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銀座のど真ん中に盆栽専門店がある。 7丁目、三菱東京UFJ銀行の角を入ると 「盆栽、美術、銀座森前」 と書いた看板とスタンド看板の上に置いた盆栽が目じるし。 小さい盆栽が20鉢余り店の前に並べてあるが、店の中に人影はなかった。 わざわざ銀座へ盆栽を買いに来る客がいるのだろうかと好奇心から覗いたが、盆栽の知識皆無の私には、わざわざ戸を開けて店に入る勇気なく遠慮した。 それでも、好奇心はおさまらず、、家へ戻り図書館で見つけた 「銀座の達人たち」(早瀬圭一著2006年)にここの盆栽店の主人、森前誠二氏の人となりが書いてあった。 以下、その要約、引用である。 森前氏は、15歳で栃木県にある3千坪の盆栽園で修業に入り、20歳のとき銀座三越屋上の園芸売場に店長とした通ったあと、1998年、38歳で独立し、現在の店を開いた。 銀座では新しい方の店だが、開業1年目で売り上げが1億7千万円、3年目には4億円に達し、その後、通信販売誌を発行し、埼玉県に盆栽園を開き、この本の出た2006年の年間売上は8億円。 「今もっとも注目を浴び、盆栽界をリードする若き旗手」 とのキャッチフレーズをもつ経営者と絶賛している。 また、森前氏自身 「お洒落な大人の盆栽入門」(2003年)を書いている。 その中で、「私が自分の店を構えたのは、日本文化の華として盆栽をどれだけ伝えられるか、その力を試してみたかったからです」 とあるように、この本は通り一遍の盆栽栽培の手引書ではない。 盆栽を通じて日本文化の品格を伝える心得書ともいうべきもので、門外漢の私も筆者の心意気に引き込まれる。 ところがである。 2006年、企業調査会社、帝国データバンク出版の 「話題の倒産を追う 改革の旗手のつまずき」 で、銀座森前が負債総額50億円近くを出し、民事再生法を申請と報じた。 この年、政府、日銀は 「景気は回復している」 と判断したものの、企業の規模、地域、業界間に格差があり、全体的底上げまでには至らず、個人消費が景気の下押しの要因とみている。 盆栽は千円前後でも購入できるが、何十万円、何百万円もする盆栽を買い求める客層の減少が経営を直撃したようだ。 有為変転、この街の商いの厳しさを垣間見た。 江戸時代の銀座にはもう一つの顔があった。 新橋駅からほど近い一帯には、幕府の保護のもとで栄えた能楽の名家の屋敷があった。 この屋敷跡に中央区教育委員会が立てた掲示板には、概ね次のように書いてある。 「江戸時代には、幕府直属の能役者に宅地や家禄を支給していた家柄に、金春、観世、宝生、金剛の4家があり、このうち、最も伝統のある金春屋敷の拝領は寛永4年(1627)」 と記され、現在の銀座八丁目六、七、八番全域に相当する規模だったとある。 そういえば、2丁目には 「観世通り」 があり、7~8丁目には 「金春通り」 が往時の名を留めている。 その8丁目の金春通りに、昔ながらの銭湯 「金春湯」 がある(上の写真)。 この銭湯を 「かねはる湯」 とか 「きんしゅん湯」 とかと読んではいけない。 「金春湯」 は、文久3年(1863)に開業以来、今まで続いている由緒ある庶民の浴場である。 入浴客は、主に周辺の飲食店の店員で開店前と閉店後の時間が混むそうだが、午後2時前には、常連のお年寄り5,6人がすでに店の前に自転車を置いて開店を待っていた。 銀座に銭湯というと、意外な気がするが、夜の仕事に就くたくさんの勤め人にとっても、また、地元民の少ない町でお年寄り同士の裸の付き合いができる場としても、昔ながらの銭湯がその役割を十分果たしている。 もう一軒、1丁目に区営の銭湯、銀座湯がビル2階にあるそうだが、見つからなかった。
by dankkochiku
| 2009-08-26 21:00
| ぶらり、まち歩き
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Comments(7)
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tomahawk_attack
at 2009-08-27 09:37
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銀座六丁目、七丁目といえば?・・言わずと知れた日本で有数の高級飲み屋街です。
銀座の場合、同じ高級系でも、ドタバタした飲み屋が多い六本木や、料亭の並ぶ赤坂界隈とは、また少し異質な雰囲気を感じさせますね。まっ、それぞれに集まる年齢層や、客層そのものが違うんだとは思いますが・・・ 兎も角も、この辺りは、黄昏時ともなると、髪をアップに結って、あでやかに着飾ったママさんらが、ご出勤を急いで見えます。それらを見ると?改めて「ここは銀座なんだなあ」という感慨に浸らせらせてくれます。飲兵衛にとっては、たまらない光景とも言えます。。 かくいう私ではありすが、六丁目、七丁目については、仕事で利用した以外、個人では利用したことはありません。。(T。T) 仰る通り、この辺りを眺めると、街には似つかない?というか、異質とも思える店を出しているとこも結構あるもんですね。地価の高いこの辺りで、良くやって行けるもんだと?・・感心しきりですが、高級クラブの並ぶこの地ならではの?商売も有るらしいのです。。 少なくとも当時、仕事の関係で知る限りは、この辺りならではの売り方があることを感じました。。
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tomahawk_attack
at 2009-08-27 09:38
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私はスイーツが好きで、今はもうなくなりましたが、フジ画廊の裏にあった「エルドール」などは良く利用したものです。ここでクリスマスケーキを買うと、小さめの4号サイズでも一万円くらいしますからねぇ。もちろん味は折り紙つきです。小さなマドレーヌの詰め合わせでも何千円もしました。。
一見、庶民には近寄りがたい価格ではありましたが、高級クラブの建ち並ぶ銀座ならではの売り方なのでしょう。バブル時代ではありましたが、ビックリするほど、飛ぶように売れてましたよ。店で出すお客の誕生日祝いに・・・お土産にと、・・需要は殊のほかあるんですね。。 Dankkochikuさんのご覧になった盆栽屋さんも、おそらく、店の格を演出する小道具として、また贔屓のお客様へのプレゼントとして、ママさんたちがお遣いになっているのではないでしょうか?・・・
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dankkochiku at 2009-08-27 14:46
田舎で足腰を鍛え、大都会の一等地で一旗揚げようと目論む進取の気性に富んだ人達ばかりが集まる銀座は、生存競争の激しさでも日本一。 銀座の店というだけで高価な物が飛ぶように売れるカリスマショップもいつも綱渡りの緊張感と闘い、一瞬の判断ミスで奈落の底へ転落。 森前盆栽店の客は、高級料亭や帝国ホテルなど何百万円もの盆栽を買う人ばかりだったと、店主自身が回顧しています。
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junko
at 2009-08-27 19:02
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Ciao dankkochikuさん
面白いですね~~ 確かに銀座とかって、昭和の粋な人々がひっそりいろんなところで暮らしているような気がします。 私は、何百万円もの盆栽は買えないけど、逆に千円の盆栽はなぜか大量生産や鶏小屋にぎゅうぎゅうに押し込められて、卵をひたすら生まされるニワトリを思い出して買う気になれません。 アートには、若干お金を払うべきだと思っているからです。 金春湯、今度行ってみようかなあ、、
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dankkochiku at 2009-08-27 21:10
Ciao Junko さん このブログを出すのに付け焼き刃的な知識を得るために本文にある森前氏の本をよみました。160ページ足らずの本で、その半分近くが写真ですが、とても含蓄のある内容一杯の本でした。 盆栽の美は、「シンプルであればあるほど、その美は深く厳しい。 盆栽しかり、人生しかり」 の言葉には圧倒されました。 きっとJunko さんの心もとらえるでしょう。
金春湯は、普通の銭湯なみに450円で入れますが、江戸時代から続く伝統を瞑想しながら湯に浸かっていられるのは、この上ない贅沢では?
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yamanteg at 2009-08-29 12:57
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dankkochiku at 2009-08-29 19:49
yamanteg さんは、金春芸者とのお遊びの方も経験豊富のようで羨ましい。 金春屋敷跡の周りは、幕末から芸者街となり、その後を引き継いで八丁目の飲食店街が発達したとのことです。
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