性がない。 しかし、だからと言って、大多数の日本人は無宗教者とか無神論者とも言えない。 例えば、マイカーに交通安全のお札を下げているドライバー、地鎮祭の主催者、山頂でご来光を拝む登山者の中にどれだけ神道の信者がいるか分からないが、そこに何か神秘的な力を感じている人たちであることは間違いない。 とすると、敬虔な信徒以外の、大多数の日本人の宗教心は、いろいろの宗教の教えを融合し、自然発生的に生まれ、祖先代々受け継いできた自然宗教、日本教の信者というところに落ち着きそうだ。 八百万(やおよろず)の神は、一神教とは違い、権力を一身に集める全知全能の神ではないが、それぞれの神に、家内安全、商売繁盛、子孫繁栄、健康長寿、学問成就など自分の力だけでは及ばないことを一心に祈願すれば、叶えてくれるはずだし、叶えられないのは信仰心が足りないからと更に祈願し続ける。 だから、ご利益信仰とか困った時の神頼みであっても誰からも非難されないのではあるまいか。 こうした日本人の素朴な信仰心に支えられて、あちらこちらの街角や道路脇に、庚申塔、道祖神などの地蔵尊が立っている。 上の写真は、JR線池袋駅東口に近い線路沿いのビル街にある「四面塔」(右側)と「四面塔稲荷大明神」。 昔、ここは中山道の板橋宿へ抜ける山中の四ツ辻であったため追剥ぎや辻斬りが絶えなかったそうで、一晩で17人も辻斬りに殺された事件をきっかけに、享保6年にお題目を刻んだ供養塔が建てられた。 その功徳としてその後、盗賊による災難は解消し、その隣に稲荷大明神も建てたのが、上の二つの社。 その当時と比べれば、今は、この辺りの治安は良くなったとはいえ、繁華街に付きものの犯罪多発地で、この小さな社へいたずらする不届き者は多いと見え、お祭りの日以外は、フェンスで囲んだ中には入れず、カメラアイしか覗けないが、賽銭箱の前だけは、ちゃっかりと手が入るくらいに開けて、社の方だけは、御利益を得ているようだ。 池袋駅から東武東上線で一つ先の北池袋駅周辺は、ここが池袋かと思うくらい閑散とした住宅、小売店街。 線路を横切り、明治通りへ向かう途中の交番近くの路上に 「お茶あがれ地蔵」 が立っている。 その由来は、いくつかあるようだが、豊島区役所のホームページによると、「元禄時代末、結婚を反対され病死した女の幽霊が、毎夜(恋する)男の家の前で 「お茶あがれ、お茶あがれー」 とかぼそく悲痛な声で言いながら現れるようになったため、翌年に供養塔が建てられたそうです。 昭和13年には地元の人々がお地蔵さまを建立。 その左手には大切そうに茶碗を持っています。」 とミステリーじみた説明をしている。 それにしても、地蔵小屋には、茶碗からペットボトルまで大小の容器にお茶を入れ、千羽鶴、生花まで供えてあるのは、合理主義優先の現代社会にあっても、地蔵さまは、住民たちから強い信仰を得ている証拠だろう。
by dankkochiku
| 2010-07-11 20:57
| ぶらり、まち歩き
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Comments(10)
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marquetry at 2010-07-12 13:54
私も、日本人は、一種独特の信仰心が有ると思います。
平たく言うと、どんな神でも、受入れ、どんな神にでも、供養する。また、どこにでも神は存在し、妖怪だったり、動物でも全然かまわない...。そのかわり、神だろうが何だろうが、ご利益が無ければ、結構冷たい日本人。他の国の宗教とは、かなり違い、神が対等であるかの様なのが日本人だと私は感じてます。 昔話を読んでも、完璧な神よりも、おっちょこちょいだったり、どこか、抜けてる所が有る人間っぽい神が多いですよね? 抜けている所が有っても、日本人は神だというのですから、何とも、不思議な民です。ただ、私達の生きている世界、日常に一緒に神が存在しているのは、日本固有だと思います。天国でも、どこでもない、ここそこに神がいる...日本人は、根っから、小さな出来事に感謝して来た民のようですね..。
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dankkochiku at 2010-07-12 17:51
marquetry さん 日本人にとって、人の世界は、一神教徒が言うような万物の創造主の神が作ったものではなく、普通の人たちの間で作られてきたものと考えているようです。だから、人と人との間の関係を大切にし、争いの起こるのを避けるために、できるだけ妥協し、家でも村でも全員一致の行動を大事にしするように代々躾けられてきたのではないでしょうか。ゴーイングマイウェイとは、日本社会ではかっこよく思われても、結局、大多数の凡人たちは、仲間外れになるという苦労を背負い込まなくてはならないようです。
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yamanteg at 2010-07-12 21:09
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hisako-baaba at 2010-07-12 22:31
私の方へようこそ。
そしてあなたのページは面白い!!興味津々。 時間を作って読ませていただきます。 池袋に…知りませんでした・・・ 何教の神様でも仏様でも何でも構わず受け入れて、なんとなく拝んでいる。そこが日本人の素敵なところだと思います。 一神教のように違う宗教相手に戦争なんか起こさない。 いいかげんだろうとなんだろうと、風土に根差したあり方なんでしょうね。 今住んでいる町は、昔から信心深い人が多かったらしいです。神社もお寺も綺麗になっています。
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dankkochiku at 2010-07-13 10:10
hisako-baaba さん 興味を持って頂き有難うございます。
本来、各地を転々とする遊牧民族にとっては、何処で生活しても頼れる唯一の神が必要だったのでしょうが、定住する農耕民族には、それぞれの人や家族がその地に定住し、そこに根ざした神々が生まれたのでしょう。 西洋では農業国だった古代ギリシャが多神教文明国でした。 今後とも、ブログを通して知識を広げていきたいと思います。どうぞよろしく。
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dankkochiku at 2010-07-13 15:29
yamanteg さん 日本に永住するある外国人カトリック神父の教会では、七五三ミサを行い、七夕飾りをし、灯籠流しもするので、信者からも近隣の人たちからも、あの神父は神父らしくなく心の広い人だと、かえって慕われています。こういうのって、日本教に溶け込んだのでしょうか。
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tomahawk_attack
at 2010-07-13 23:19
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埼玉では、連続で地蔵を壊していた犯人が、ようやく捕まりました。供述によると・・この男は、毎日、夜中に「仏を大切にしろ!」という声が聞こえて離れず、それを打ち消そうと・・・更にお地蔵さまの首を落とし続けていたとか?・・・やはり仏さまが怒っておられたということですよね。悪いことは出来ないものです。。(ーー;)
ですが・・・言動から、統失を患っている可能性も考えられるのか・・・ニュースによれば、容疑者に対し、警察も慎重に取り調べを進めているとされます。事実なら・・・相変わらず、困ったもんですね。。 ちなみに昔から北向きのお地蔵さまは霊験あらたかとされ、老衰で亡くなった私の祖母も、毎日、近所のお地蔵さまに手を合わせるのが日課でありました。お陰で病気もせず天寿を全うしました。。 長野の安曇野の方に行くと、農道のそこかしこに、微笑ましいお姿のお地蔵さまが残されていて、見ているとホッとさせられます。何時までも残しておきたい日本の原風景ですね。。 池袋のお地蔵さまも敬虔な多くの信者に守られて、道行く人の安寧をじっと願っておられる様子が分かります。大切にしてもらいたいものですね。。\_(-_- 彡
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dankkochiku at 2010-07-14 10:53
「北向きのお地蔵さまは霊験あらたかとされ」 とは、初耳です。その由来は何でしょうか。 そういえば、新宿・大久保に北向観世音像が本堂を背に道路に向かって立っていますね。
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tomahawk_attack
at 2010-07-14 22:04
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北向きのお地蔵さまは霊験あらたか・・・・これは亡くなった私の祖母が口癖で言っていたことで、それを信じ、私も子供たちに言い伝えております。。
ちなみに、この言い伝え・・・ここ南関東の当地では、未だに特別な存在として崇める風習が残ってまして、多くの信者がいます。きっと、何か背景が有るんだと思います。。\_(-_- 彡 ネットによれば・・・北向きの地蔵尊は、相対的に少ないことに由来しているから?・・という説もある一方、京都や大阪に北向きの有名なお地蔵さまがあって、そこから風説的に広まっていった?・・という印象も残ります。多分、古いお寺のご住職さんなどに聞けば?・・詳しい謂われをご存知かもしれません。。 ちなみに京都(六角堂)のお地蔵さまですが、・・・こちらが北を向いていている理由は、御所をお守りしているから・・・とのことでありました。。。(゚.゚)ノ
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dankkochiku at 2010-07-14 23:05
tomahawk_attack さん 有難うございました。 大久保の全龍寺の墓地にあったと思います。 入口が分からず、行けませんでしたが、是非、伺ってみようと思います。
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